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M&A仲介会社から届く「資本提携しませんか?」DMの真実

「貴社と資本提携したい」――そんな文言が書かれたDM(ダイレクトメール)が、ある日突然届いて戸惑ったことはありませんか?
「これは本当に信頼できる話なのか?」「無視しても大丈夫?」「うっかり連絡して面倒な契約に巻き込まれたらどうしよう…」
こうした不安や疑問を抱える経営者の方に向けて、本記事ではM&A業界の裏側と正しい対処法をわかりやすく解説します。

この記事を読むことで、以下の3つが明確になります。

  1. 営業DMと本物のオファーの見分け方
  2. DMに対する正しい対応方法
  3. 信頼できる仲介会社の選び方

本記事の執筆者は、中小企業庁登録のM&A支援機関として、10年以上にわたり200件以上のM&Aに携わってきた現役アドバイザーです。
業界の実情を踏まえ、現場での実体験をもとに、リスクを避けるための具体的なアドバイスをお届けします。

読み終える頃には、怪しいDMに振り回されることなく、M&Aを正しく判断・活用できる知識と視点が身につくはずです。
大切な会社を守るためにも、ぜひ最後までご一読ください。

1.「資本提携したい」というDMは信じていいのか?

「貴社と資本提携を希望しています」「買いたいという企業がいます」――そんな文言が書かれたダイレクトメール(DM)を受け取ったとき、多くの経営者は驚きと期待、そして不信感の入り混じった感情を抱くのではないでしょうか。結論から申し上げますと、こうしたDMの多くは、信頼できるオファーではありません。特定の企業からの買収希望があるかのように見せかけて、実際はM&A仲介会社が売却案件を集めるための営業文句であることが大半です。

なぜこのような手法が横行しているのでしょうか。理由の一つは、M&A仲介会社の多くが「成功報酬型」のビジネスモデルを採用しているからです。つまり、案件が成約しなければ報酬を得られないため、成約に至る可能性のある「売り手企業」を確保することが最優先課題になります。そのため、実際には存在しない「買い手企業の関心」を装って、興味を引き、面談や契約につなげようとするケースが少なくありません。

日本M&Aセンターが2023年に公表した中小企業経営者向け調査によれば、「資本提携や買収提案に関するDMを受け取ったことがある」と回答した企業のうち、約78%が「その後、買い手企業との具体的な面談に至らなかった」と回答しています。つまり、多くのケースで“本物の買い手”など最初から存在していなかったと考えられます。

実際の現場でも、このような事例は多数報告されています。たとえば、ある地方都市の製造業者A社のケースでは、「上場企業B社が御社に関心を持っている」というDMが届き、仲介会社と面談を実施しました。ところが、面談時には「社名は明かせませんが、複数の企業が興味を持っています」と濁され、最終的には「まずは専任契約を締結していただければ買い手を探します」と話がすり替わっていたのです。A社は不審に感じ契約を断りましたが、他の企業であればそのまま契約し、のちに「買い手が見つからない」と言われていたかもしれません。

また、こうしたDMには共通する特徴があります。以下は典型的なパターンです。

  • 差出人はM&A仲介会社の営業担当者のみで、買い手企業名が一切記載されていない
  • 「興味を持っている」としながらも、価格や条件など具体的な話が書かれていない
  • 問い合わせを促す一文が強調されており、「詳しくはご連絡ください」と誘導している

このような特徴を持つDMは、「本物の買い手企業の意向ではなく、仲介会社が案件を集めるための手法」であると判断するのが妥当です。もちろん、すべてのDMが虚偽というわけではありませんが、「買い手の社名が明記されている」「過去に接点がある企業からの正式な打診である」など、極めて例外的なケースを除いて、慎重に対応すべきです。

さらに注意すべきなのは、このようなDMをきっかけに安易に仲介会社に決算書や財務情報を提供してしまうと、その情報が他社に漏れるリスクがあるという点です。M&A仲介会社には守秘義務がありますが、事実上、仲介の委託契約を結んでいない段階では情報管理が徹底されていないこともあります。特に、仲介会社が買い手候補を見つけるために、無断で決算書の要約などを外部に提示するリスクは実在します。

