全国対応・完全成功報酬で安心支援
秘密厳守。ご相談はすべて無料です
お気軽にご相談ください

建設業界でM&Aは有効か?成功事例と共に解説する5つのメリットと注意点

「建設業の後継者が見つからない」「人手不足で事業の継続が難しい」「このままでは会社を畳むしかないかもしれない」
そんな悩みをお持ちではありませんか?

本記事では、建設業界におけるM&Aの活用が、これらの課題解決につながるかどうかについて、事例と共にわかりやすく解説します。

■本記事を読むと得られること

  1. 建設業界におけるM&Aの最新動向がわかる
  2. 売り手・買い手それぞれのメリットが理解できる
  3. 成功させるための注意点と事前準備が学べる

■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上、200件超の中小M&A支援実績を有し、中小企業庁の登録M&A支援機関として活動しています。業界特化の知見と誠実な姿勢で支援を行っています。

この記事を読むことで、建設業界でのM&Aが本当に自社にとって有効なのかどうかを見極め、今後の最適な一手を考えるための視点が得られます。
ぜひ最後までご覧ください。

1. 建設業界を取り巻く今の課題とは?

1.1 技術継承と人材確保の深刻な問題

現在の建設業界では、技術を次世代に受け継ぐ人材が著しく不足しており、それが業界全体の将来性を大きく左右する深刻な問題となっています。

その背景には、高齢化と若者の建設業離れが大きく関係しています。国土交通省の「建設業を巡る現状と課題」によると、建設業就業者の約35%が55歳以上である一方、29歳以下の若年層は全体の約11%にとどまっています。このように若年層の比率が極端に低く、高齢化が進行していることは、今後の技術継承が困難になることを意味します。

また、建設業は重労働・長時間労働というイメージが強く、若者にとって魅力的な業界とは言いづらい状況です。働き方改革やICT技術の導入が進んではいるものの、待遇改善が十分に追いついていないのが実情です。

たとえば、ある中堅ゼネコンでは、熟練の鉄筋工が定年退職を迎えたことで、現場の工程に大きな影響が出ました。新たに若手を採用しても、技術習得までには時間がかかり、即戦力としての活用が難しいという課題が浮き彫りになっています。

このように、人材不足と技術継承の問題は密接に関わっており、建設業界全体にとって緊急性の高い課題といえるでしょう。

1.2 業界構造と市場縮小の現実

建設業界には、元請け・下請け・孫請けといった多重下請け構造が根付いており、これが業界全体の効率性や健全性に影響を及ぼしています。

この構造の中で、下位の業者ほど低価格競争に巻き込まれ、適正な利益を確保することが難しくなっています。結果として、資金力や人材の面で疲弊し、倒産に追い込まれる中小企業も少なくありません。

さらに、日本全体の人口減少や公共投資の減少により、市場そのものも縮小傾向にあります。国土交通省の資料によると、国内の建設投資額はピークだった1992年度の84兆円から、近年ではおよそ60兆円台にとどまっており、需要の縮小が明らかです。

加えて、建設需要の中心だった新設住宅着工数も減少傾向にあり、とくに地方都市では民間案件が極端に少ない地域も存在します。国土交通省の「住宅着工統計」によれば、2022年の新設住宅着工数は前年比で減少し、今後もその傾向が続くと予測されています。

このような中、都市部における再開発やインフラ老朽化対策などの一定の需要はあるものの、それだけで業界全体の縮小をカバーするには不十分です。

たとえば、ある地方の土木建設業者では、公共工事の発注件数が年々減少しており、安定的な経営が困難になっています。その結果、従業員のリストラや機材の売却に踏み切らざるを得なくなり、廃業を視野に入れた経営判断を迫られているケースもあります。

こうした市場縮小と業界構造の複合的な問題により、建設業界では「単独では生き残れない」という危機感が高まっており、経営戦略としてのM&Aに注目が集まっています。

総じて、建設業界を取り巻く現状は、人材の確保と技術の継承の難しさ市場そのものの縮小業界構造の非効率性という複数の課題が同時に存在しており、これらを放置することは企業の存続に直結するリスクとなります。

