仲介会社の規模ではなく、“誰がやるか”がすべてです
「大手の仲介会社に頼めば安心?」「担当者の力量でそんなに差が出るの?」
そんな疑問や不安をお持ちの経営者の方に向けて、本記事では“仲介会社の規模よりも誰が担当するか”という視点で、M&Aの真実をお伝えします。
■本記事を読むと得られること
- 仲介会社の規模と担当者の違いを見極める力がつく
- 手数料や規模に惑わされない判断軸が得られる
- 信頼できるアドバイザーの選び方がわかる
■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上、累計200件以上の支援実績を持ち、中小企業庁登録のM&A支援機関として誠実・高品質な支援を行っています。
この記事を読むことで、会社の未来を託すにふさわしいM&Aパートナーと出会うための確かな判断力が身につくはずです。
3分で読めますので、どうぞ最後までお付き合いください。
1. はじめに:M&Aは“誰がやるか”で決まる時代へ
M&Aは会社の未来を大きく左右する重大な選択です。だからこそ、「どの仲介会社に頼むか」ではなく、「誰が担当するか」が最も重要だと言われる時代になっています。経営者として、会社や従業員の将来を託すパートナーを選ぶ際には、会社の規模や知名度だけではなく、実際に現場で支援する“担当者の質”を見極める視点が欠かせません。
近年、M&Aの仲介業界には新規参入が相次ぎ、大手企業から独立系の小規模ファームまで多様なプレイヤーが存在します。こうした背景の中で、表面的な肩書や上場の有無にとらわれず、誰が実務を担うかを重視する経営者が増えています。特に中小企業のM&Aでは、担当者一人の対応がそのまま成約率や譲渡後の満足度に直結するケースも珍しくありません。
例えば、2023年に中小企業庁が公表した「事業承継・引継ぎ支援に関する実態調査」でも、売却経験者のうち「担当者との信頼関係が意思決定に大きく影響した」と回答した割合は73.2%にものぼりました。これは、価格や手数料の条件よりも、最終的に「この人になら任せられる」と感じたかどうかが、M&Aを進めるか否かの判断基準になることを示しています。
実際に、筆者が過去に支援したM&A案件の中には、業界大手の仲介会社から独立したばかりの小規模なFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に依頼したことで、無事に成約へと至った事例があります。その理由は明確で、担当者が「相手企業のことを丁寧に調べ、従業員の将来も踏まえて提案をしてくれた」からです。規模の大小ではなく、目の前の企業にどれだけ向き合ってくれるかが重要なのです。
一方で、大手仲介会社に依頼したものの、担当者の入れ替わりが激しく、途中で引き継ぎミスや情報の食い違いが頻発し、結局交渉が破談になったという事例も存在します。どれだけブランド力のある会社であっても、担当者が業務を形式的に処理していたり、売却企業の経営者と真摯に向き合う姿勢がなければ、満足のいくM&Aにはなりません。
また、仲介会社の営業体制にも注目すべきです。営業ノルマを優先するあまり、売り手の本当の意向や大切にしている価値観を無視して強引に話を進めようとする例もあります。逆に、会社の規模は小さくとも、1件1件の案件に対して深く関わる姿勢を持つアドバイザーであれば、企業オーナーと丁寧に向き合い、理想的な譲渡先とのマッチングを叶えることができます。
このように、M&Aが成功するかどうかは「誰がその実務を担うか」で大きく変わります。これは建物の設計図が立派でも、実際に施工する職人の腕が悪ければ、良い家が建たないのと同じ理屈です。信頼できる担当者に出会えるかどうかは、M&Aを考えるうえで最も大切な要素の一つなのです。