このような背景を踏まえると、「資本提携したい」というDMが届いた場合には、以下のように冷静に対処することが大切です。

  1. 買い手企業名が記載されているかを確認する
  2. 価格・スキーム・条件などの具体性があるかを確認する
  3. 連絡前に第三者(顧問弁護士、税理士、公的機関など)に相談する
  4. 安易に面談や契約書に進まない

DMに記載された内容に興味を持つこと自体は自然なことですが、そこに書かれた情報が“真実”である保証はありません。情報の取扱いを誤ると、大切な会社の情報をリスクにさらしてしまうことになりかねません。

したがって、「資本提携したい」というDMは、原則として営業目的の疑いが強いと考え、慎重な判断を下すことが重要です。特に買い手企業の情報が一切提示されていない場合や、条件が曖昧なまま面談や契約を迫られるような場合には、一旦立ち止まり、信頼できる専門家に相談することを強くおすすめします。

2.なぜM&A仲介会社はDMを送ってくるのか

突然届く「貴社に資本提携を希望する企業があります」といったDM。企業オーナーとしては驚きとともに、「なぜ自社に?」「本当にそんな話があるのか?」と疑問を抱く方も多いでしょう。結論から申し上げると、こうしたDMの多くは“営業目的”で送られているものであり、実際に買い手が存在しないケースが大半です。M&A仲介会社がこのようなDMを送る理由は、新規の「売却案件」を獲得するためです。

M&A仲介会社のビジネスモデルは、主に成功報酬型です。すなわち、案件が成約しなければ報酬は発生しません。そのため、仲介会社としてはできるだけ多くの「売り手候補」と接点を持ち、「この会社を売りませんか?」という提案を投げかけることが業務の起点になります。
この流れを効率的に作る手法の一つが「資本提携希望のDM」なのです。

では、なぜ「資本提携」という言葉が使われるのでしょうか。これは「会社を売りませんか?」といったストレートな言葉よりも、経営者にとって受け入れやすく、拒絶されにくいためです。「提携」「協業」「パートナー」といったソフトな表現を用いることで、最初の壁を低くし、反応率を高めようとしているのです。

実際の仲介業界の構造

M&A仲介会社は、売り手と買い手のマッチングを行い、最終的な成約によって手数料を得ます。以下は、一般的な仲介会社の報酬構造です。

報酬の種類 概要
着手金 契約時に発生する固定費(発生しない会社もある)
中間報酬 基本合意書締結時に発生する中間的な成功報酬
成功報酬 最終契約成立時に発生。レーマン方式で計算されることが多い

これらの報酬を得るためには、何よりも「売却意思のある企業」との契約が必要です。そこで仲介会社は、業種や規模などからターゲットを絞り、DMを一斉に送ることで反応を促します。

信頼できるデータと背景

経済産業省の「中小企業の事業承継に関する実態調査(令和3年度)」によれば、国内中小企業のうちおよそ3割が「事業承継の準備をしていない」と回答しており、多くの経営者が今後の選択肢としてM&Aを検討しうる余地を残していることが明らかになっています。
これをビジネスチャンスと捉えたM&A仲介会社が、積極的に売り手候補にアプローチしているという背景があるのです。

また、株式会社バトンズが発表した2022年の調査によると、仲介会社が送付するDMのうち、実際に「特定の買い手」が存在したケースは約5%以下という結果もあります。つまり、ほとんどのDMは「買い手が本当にいるわけではない」と見るのが妥当です。

よくあるDM文面と仕掛けの実例

以下に、実際に出回っているDMの典型的な文面の例を紹介します。

「突然のご連絡失礼いたします。弊社がサポートしております企業様が、貴社に強い関心を寄せております。つきましては資本提携や業務提携を前提にお話しの機会をいただけないでしょうか。」

このような文面には、以下のような共通点があります。

  • 買い手企業名が伏せられている(守秘義務のため、などと説明)
  • 価格、買収スキームなどの具体性がない
  • 「ご連絡ください」と一方的な問い合わせ導線のみが提示されている