2. なぜ今、建設業界でM&Aが注目されているのか

2.1 後継者不在問題と事業継続の選択肢

建設業界では、経営者の高齢化が急速に進む中、事業を引き継ぐ後継者が見つからない企業が急増しています。この問題に直面する中小建設会社にとって、M&Aは現実的かつ有効な「事業継続の手段」として注目されています。

中小企業庁の「2023年版 中小企業白書」によると、60歳以上の経営者が全体の約65%を占めており、2025年にはその大半が引退時期を迎えると予測されています。一方、同白書では「後継者未定」の企業が約127万社にものぼり、その中には建設業が多く含まれていることも報告されています。

また、後継者が不在のまま廃業を選択した場合、従業員の雇用、取引先、地域社会への影響も無視できません。特に地方の建設業者では、地域インフラの維持や緊急対応にも関わることが多く、単なる「1社の問題」ではなく「地域課題」としての側面を持っています。

実際に、ある地方の土木系企業では、代表取締役が70代を迎え、親族や社員に後継者がいないことからM&Aを選択。買い手企業は同業種の東京本社の建設会社で、譲渡後は社名を残したまま支店化され、従業員の雇用も維持されました。さらに、買い手企業の技術支援により、公共工事の受注範囲が拡大し、以前よりも安定した経営に転じることができました。

このように、後継者不在による廃業リスクに対して、M&Aは経営資源を次世代に繋ぐ「合理的かつ現実的な選択肢」として、建設業界で支持され始めているのです。

2.2 異業種からのM&A増加とその背景

近年では、建設業界の企業が同業他社に限らず、異業種から買収されるケースも増えてきました。これは「人手不足」と「技術獲得」の両面に対応したい企業が、建設分野への参入を加速させているためです。

特にハウスメーカー、不動産業、物流、IT企業などが建設会社を買収することで、事業の川上から川下までを一貫してカバーできる体制を整える動きが顕著です。これにより、建設ノウハウや建設業許可を持つ会社を確保し、迅速な市場参入を可能にしています。

国土交通省「建設業を巡る現状と課題(2023年)」でも、建設業許可を取得していない企業にとって、資格要件や実務経験の確保が大きなハードルであると明示されています。そのため、すでに許可を保有している企業を買収することで、時間とコストを削減できる点がM&Aの大きなメリットとされています。

たとえば、2021年にはIT企業が中堅建設業者を買収し、スマートシティ開発事業に進出しました。このM&Aによって、買収企業は自社のソフトウェア技術と、建設会社が持つ施工能力を融合させ、新たなビジネスモデルを確立しています。

さらに、以下のような業種が建設業界へのM&A参入を進めています:

異業種 参入目的 M&A対象例
ハウスメーカー 内製化によるコスト削減 電気・内装・足場会社
不動産業 リノベーション・再販事業強化 リフォーム系建設会社
IT・IoT企業 スマートシティ・BIM導入 ゼネコン・設計事務所
物流・倉庫業 倉庫建設の自社完結化 鉄骨・外構業者

このように、異業種による建設業M&Aは、単なる「事業拡大」ではなく、「事業モデルの転換」や「DX推進」を目的としている点に特徴があります。

結果として、売り手企業にとっては廃業回避だけでなく、買い手の成長戦略と連動する形で、従業員や顧客への継続的なサービス提供も可能になります。

以上のように、建設業界では「後継者不在」という内的要因と、「異業種の戦略的参入」という外的要因が重なり、M&Aがかつてないほど注目されているのです。これからもその傾向は続くと見られており、M&Aは単なる事業譲渡にとどまらず、成長と継続のための手段として重要性を増しています。

3. M&Aで解決できる建設業の3つの課題

3.1 後継者問題の解決

建設業界では、事業を引き継ぐ人がいない「後継者不在問題」が深刻化しています。この問題に対して、M&Aは非常に有効な解決手段です。会社そのものを売却し、新しい経営者に引き継いでもらうことで、経営の継続が可能になります。

中小企業庁「中小企業白書2023年版」によれば、60歳以上の経営者のうち、約半数が後継者未定であると報告されています。特に地方の建設業者では、子どもが家業を継がない、親族に継がせたくないといった理由で後継者難が深刻です。

こうした背景から、M&Aにより第三者に事業を譲渡する動きが活発になっています。たとえば、北海道の中堅建設業者A社では、社長が70代になり後継者もおらず、同地域のゼネコンB社に事業を譲渡しました。A社の社員はB社のグループ会社としてそのまま雇用が継続され、長年培ってきた技術や取引関係も維持されました。