本記事では、今まさにM&Aを検討している経営者の方に向けて、「会社の規模ではなく、“誰がやるか”がすべてである」と言える理由と、具体的な見極め方、失敗しないための判断軸についてわかりやすく解説していきます。あなたの大切な会社を未来に繋ぐための参考になれば幸いです。
2. 仲介会社の規模よりも重要な「担当者の力量」
M&Aにおいては「どこの仲介会社に依頼するか」よりも、「誰が担当するのか」が成果を大きく左右します。たとえ知名度のある上場企業や大手の仲介会社であっても、担当者に経験や誠実さが欠けていれば、交渉はうまく進まず、満足のいく結果にはつながりません。実際、多くの成功事例や失敗事例を分析すると、担当者の能力と人間性がM&Aの成否に直結していることが明らかになります。
大手仲介会社に所属するアドバイザーであっても、必ずしも優秀とは限りません。特に新卒や転職直後の社員が現場を担当しているケースも多く、経営者の感情や業界特有の慣習を理解しないまま、テンプレート通りの提案を繰り返すことがあります。これは、M&Aが「会社の売買」ではなく、「人と人との信頼によって成り立つ」営みであることを軽視した対応といえます。
実際に、中小企業庁が発行する『中小M&Aガイドライン』でも、「M&Aは信頼関係の上に成り立つ取引であり、専門家の誠実性が成否を左右する」と明記されています。このように、国もM&Aの成功にはアドバイザー個人の誠実さや経験が不可欠であると認識しており、仲介会社のブランドよりも担当者そのものの資質を重視する姿勢が求められているのです。
ここで、わかりやすく比較してみましょう。
評価ポイント | 大手仲介会社(担当が未熟) | 中小FA(担当が経験豊富) |
---|---|---|
提案内容の質 | 汎用的で型通り | 業種や会社に応じて柔軟 |
売主への配慮 | 利益優先でドライ | 感情や想いに寄り添う |
交渉力 | 価格条件に偏りがち | 人間関係を活かした調整力あり |
情報管理 | 複数担当者で情報が分断 | 一貫して本人が責任を持つ |
たとえば、ある製造業の売却案件では、大手仲介会社を通じて上場企業への譲渡を目指していましたが、担当者が頻繁に代わり、相手企業との交渉が空中分解してしまいました。引き継ぎが不十分だったために、交渉の前提が食い違い、売主と買主の間に誤解が生じてしまったのです。
一方で、同じ売主が後に選んだのは小規模なFA事務所でした。そこでは、代表自らが一貫して担当し、売主の経営理念や従業員への想いを理解したうえで、買主企業にもその価値を丁寧に伝えました。その結果、譲渡価格自体は大手が提示した条件よりやや下回ったものの、従業員の雇用や社名の継続、創業者の想いが尊重された形でM&Aが成立しました。売主にとっては、数字よりも「誰に託すか」が最重要だったのです。
このような実例からも、規模の大きな仲介会社に頼めば安心、という考え方は非常に危険だと言えます。むしろ、組織の大きさによって現場が見えにくくなったり、経験の浅い担当者に当たってしまうリスクもあるため、依頼前に「誰が自分の案件を担当するのか」「どんな実績があるのか」を明確に確認することが大切です。
信頼できるM&Aパートナーを見極めるには、以下のようなポイントが有効です。
- 面談時の質問に対して具体的に答えてくれるか
- 過去の実績や対応した業種を明示しているか
- 「譲渡後」の視点でアドバイスしてくれるか
- 担当者自身がどれだけM&Aに責任を持っているか
つまり、M&Aを成功させるうえで最も重要なのは「どの会社に頼むか」ではなく、「誰に任せるか」です。会社の知名度や手数料の安さに惑わされず、あなたの想いを真剣に受け止め、最後まで伴走してくれる担当者かどうかを見極めることが、後悔しない第一歩となります。