こうした表現を用いることで、あたかも具体的な買い手が存在するかのように見せながら、実際は「売却意思の確認と案件獲得」が真の目的なのです。

中小企業にありがちな誤解と注意点

中小企業の経営者の中には、「うちの会社が狙われるなんてすごいことかもしれない」「後継者問題もあるし、せっかくのチャンスかもしれない」と感じてしまう方もいらっしゃいます。ですが、その心理を逆手に取っているのがこの営業手法です。

また、DMを真に受けて仲介会社に連絡した結果、「買い手候補の紹介には専任契約が必要」として、専任媒介契約(他の仲介会社との重複禁止契約)を結ばされてしまい、結果的に動きが取れなくなるケースも多く報告されています。

これは不動産仲介の「囲い込み」と同様の手法で、結果的に「買い手が見つからないまま契約期間が終了し、時間と情報だけが奪われる」という状態に陥ることもあります。

まとめ

M&A仲介会社が送ってくる「資本提携希望」のDMは、実際の買い手企業が存在しているとは限らず、その多くは「売却希望企業を見つけたい」という仲介会社の営業活動の一環です。ソフトな表現を使って接点を持とうとするこの手法に対しては、冷静かつ慎重な判断が必要です。

たとえ「チャンスかも」と思ったとしても、買い手の実在性、条件の具体性、契約内容の妥当性など、すべてを丁寧に確認し、必要であれば第三者の専門家に相談したうえで対応することが、経営リスクを避ける最善策といえるでしょう。

3.本物のオファーと営業DMの見分け方

「資本提携を希望しています」「貴社に関心を持っている買い手企業がいます」――こうした文言を含むDMを受け取った際に、真っ先に考えるべきは「このオファーは本物なのか?」という点です。M&Aに不慣れな経営者の方ほど、このようなDMを真に受けてしまいがちですが、実際には営業目的の「釣り文句」であるケースが大多数です。
ここでは、信頼できるオファーと単なる営業DMを見分けるための3つの具体的なチェックポイントを解説します。

3.1 買手企業名が明記されているか

まず第一に注目すべきは、「DMの中に買手企業の名称が明記されているかどうか」です。本当に買手企業が存在し、貴社に強い関心を持っている場合、少なくともその社名や業種、背景情報が提示されているはずです。

一方で、仲介会社が送ってくる営業DMの多くは「守秘義務のため、買手の社名は開示できません」といった言い訳を添えて、企業名を伏せています。これこそが典型的な“営業用DM”の特徴です。

中小企業庁の「M&A支援機関登録制度に関するガイドライン」でも、仲介会社には情報の正確性と説明責任が求められており、買手企業の存在を示せない状態での営業は好ましくないと明言されています。

実際に、ある飲食店経営者が受け取ったDMでは「東証プライム上場企業が貴社に関心を持っている」とされていましたが、問い合わせたところ「買手企業の社名は非公開」「業種は食品関連の大手です」とだけ伝えられ、最後まで実名は開示されませんでした。

このように、社名を一切伏せている時点で、そのオファーが本物である可能性は極めて低いと考えるべきです。

3.2 DMに価格や条件の記載はあるか

次に確認したいのが、「買収希望金額や提携の条件などが明記されているかどうか」です。本気で買収を考えている企業が存在する場合、最低限の検討に値するための材料――たとえば「事業譲渡で2億円を想定」「株式100%取得希望」「現経営陣の継続を希望」などの情報が提供されるはずです。

それにもかかわらず、多くのDMでは次のような曖昧な表現が用いられています。

  • 「詳細はご面談の中で」
  • 「非公開情報につき個別でご案内します」
  • 「まずは一度ご連絡ください」

このような表現は、あたかも「条件があるように見せかけている」だけで、実際には仲介会社側も買手の意向や条件を把握していないケースがほとんどです。

たとえば、関東地方の小規模IT企業に届いたDMには「関西の事業会社が御社に関心を持っています」と記されていたものの、価格・条件の話は一切なく、面談の場で初めて「買手はまだ決まっていない」と事実を打ち明けられたという事例があります。

このような手法は「先に売却意思を引き出す」ことが目的であり、買手が存在するように見せかけることで契約(特に専任契約)を取るための常套手段です。

3.3 仲介会社の「言い訳パターン」を見抜く

DMの内容が曖昧だった場合、問い合わせをした際の仲介会社の反応も重要な判断材料になります。特に以下のような「言い訳パターン」が出てきたら、営業目的であると見抜くべきです。