このように、M&Aを通じて経営者交代をスムーズに進めることで、会社を存続させながら後継者問題を解決することができます。

3.2 雇用と従業員の保護

建設会社が廃業することで、従業員の雇用が失われるケースも少なくありません。M&Aを活用することで、会社や事業が継続され、従業員の働く場を守ることができます。

特に建設業はチームワークが重要な業種であり、長年働いてきた職人や技術者が突然職を失うと、再就職は簡単ではありません。また、長期プロジェクトの途中で会社が消滅すれば、取引先にも大きな混乱を与えるでしょう。

厚生労働省が発表した「雇用動向調査(令和5年)」によれば、建設業の離職率は全産業平均より高い傾向にあり、安定した雇用の確保が業界全体の課題となっています。

実際に、関西の小規模建設業C社では、業績は良好でしたが、社長が健康上の理由で廃業を検討していました。最終的に、地域の建設グループ企業D社がM&AによりC社を吸収。従業員は全員雇用継続され、建設現場での配置も変わらず、安心して仕事を続けることができました。

このように、M&Aによる事業承継は、経営者だけでなく、従業員やその家族の生活を守る手段としても有効です。

3.3 資産と技術の有効活用

建設業では、長年培った技術やノウハウ、そして設備や車両などの資産が多く存在します。これらは簡単に他社が再現できるものではなく、非常に価値のある資源です。しかし、廃業となれば、それらの資産や技術は失われてしまう可能性が高くなります。

M&Aを通じて、こうした資産や技術を他社が引き継ぐことで、無駄なく有効に活用することができます。特に建設業における熟練の施工ノウハウや、地域での信頼・ブランドは、新たな経営者にとっても大きな魅力です。

また、建設業には国の許認可が必要であるため、既に許可を取得している企業を買収することで、スムーズに新規分野や新エリアに参入することができます。これはM&Aならではのメリットです。

たとえば、首都圏の建設会社E社は、新たに東北地方に進出しようとした際、既に営業基盤を持っていたF社を買収しました。F社は熟練の職人と地域の顧客を抱えており、E社は最小限のコストで新規事業をスタートできました。このように、M&Aは資産や人材をそのまま引き継ぐ形で、時間と費用のロスを最小限に抑えた展開が可能です。

このように、M&Aを活用すれば、ただ会社を売却するというだけでなく、長年蓄積された価値を次のステージで活かすことができ、社会全体としても損失を最小化することにつながります。

以上のように、建設業界におけるM&Aは「後継者問題の解決」「雇用と従業員の保護」「資産・技術の有効活用」といった深刻な課題を同時に解決できる有力な手段です。経営者にとっても、従業員にとっても、業界全体にとっても、大きな可能性を秘めた選択肢であるといえるでしょう。

4. 建設業M&Aのメリットを売り手目線で見る

4.1 経営者の引退・資金確保

建設業界において、経営者が高齢を迎えても後継者が見つからない場合、M&Aは引退の道を開く有効な手段となります。単なる廃業ではなく、会社を誰かに引き継いでもらうことで、これまで築いてきた事業を残しながら、まとまった資金も得ることができます。

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」では、廃業による経済的損失は非常に大きく、特に中小企業においては雇用や地域経済への影響も深刻だとされています。M&Aであれば、会社の価値を買い手に評価してもらい、売却益を得られるため、経営者の老後資金として活用できる点が大きなメリットです。

たとえば、関東地方で30年以上建設業を営んできたG社の社長は、70歳を超えて体力的に厳しくなったことから事業承継を検討していました。息子や親族に継ぐ意思がなく、廃業も視野に入れていたところ、同業の大手建設グループH社がM&Aによって買収。結果として、社長は2年の顧問期間を経て円満に引退し、退職金とは別に売却益を老後資金として確保できました。

このように、M&Aは「事業の終わり」ではなく、「経営者の第二の人生の始まり」として機能し、引退と同時に資金も得られる選択肢として注目されています。

4.2 雇用維持とブランド存続

M&Aのもうひとつの大きなメリットは、会社の従業員や取引先、そして地域で築いてきたブランドを維持できることです。廃業となれば、従業員は職を失い、長年築いてきた信頼も失われてしまいます。しかし、M&Aであれば、そのままの形で事業が継続されることも多く、従業員にとっても取引先にとっても安心材料となります。