3. 「安かろう・悪かろう」の罠:手数料だけで判断しない
M&Aの支援会社を選ぶ際に、「手数料が安いから」という理由だけで決めてしまうのは非常に危険です。たしかに費用は重要な要素ですが、安すぎる手数料にはそれ相応の“落とし穴”があります。支援の質が低くなる、経験のない人が担当になる、適当な買い手を紹介される――こうした事態を招きかねません。
中小企業庁が公開している「中小M&Aガイドライン(2020年改訂)」によれば、M&A支援会社の報酬は主にレーマン方式と呼ばれる段階報酬が一般的です。たとえば譲渡価格が2億円の場合、手数料として5〜6%(1,000〜1,200万円)が相場とされています。この相場を大きく下回るような「着手金0円、成功報酬200万円のみ」といった破格のプランには注意が必要です。
以下は、一般的な手数料水準の比較表です。
項目 | 一般的な仲介会社 | 極端に安い仲介会社 |
---|---|---|
着手金 | 50〜100万円程度 | 0円(無料を強調) |
中間金 | あり(基本合意時など) | なし |
成功報酬 | 譲渡価格の5%前後 | 一律200万円など |
担当者の経験 | 経験者・専門職が多い | 営業職が中心・新人も多い |
買い手選定 | 経営理念や文化を重視 | 数で勝負・マッチング優先 |
こうした「格安M&A仲介会社」は、実際には広告費を削ることで集客力が弱く、買い手候補のネットワークも乏しい傾向にあります。また、担当者に高いインセンティブがないため、案件にかける熱量や対応スピードも低下しがちです。つまり、「安いには安いなりの理由」があるのです。
実際に、ある製造業の売却案件では「手数料が圧倒的に安い」という理由で無名のM&A仲介会社に依頼した結果、以下のような問題が発生しました。
- 業界知識が乏しく、買い手候補に正確な説明ができなかった
- 提案された買い手が同業者ではなく、不適切なマッチングだった
- 交渉中に担当者が退職し、プロセスが一時停止した
- 結果的に6か月間を無駄にし、別の支援会社に依頼し直すことになった
逆に、当初「手数料が高く見える」として敬遠していた支援会社に依頼し直した後は、以下のような改善がありました。
- 業界に精通した担当者がつき、買い手のニーズに応じた提案が可能に
- 買い手側との交渉をリードし、社長の想いも丁寧に伝達された
- 成約まで4か月という短期間で譲渡が成立
このように、M&Aにおける「手数料の安さ」は、決して“お得”ではありません。むしろ安すぎる報酬体系には「スキルの不足」「時間をかけてもらえない」「戦略的な提案がない」といった重大なリスクが潜んでいます。
中小企業庁も「安価な手数料をうたう業者には注意が必要」としており、実際に2023年には“価格競争によるサービスの質の低下”が業界課題として取り上げられました。さらに、事業承継・引継ぎ支援センターにおいても、仲介業者の紹介における「手数料のみでの選定」は避けるよう注意喚起が行われています。
M&Aは一度きりの大きな意思決定であり、その結果は会社の未来や従業員の人生にも影響します。単に「安いから」と手数料で選ぶのではなく、「どんな支援を受けられるか」「誰がその支援をしてくれるのか」といった本質的な視点を持つことが、最終的に「後悔しない選択」へとつながります。
つまり、手数料の金額はあくまで「目安」であって、「価値の高さ」ではありません。本当に信頼できるM&Aアドバイザーは、手数料の中に誠実な支援・丁寧な準備・成約後のフォローまでを含めてくれるものです。目先の安さに惑わされず、総合的な質で支援者を選ぶことが、成功への確実な第一歩です。
4. 大手仲介 vs 小規模FA:どちらが優れているのか?