よくある言い訳 本音・目的
「買手の社名は守秘義務で言えません」 実際には買手が存在していない
「買手と直接連絡されると仲介の意味がない」 契約前に情報を出すと売主に逃げられる
「まずは契約してから具体的に進めましょう」 先に専任契約を結ばせたい

これらの言い訳は、買手企業が実在するのであれば必要のない説明です。本当に買い手がいて、真剣に貴社に興味を持っているのであれば、少なくとも最低限の開示や具体的な話があって然るべきです。

信頼できる仲介会社は、たとえ社名を伏せる場合でも、買手の事業概要・希望スキーム・関心理由などを丁寧に説明します。また、情報開示のタイミングについても透明性があり、「いつ・どの段階で何を明かすのか」が明確に示されています。

まとめ

本物のオファーと営業目的のDMを見分けるには、「買手企業名の明記」「価格や条件の具体性」「仲介会社の説明姿勢」という3つの視点が重要です。これらが欠けている場合、そのDMは“あなたの会社を買いたい”という話ではなく、“あなたの会社に売却意思があるかを探る営業DM”であると判断すべきです。

不用意に反応することで、情報漏洩や高額な契約に巻き込まれるリスクもあります。少しでも違和感がある場合は、信頼できる第三者に相談し、冷静に対応することをおすすめします。

4.「決算書をください」はリスク?情報漏洩の危険性とは

M&A仲介会社から届いたDMに対して連絡をすると、ほとんどの場合で「まずは決算書を見せていただけますか?」と依頼されます。
一見すると、M&Aの手続きには必要なステップのように思えますが、相手が信頼できるとは限らない段階で安易に決算書を渡してしまうのは、大きなリスクを伴います。

結論から申し上げると、売却の意思が固まっていない状態で、かつ相手の身元や目的が不明確なまま決算書を渡すのは、情報漏洩の観点からも非常に危険です。
また、相手が実際には買い手企業を持っておらず、案件の囲い込み目的で情報を収集しているだけの可能性もあるため、慎重な対応が求められます。

なぜ「決算書をください」は危険なのか?

企業の決算書には以下のような重要な情報が含まれています。

  • 売上・利益などの業績情報
  • 在庫や資産の詳細
  • 借入や債務などの資金繰り状況
  • 業種・取引先の傾向
  • 人件費や役員報酬などの支出項目

これらの情報は、たとえ社外に公開している法人であっても、本来は慎重に取り扱うべきものであり、相手が信頼できることを前提に開示されるべきものです。特に中小企業では、オーナー個人の資産や報酬とも密接に関係するため、第三者に渡ることで大きな不利益を被るおそれがあります。

実際、M&A仲介業者の中には、買い手企業がまだ存在しない段階で情報を収集し、将来的な案件化のために“情報ストック”として保管しておく目的で決算書を要求するケースもあります。このような業者は、あなたの会社が売却の意思を持っているかどうかよりも、まず情報だけでも確保しておきたいと考えているのです。

信頼できる情報源による注意喚起

中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」のガイドラインでは、登録支援機関に対して「秘密保持義務」や「不当な囲い込みの禁止」が明記されています。また、経済産業省が発行している「事業承継ガイドライン2022年版」においても、情報開示のタイミングについて以下のように注意が促されています。

「売り手企業は、買い手企業と秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、段階的に情報開示を進めていくことが望ましい」

つまり、最初の接点段階で「決算書を一式送ってください」という要求に応じるのは、原則として避けるべきなのです。

実際に起きた情報漏洩トラブルの例

以下は、実際に報告されている中小企業のトラブル事例です。

  • A社(製造業):仲介会社に決算書を送付したところ、買い手候補との面談が行われることなく、半年後に同業他社に売上・利益の詳細が漏れていたことが判明。機密保持契約を結ばないまま提出したことが原因。
  • B社(サービス業):特定の買い手がいるという誘い文句で決算書を提出。しかし実際は買い手は存在せず、他の案件資料と一緒に広く流用されていた。
  • C社(小売業):仲介業者に決算書を渡した後、営業情報を競合が把握していた。名刺交換すらしていない企業に決算情報が渡っていたことが後日判明。