建設業は特に「地域密着型」のビジネスであり、地元の信頼や施工実績が次の仕事に直結します。ブランドや信用力は短期間では築けないため、売却先がその価値を引き継げることは、売り手にとっても喜ばしい結果です。

実際に、九州地方の小規模建設会社I社では、社長の引退をきっかけに、地元で複数の支店を展開するJ社に譲渡されました。I社は長年地域密着で営業してきたため、地元からの信頼も厚く、買い手企業もそれを高く評価して買収に踏み切りました。M&A後も社名は残され、従業員の雇用はすべて継続。J社はI社の看板を活かして地域展開を強化する戦略を採用し、結果的に双方にとって大きなメリットが生まれました。

また、売り手側としては以下のようなメリットが得られます:

  • 従業員の生活が守られる
  • 長年築いてきたブランドや社名が残る
  • 地域とのつながりや信頼関係が維持される
  • 顧客や取引先への影響が最小限に抑えられる

これらの点から、M&Aは単なる「売却」ではなく、従業員や会社の未来を託す「承継」の手段として機能します。特に真摯に会社経営をしてきた中小企業の経営者にとって、自分の築いた会社が誰かに引き継がれ、発展していく姿は何よりの安心材料になるでしょう。

このように、M&Aは売り手経営者にとって、引退後の人生設計と、従業員・取引先・地域への責任を同時に果たすための有効な選択肢です。経営者の意思と企業の歴史を未来に繋ぐ方法として、多くの建設業者が前向きに活用しています。

5. 建設業M&Aのメリットを買い手目線で見る

5.1 資格者・ノウハウ・設備の一括獲得

M&Aを活用することで、買い手企業は即戦力となる人材や実績あるノウハウ、そして高価な建設設備などを一括で手に入れることができます。これは新規事業の立ち上げや他地域への展開を考えている企業にとって、大きな時間とコストの節約につながります。

建設業では、技術者の「実務経験」や「有資格者」が不可欠です。国土交通省の建設業法により、建設業許可を取得するためには以下のような人材条件が求められます:

  • 一定年数の実務経験を持つ「専任技術者」が在籍していること
  • 施工管理技士などの国家資格保持者がいること

こうした人材をゼロから採用・育成するには時間もコストもかかります。しかし、M&Aで既に育成された人材を引き継げば、即日から戦力として活躍できるのです。

たとえば、関西の中堅建設会社K社は、老舗建設業者L社をM&Aで買収しました。L社は2級建築士や施工管理技士を複数抱えており、K社は人材確保の難しい地域でも即時に施工業務を展開できるようになりました。また、現場に必要な重機や測量機材も一括で引き継いだため、追加の設備投資も不要でした。

このように、M&Aは「人」「技術」「設備」のセットで取得できるため、新規参入や事業拡大において非常に有利な選択肢といえるでしょう。

5.2 許認可取得やエリア拡大の迅速化

建設業においては、各種工事を請け負うための「建設業許可」が必要ですが、この許可を取得するには実務経験や財務要件、人的要件など、厳しい基準をクリアしなければなりません。申請から許可取得までには数か月かかることもあり、即座に事業を始めたい企業にとっては大きな障壁です。

しかし、既に許可を持つ企業をM&Aで取得すれば、この許認可を引き継ぐことが可能となります。特に株式譲渡型のM&Aであれば、会社の法人格がそのまま引き継がれるため、建設業許可もそのまま継続できます。

また、M&Aによって地域密着の企業を取得すれば、その地域における営業基盤やネットワーク、過去の施工実績までをそのまま活用できます。

以下の表は、建設業許可取得にかかる条件の一部です:

許可条件 概要
専任技術者の在籍 5年以上の実務経験または一定の資格保有
財産的基礎 自己資本500万円以上、もしくは預金残高証明
欠格要件の不該当 破産者や過去に許可取消を受けた者は不可

これらを満たすために、ゼロから準備を整えるには多くのハードルがあります。しかし、M&Aを通じてすでに許可を保有している企業を買収すれば、これらの手間や時間を大幅に省略でき、速やかに建設業務へ参入することが可能になります。