M&Aを検討する経営者にとって、「大手の仲介会社に依頼するべきか?」「小規模なFA(ファイナンシャル・アドバイザー)でも大丈夫なのか?」という悩みは非常に大きいものです。結論から申し上げると、“どちらが優れているか”ではなく、“自社に合った支援者を選ぶこと”が何よりも大切です。それぞれの強みと弱みを理解し、自社のニーズに合ったパートナーを選ぶことで、後悔のないM&Aを実現できます。
まず、大手仲介会社と小規模FAの主な違いを整理してみましょう。
比較項目 | 大手仲介会社 | 小規模FA |
---|---|---|
ブランド・安心感 | 知名度があり安心感がある | 無名な場合もあり、不安に感じることも |
案件数 | 常時数十〜数百件の案件を保有 | 少数精鋭で限定的な案件数 |
買い手のネットワーク | 多数の買い手に一斉打診が可能 | 業種やエリアに特化した独自ネットワーク |
担当者の質 | 人によってバラつきがある | 代表者や経験者が直接担当することが多い |
サービスの柔軟性 | マニュアル通りの対応が多い | オーダーメイド型の支援が可能 |
報酬体系 | レーマン方式でやや高額 | 柔軟に応相談、ただし低すぎると注意 |
たとえば、大手仲介会社の強みは「安心感」「買い手候補の多さ」「全国展開による対応力」にあります。特に初めてM&Aに取り組む企業にとっては、知名度があるだけでも「とりあえず任せてみよう」と思えるかもしれません。
しかし、その裏では「大量の案件を同時に抱えることによる手薄な対応」や、「担当者の経験不足」「マニュアル化された画一的な支援」といった課題もあります。実際に、筆者が相談を受けた企業の中には「大手に任せたが、担当者が自社の業界を理解しておらず、買い手との交渉がうまく進まなかった」という声もありました。
一方、小規模FAの魅力は「密なコミュニケーション」「担当者が最初から最後まで一貫して対応」「企業の個別事情に寄り添った戦略立案」が挙げられます。特に地域密着型や専門特化型のFAは、特定の業種やエリアにおける買い手との強固な関係を築いており、実は成約率が高いケースも少なくありません。
例えば、ある地方の物流業者は大手仲介会社では「買い手が見つからない」と言われたにもかかわらず、地元に強い小規模FAに依頼したところ、同地域の同業者とのM&Aが成立し、社員の雇用も継続されたうえ、シナジーも得られたという事例がありました。これは「顔の見える関係」が活きた典型です。
もちろん、小規模FAにも注意点はあります。担当者が1人で全てを担う場合、情報共有や対応スピードに不安が出ることもありえます。また、買い手の候補数が少ないため、時間がかかる可能性も否定できません。ですが、それを上回る“密な対応”や“共感ある提案”によって、満足度の高いM&Aになることが多いのも事実です。
このように、両者にはそれぞれ得意分野や弱点が存在します。大手か小規模か、という二元論ではなく、以下のような観点で判断することが大切です。
- 自社の業種や規模に合った提案ができるか
- 担当者が経営者の想いや課題に寄り添えるか
- 提案の内容が「自社の未来」を見据えているか
- 信頼できる人物が直接担当してくれるか
つまり、「どちらが優れているか」ではなく、「どちらが自社にとって最適か」が本質です。知名度や報酬の安さではなく、最終的に“この人に任せたい”と思えるかどうかが、後悔しないM&Aの第一歩になります。
5. M&Aは属人性の高い仕事である理由
M&Aは、仕組みや会社の看板ではなく「誰が担当するか」で結果が大きく変わる、極めて属人性の高い仕事です。つまり、成功するか失敗するかは、その担当者個人の能力や人間性に大きく依存しているということです。これは、金融商品や保険のように仕組みが整っていれば機械的に処理できる取引とは本質的に異なり、「人と人の信頼」によって進んでいくからです。
中小企業庁の「事業承継・引継ぎ支援の在り方に関する調査報告書(2022年)」では、売却経験者のうち68.4%が「担当者との信頼関係が意思決定に影響を与えた」と回答しています。この数字からも、制度やフレームワークよりも、現場で“誰が支援したか”が決定的な意味を持つことが分かります。