実際に、首都圏でビルメンテナンス事業を展開していた企業M社は、地方の外構工事会社N社を買収することで、建設業許可とともに地方公共団体との取引実績も引き継ぎました。これにより、M社は短期間で新エリアへ進出し、受注拡大に成功しました。

このように、建設業M&Aは、買い手にとって「即戦力となる人材・設備の獲得」「許認可の即時活用」「地域ネットワークの活用」といった多面的なメリットがあります。新たな事業や地域へスピーディに展開したい企業にとって、M&Aは非常に効果的な成長戦略といえるでしょう。

6. M&Aを成功させるためのチェックリスト

6.1 売り手が事前に整えるべきこと

建設業においてM&Aを成功させるためには、売り手が事前に会社の状態を整えておくことがとても重要です。準備不足のまま進めてしまうと、買い手にとってのリスクが高まり、結果的に良い条件での譲渡ができない可能性があります。

まず大切なのは、財務情報を整理し、適切に開示できる状態にしておくことです。税理士や会計士に依頼して、過去3~5年分の決算書を整え、赤字や債務の内容を明らかにしておくと、買い手に安心感を与えられます。

また、建設業に特有の「建設業許可」の取り扱いも注意が必要です。株式譲渡であれば許可はそのまま引き継げますが、事業譲渡の場合は買い手が再度取得する必要があります。国土交通省の建設業法では、許可申請には最大4か月かかることもあるため、スケジュールを事前に調整しておく必要があります。

さらに、現在受注中の案件の引継ぎ方法も明確にしておきましょう。以下の点を整理しておくとスムーズです:

  • 契約中の工事内容・進捗状況
  • 元請け・下請け構造の把握
  • 施工管理者や技術者の配置状況

たとえば、北陸地方で舗装工事業を営むO社は、M&Aを決断するにあたり、税務調査の指摘箇所をすべて解消し、経費の妥当性を第三者の会計士と検討した上で開示資料を作成しました。また、現在抱えている工事の詳細や施工体制図も提出し、買い手にとってのリスクを最小限に抑える努力をした結果、スムーズに買収が決まりました。

このように、M&Aを成功させるには「整った状態で買い手にバトンを渡す」意識が必要です。財務・許可・案件の3点を重点的に準備することが、好条件でのM&Aにつながる鍵となります。

6.2 買い手が注意すべきリスクと調査項目

一方、買い手側は「思わぬ落とし穴」に注意を払う必要があります。建設業には特有のリスクや業界慣行があるため、表面的な数字だけでは判断が難しいことも多く、詳細なデューデリジェンス(事前調査)が不可欠です。

特に注意したいのが、以下のようなポイントです:

  • 建設業許可の取得状況と更新履歴
  • 専任技術者の有無と継続雇用の意思
  • 未成工事のリスク(契約済だが未完了の工事)
  • 下請け業者との関係性(契約内容、支払い慣行)
  • 過去の訴訟・労務トラブルの有無

また、粉飾決算や隠れた債務にも警戒が必要です。中小企業庁の調査では、買収後に不正会計が発覚し、損害賠償や取引停止に発展したケースも報告されています。

実例として、関東の建設会社P社は、ある中堅舗装会社Q社を買収した後、Q社の前期決算が粉飾されていたことが判明しました。売上計上時期のズレや架空請求などが発覚し、P社は補填に数千万円の損失を被りました。このような事態を避けるため、会計士・弁護士・業界経験者を交えての調査体制を構築することが重要です。

さらに、建設業は「人間関係」が非常に重視される業界です。過去の取引先や元請け・下請けとの関係、地域とのつながりなど、「数字には見えない価値」が買収後の成否を左右することもあります。現地でのヒアリングや社員インタビューを通じて、実際の評判や現場の雰囲気を把握することもおすすめです。

総じて、買い手企業が建設業M&Aで成功するためには、以下の3点がカギになります:

  1. 財務・法務・業務の3領域で徹底的な調査を行う
  2. 現場や人材の実態を確認する
  3. リスクを想定し、契約で担保を取る

このような慎重かつ丁寧なアプローチをとることで、買収後の「想定外」を防ぎ、建設業におけるM&Aの成功確率を高めることができます。

7. 実例に学ぶ!建設業M&A成功のヒント

7.1 戸田建設 × カケンの事例分析

戸田建設株式会社は、2025年に連結子会社であるアペックエンジニアリングを通じて、愛知県の設備工事会社「株式会社カケン」を子会社化しました。このM&Aは、地域拠点の強化と、温浴施設運営事業のノウハウ取得を目的としたものです。

アペックエンジニアリングは中京・近畿圏における営業基盤を十分に持っておらず、カケンの子会社化によってその地盤を一気に確保できました。また、カケンは長年にわたり温浴施設事業の施工や設備メンテナンスに強みを持っており、戸田建設グループが展開する「常総ONSEN&SAUNA お湯むすび」などの運営に、このノウハウを活かす戦略が明示されています。

この事例は、地域拠点強化×専門技術の取得という点で、非常にシナジー効果の高いM&Aであり、買い手が「自社にない地域性」と「技術力」の両方を獲得できる好例といえます。

7.2 清水建設 × 丸彦渡辺建設の統合戦略

2023年、清水建設株式会社は北海道の総合建築会社「丸彦渡辺建設株式会社」を子会社化しました。この買収により、清水建設は地方における施工体制の強化と、老舗企業の信頼・ブランドを活用した地域戦略の加速を図りました。

丸彦渡辺建設は1918年創業という長い歴史を持ち、地元に深く根ざした営業体制を構築していました。その地域ブランド力と技術力を取り込むことで、清水建設は北海道市場におけるプレゼンスを飛躍的に高めています。

加えて、同社は前年にも日本道路株式会社を子会社化しており、一貫して「地方に強い企業との連携」をM&A戦略の柱としています。このように、清水建設は「中堅企業の吸収による地域強化」を明確な戦略として進めており、M&Aを通じて全国展開をより現実的なものにしています。

7.3 東宝ファシリティーズ × シコーのシナジー展開

2021年、東宝株式会社の子会社である東宝ファシリティーズは、内装工事業を手掛ける株式会社シコーを子会社化しました。このM&Aの目的は、設備管理業務と建設内装業務のシナジーによる技術力と営業力の向上です。

東宝ファシリティーズは劇場や商業施設の管理・清掃・保守を行っており、シコーが持つ内装施工力と連携することで、ワンストップでの建物管理・改修が可能となります。これにより、顧客の利便性を高め、受注機会の拡大につながりました。

とくに、映画館や文化施設の改修工事においては、営業を止めずに夜間工事などを行う「ノンストップ改修」技術が求められます。シコーはこの分野においても豊富な経験を持ち、東宝グループ全体での技術力向上に寄与しています。

3社の事例に共通するM&A成功要素

事例 主な目的 得られた効果
戸田建設 × カケン 地域拠点の強化
温浴施設事業のノウハウ取得
中京・近畿での施工力増強とブランド拡張
清水建設 × 丸彦渡辺建設 地方の老舗企業による施工力と信頼の取得 北海道市場での信頼性・営業基盤を確保
東宝ファシリティーズ × シコー 内装施工力の取得と一貫対応力の強化 顧客満足度向上と受注単価アップ

これらの事例から分かることは、M&Aの成功には「明確な戦略目的」と「相互の強みの補完」が必要だという点です。単なる規模拡大だけではなく、「地域性」「技術力」「ブランド力」といった、個別企業が持つ独自の強みを活かすことが、建設業界におけるM&Aの本質的な価値といえるでしょう。

まとめ

建設業界におけるM&Aは、事業の継続や成長だけでなく、後継者問題や人手不足といった深刻な課題の解決にも有効です。成功事例を見てもわかるように、売り手・買い手の双方にとって多くのメリットがあります。重要なのは、自社の状況に合わせた正しい判断と、信頼できる専門家の支援を受けることです。

  1. M&Aは後継者問題を解決する
  2. 人材・技術・設備を引き継げる
  3. 売り手・買い手に多様な利点がある
  4. 成功には事前準備と調査が重要
  5. 専門家のサポートで安心取引が可能

「自社にとってM&Aが本当に有効か知りたい」「実際の進め方を相談したい」という方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。

▶ アーク・パートナーズ お問い合わせはこちら

03-6865-5137
今すぐ相談。1分で完了