なぜ属人性が高くなるのか、その背景には以下の3つの特性があります。
- 交渉が感情に左右されやすい:価格や条件だけでなく、相手企業の文化やトップの人柄への共感が成約を左右します。
- 情報が非対称である:売り手・買い手の情報にギャップがあり、調整力が求められます。
- 唯一無二の案件である:同じ会社・同じ条件のM&Aは二度とないため、パターン処理が通用しません。
たとえば、ある地方の建設会社のM&A案件では、大手仲介会社がマニュアル通りの進行を行った結果、買い手側の本音を引き出せずに交渉が決裂しました。その後、別のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)が案件を引き継ぎ、経営者同士の面談を重視して相互理解を深めたところ、半年以内に成約となりました。このように、「交渉の場づくり」や「信頼の橋渡し」ができるかどうかが、属人性の典型的な例です。
さらに、担当者が優れていれば、以下のような好影響が期待できます。
- 買い手のニーズを的確に読み取り、適切な提案ができる
- 売り手の経営者の想いを丁寧に汲み取り、翻訳して伝えられる
- 難航した交渉を円滑に進めるための“落とし所”を提示できる
逆に、担当者に経験や人間力が欠けていると、次のようなリスクが生じます。
- 情報共有が不十分で、買い手との信頼関係が築けない
- 売却側の条件や譲れない価値観が理解されない
- トラブル発生時のリカバリーが遅れ、交渉が破綻する
特に中小企業においては、代表者の存在が会社そのものであり、譲渡の場面ではその“人間関係”や“社風”の継承も含めた話し合いが求められます。つまり、数字や資料だけでは語れない情報を読み取る力こそが、支援者に求められるスキルなのです。
実際、筆者が関与したある案件では、譲渡先候補の社長が「担当者の対応が誠実だったからこの案件を前向きに考えたい」と評価し、結果として競合よりも条件面では劣るにもかかわらず成約に至ったことがありました。このように、属人性の高さがプラスに働いた成功例は数えきれません。
このような背景から、M&Aを成功に導くには「制度」や「企業ブランド」よりも、「現場で動く一人の人間」に着目することが重要です。属人性を恐れるのではなく、だからこそ信頼できる“人”を見つけることが、後悔しないM&Aのカギとなります。
6. M&A成功のカギは“人間力”にあり
M&Aを成功させるために最も重要な要素は、担当者の“人間力”です。専門知識やスキーム設計のスキルももちろん大切ですが、最後にものを言うのは「この人になら任せたい」「この人の言葉なら信じられる」と思える誠実さ、共感力、対話力です。売り手と買い手、双方の信頼関係を丁寧に築けるアドバイザーこそが、M&Aを成約へと導きます。
特に中小企業のM&Aでは、会社の業績や財務状況だけでなく、創業者の想いや地域とのつながり、従業員の雇用の行方など、数字では見えない価値が数多く関わっています。そうした“見えない価値”を理解し、相手にも伝えられるのが、人間力のあるアドバイザーの真の力です。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」でも、「M&Aは信頼関係に基づく人と人との取引である」と明記されており、アドバイザーには“企業の価値や想いを的確に伝える力”が求められるとされています。つまり、誠実であること、相手の立場に立って物事を考えられること、そして対話を通じて調整していける人間力こそがM&Aの成否を左右するのです。
以下は、人間力の高いアドバイザーに共通する特徴です。
- 話をよく聞き、質問に対して丁寧に説明してくれる
- 相手の想いや価値観を尊重し、調整に時間を惜しまない
- 嘘やごまかしをせず、情報開示に誠実
- 冷静にリスクも伝え、無理な進行をしない
- 買い手・売り手の“間”に立ち、両者の立場を理解して調整できる
実際に筆者が支援した案件では、売り手企業の社長が「社員の雇用を守りたい」という強い想いを持っていました。当初は価格面で折り合いがつかず難航していましたが、アドバイザーが粘り強く交渉し、買い手企業の社長にも誠意をもって状況を説明。その結果、買い手側が社員全員の継続雇用を確約し、最終的に合意に至ったのです。これは、表面的な条件交渉ではなく、関係性構築を重視したからこその成功でした。
また、買い手企業に対しても「この担当者が間に入ってくれるなら安心して交渉できる」と思ってもらえることが、良い結果を導くうえで重要です。対話を通じて相手の信頼を得るには、資料の説明だけでなく、温度感を持った言葉選びや共感が欠かせません。
たとえば次のような場面では、アドバイザーの人間力が特に問われます。
- 売り手が不安を感じているときに寄り添えるか
- 買い手との条件交渉で感情的な対立が生じたときに冷静に仲裁できるか
- 両者の間で伝えづらい事実を正直に伝え、信頼を損なわずに話を進められるか
このような場面では、形式的なスキルよりも“誠意ある対応”が問われます。M&Aは書類のやりとりだけで完結するものではなく、人の気持ちが動いてはじめて成立する取引です。そのため、相手の立場を理解しながら、感情も含めて丁寧に調整できる能力=人間力が成否を分けるのです。
つまり、M&Aは「この人となら一緒にやっていける」と思える関係構築ができるかどうかが成約へのカギになります。誠実な態度で対応してくれるアドバイザーかどうか、自分の会社の未来を託してもいいと思える人かどうか。そこを見極めることが、後悔しないM&Aへの第一歩です。
7. 仲介かFAか?迷うなら“座組設計”から考える
M&Aを進めるうえで、「仲介会社に頼むべきか、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)に依頼すべきか」で悩まれる方は少なくありません。結論から申し上げると、その答えは「仲介かFAかという形式で決めるのではなく、自社の目的や状況に合った“座組(組み合わせ)”を最初に設計すべき」です。形式にとらわれるのではなく、ゴールから逆算して最適な体制を組むことが、成功するM&Aの第一歩となります。
一般的に、仲介とFAの違いは以下の通りです。
比較項目 | 仲介会社 | FA(ファイナンシャル・アドバイザー) |
---|---|---|
支援対象 | 売り手・買い手の双方を支援 | 売り手または買い手どちらか一方 |
利益の一致性 | 双方支援による利益相反のリスク | クライアントの利益に集中 |
交渉の立場 | 中立的に見えるが、実態は案件成約重視 | 依頼主の希望に沿った交渉が可能 |
対応スタイル | スピード重視、テンプレート対応が多い | 個別事情に合わせた柔軟対応 |
報酬構造 | 成功報酬型が主流、安く見える | 着手金や月額報酬もあり透明性が高い |
多くの方は、「仲介は両方に関与してくれて便利」「FAは片方だけだから不便そう」と感じるかもしれませんが、それはあくまで形式上の違いです。重要なのは、自社の目的が「とにかくスピーディに売却したい」のか、「従業員の雇用や社風の継続を大切にしたい」のか、といった経営者の想いに沿った体制を選ぶことです。
たとえば、以下のようなケースがあります。
- 「高く売りたい」「買い手を広く募りたい」→仲介方式がマッチしやすい
- 「想いを汲んでくれる相手に譲りたい」「交渉を有利に進めたい」→FAが最適
- 「情報を極力オープンにしたくない」「身内や知人に譲りたい」→社外アドバイザーなしの選択肢も
実際に、筆者が支援した案件では、当初は仲介方式を選択していたものの、「買い手が価格重視の提案ばかりで気が進まない」と相談を受け、途中からFAに切り替えたことで「理念の近い企業とのM&A」が成立しました。その企業は社名も従業員の待遇もほぼそのまま残し、むしろ新しい買い手の支援を受けて事業拡大に成功しています。
このように、形式から入るのではなく「どんなM&Aを実現したいか」から逆算して、最もふさわしい“座組”を組み立てることが本質です。場合によっては、以下のような複合パターンも有効です。
- 自社にFAをつけた上で、買い手側は仲介業者経由でアプローチ
- 初期段階は仲介で進め、成約前にFAに切り替える
- 補助金申請や税務対応だけ別の士業に依頼し、FAとは役割分担
これらはすべて「座組設計」によって可能になるアプローチです。つまり、「仲介 or FA」という二択ではなく、「どのような人材をどう組み合わせて、どんな進め方をするか」がM&A成功の鍵を握っています。
大切なのは、以下の3つの問いを自分に投げかけてみることです。
- 「自社にとって最優先したいものは何か?」(価格か、雇用か、スピードか)
- 「どこまで他人に任せたいか?」(一任したいのか、判断は自分でしたいのか)
- 「誰にどこまで関与してもらうと安心できるか?」(専門家・士業・紹介者など)
その答えをもとに、あなたにとっての最適なM&Aの座組みを構築していくことが、後悔のない未来につながります。仲介かFAかで迷ったら、ぜひ「座組設計」という視点を持って考えてみてください。
8. “慎重すぎるくらいでちょうどいい”M&Aのパートナー選び
M&Aは会社の未来を決める重要な意思決定です。だからこそ、「どこの会社に頼むか」ではなく、「誰に任せるか」を冷静に見極めることが大切です。そして、その判断には“慎重すぎるくらいでちょうどいい”という姿勢が欠かせません。M&Aの支援者選びは、家を建てる建築士選びにも似ています。価格や規模だけで決めるのではなく、「この人なら信頼できる」「最後まで伴走してくれそう」と思える人物に任せることが、後悔のない結果につながるのです。
中小企業庁が公表する「中小M&Aガイドライン」でも、M&A支援業者の選定において「仲介会社の名称や外観だけで判断せず、具体的な支援内容や担当者の説明責任を確認すること」が推奨されています。つまり、「大手だから安心」「上場しているから大丈夫」といった先入観に頼るのではなく、どんな支援が受けられるのか、その説明をどこまで誠実にしてくれるかを自分の目と耳で確かめることが求められているのです。
実際にM&Aの現場では、担当者が不誠実だったことで交渉が破談になるケースも少なくありません。逆に、慎重に選んだアドバイザーが真摯に対応してくれたことで、想定以上の好条件での成約につながった事例も多く存在します。ここでは、実際の現場で起きた2つの対照的な例をご紹介します。
事例①:ブランドだけで選んで失敗したケース
ある地方の製造業者は、「大手の仲介会社だから安心」と信じて依頼しました。ところが、実際に担当についたのは経験の浅い若手で、会社の強みや市場の特徴を正しく伝えることができませんでした。買い手候補との面談も形式的で、売主の想いや理念は一切共有されず、交渉は決裂。1年近くを無駄にする結果となってしまいました。
事例②:地道な対話で信頼を得たケース
一方、別の卸売業者は、最初から「誰が担当するか」を重視し、複数の仲介会社と面談を重ねたうえで、最終的に中小のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に依頼しました。担当者は企業の業務フローまで丁寧に理解し、買い手企業に対しても社風や従業員への想いを的確に伝えました。その結果、価格以上に“共感”によって交渉が進み、雇用の継続や役員の再任も実現し、売主も満足のいくM&Aとなりました。
このように、会社の規模や有名さよりも、“誠実に対話してくれるか”“自社に時間を割いてくれるか”“何より信頼できるか”という視点で選ぶべきです。そしてそのためには、以下のような観点をチェックすると良いでしょう。
- 面談時の受け答えに具体性と誠意があるか
- 自社の業界知識を持っているか、事前調査をしているか
- 「どこまでやってくれるのか」の説明が明確か
- 契約前に、リスクや進め方をきちんと説明してくれるか
- 「この人に任せたい」と自然に思えるか
また、情報を鵜呑みにしないことも極めて重要です。ネット上のランキングや比較サイト、営業トークで提示される“実績数”や“高額譲渡事例”は、必ずしもあなたの会社に当てはまるとは限りません。気になる点は必ず質問し、納得するまで話を聞く姿勢を貫いてください。
中には、「質問しすぎて嫌がられるのでは」と心配される方もいますが、逆に誠実な業者ほど、そうした姿勢を歓迎し、しっかりと説明してくれるものです。逆に、質問に対して曖昧な回答しかしない、具体的なプロセスを示さないような業者は、初期段階で見極めて距離を置くべきです。
M&Aの失敗は、契約書を結んでから気づくのでは遅すぎます。慎重すぎるくらいでちょうどいい。そう考えて、あなたの大切な会社を託せる相手を、じっくり選んでください。
9. アーク・パートナーズの想いとご支援方針
アーク・パートナーズが大切にしているのは、会社の売却を「一つの取引」として捉えるのではなく、「想いを未来へ託すプロセス」として向き合う姿勢です。私たちは、M&Aが本来持つ崇高な目的――事業の継続、従業員の幸せ、地域経済への貢献――を実現するためには、何よりも“誠実さ”と“高い品質”が求められると考えています。
近年、M&A市場は急拡大し、それに伴って仲介会社も急増しました。中には、利益優先の営業主導体制や経験不足のプレーヤーが担当に就くケースも少なくありません。しかし、アーク・パートナーズは、売却を検討するオーナー様一人ひとりに寄り添い、その会社が持つ固有の価値を正しく伝え、誠意ある交渉を尽くすことにこだわり続けてきました。
私たちの支援方針は、大きく以下の3つに集約されます。
- 誠実で中立的な支援:一方に偏ることなく、信頼と対話をベースに両社にとって納得感あるM&Aを追求します。
- オーダーメイド型の支援:業種・エリア・規模に応じた提案と調整を行い、定型的なM&Aで終わらせません。
- 徹底した準備・丁寧な進行:企業調査、IM作成、候補先リスト作成、条件交渉、成約後の支援まで、細部までこだわります。
また、私たちは「担当者の質」がM&Aの成否を決めることを、200件以上の現場経験から確信しています。そのため、担当者には以下のような行動指針を徹底しています。
- 社長の想いを丁寧に聞き、M&Aに反映する
- 買い手候補の選定では、資本力より理念の一致を重視
- 秘密保持や情報管理を徹底し、信頼を損なわない
- 相手の立場に立った言葉選びと交渉姿勢
例えば、ある地方の専門商社の案件では、売主の希望が「従業員の雇用維持」と「理念の継承」でした。私たちは、条件が少し劣っていた別の買い手企業を推し進め、双方のトップ同士の対話の場を多く設けることで信頼を築き、売主の意向を尊重した形での譲渡を実現しました。その後、売主からは「アーク・パートナーズにお願いして本当に良かった」という言葉をいただきました。
また、アーク・パートナーズは以下のような公的信頼性・実績も備えています。
- 中小企業庁 登録M&A支援機関
- M&Aアドバイザー歴10年以上、累計関与実績200件超
- 税理士・行政書士・弁護士など各分野の専門家とも連携
私たちの使命は、売主の方に「納得して未来を託す決断をしていただく」ことです。単に高く売る、早く売るという目的だけでなく、譲渡後の未来までしっかり見据えた支援を一貫して行います。そのため、無理に案件を推し進めることはせず、「やらない選択肢も含めて」本当に納得できるM&Aかどうかを、オーナー様と一緒に考える姿勢を大切にしています。
M&Aは一社一社が唯一無二の物語です。私たちアーク・パートナーズは、その物語を丁寧に編み、次の世代に受け継ぐお手伝いを誠実に行ってまいります。
まとめ
M&Aは「どこの会社に頼むか」ではなく、「誰に任せるか」が成否を大きく左右します。特に中小企業のM&Aでは、担当者の誠実さ・経験・人間力が、譲渡後の未来を左右すると言っても過言ではありません。だからこそ、選定においては“慎重すぎるくらいでちょうどいい”姿勢が必要です。
- 担当者の人間力が成果を左右する
- 仲介かFAかは座組で考える
- 手数料だけで選ばない
- 情報を鵜呑みにしない
- 信頼できる支援者を見極める
詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。