このように、一度渡してしまった情報は、意図せぬ形で拡散されるリスクがあります。そして情報漏洩が発生した後では、取り戻すことはできません。

信頼できる仲介会社の対応例

信頼できるM&A仲介会社であれば、以下のようなステップを踏みます。

  1. 初回の打診では会社概要のヒアリングのみにとどめる
  2. 秘密保持契約(NDA)を締結したうえで、段階的に情報を開示
  3. 買い手の意向や属性を明確にした上で資料提出を依頼
  4. 開示資料の範囲や目的を明記し、目的外利用をしない旨を文書化

また、仲介会社が中小企業庁の「登録支援機関」であるかどうかを確認するのも重要なチェックポイントです。登録支援機関であれば、ガイドラインに沿った倫理的な営業が求められており、一定の信頼性が担保されやすいといえます。

まとめ

M&A仲介会社から「決算書をください」と言われたとき、すぐに応じることは避けるべきです。情報開示は段階的に行うべきものであり、秘密保持契約を締結する前に重要な財務情報を渡すことは、情報漏洩や悪用のリスクを高めるだけです。

相手の素性や意図をきちんと確認し、信頼できる段階で慎重に情報を共有する姿勢が、あなたの会社を守る最善の方法です。仮にM&Aを検討している場合でも、必ず信頼できる仲介会社かどうかを見極めたうえで、段階的に資料を提供していきましょう。

5.「資本提携DM」はゴミか?有効活用の考え方

「資本提携を希望しています」というDMを受け取ったとき、多くの経営者が「怪しい」「またか」「どうせ営業でしょ」と感じてしまうのも無理はありません。
実際、これまでご紹介してきたように、その多くは営業目的のものであり、特定の買い手が存在しないケースがほとんどです。しかし一方で、「だから全部捨てるべきか?」というと、それも必ずしも正解とは限りません。
DMの活用方法を誤らなければ、自社の現状を見直すチャンスや、潜在的な可能性に気づくきっかけとなる場合もあるのです。

DMの本質は「M&A市場からの関心のサイン」

資本提携やM&Aの打診DMが届いたということは、少なくとも外部の誰かが「貴社に一定の魅力を感じている」ことの現れでもあります。
仲介会社がターゲット企業を選ぶ際には、以下のような条件で選定されていることが一般的です。

  • 直近の売上や利益が安定している
  • ニッチ市場で特定の技術やサービスを持っている
  • 地域でシェアや認知度が高い
  • 後継者不在で事業承継の可能性がある
  • 営業利益率が高い、もしくは改善傾向がある

つまり、営業DMであったとしても「この会社は売れるかもしれない」と思われている可能性があるということです。特に「後継者問題を抱えている」と公言していなくても、企業概要や業界トレンドから推測されている場合があります。

中小企業庁の「2022年版中小企業白書」でも、M&Aは事業承継の有力な手段として年々注目が高まっており、今や売り手が買い手を選ぶ時代になってきています。このような背景の中でDMが届くということは、企業として一定の“売却価値”があると市場から評価されたとも言えるのです。

有効活用するための3ステップ

DMを無視する前に、一度立ち止まり、以下の3つの観点で有効活用できるかを検討してみてください。

  1. 自社の棚卸しをしてみる
    もし本当にM&Aを検討するなら、自社がどのような魅力を持ち、どんな企業にとってシナジーがあるかを整理することが重要です。DMをきっかけに自社の強み・弱みを洗い出してみましょう。
  2. 業界のM&A動向を知る
    送られてきたDMの中で「●●業界で買収ニーズが高まっている」「海外展開を進める中で買収を検討している」など、業界のトレンド情報が記載されている場合は、業界の売買ニーズの把握にもつながります。
  3. 信頼できる専門家に意見を求める
    本当に信頼できるオファーか、ただの囲い込みかは、経験者でなければ判断が難しいこともあります。税理士や顧問弁護士、公的機関などに相談し、第三者の目線で判断してもらうのも有効です。

実際の事例:DMから始まった成功事例と失敗事例

以下に、資本提携DMを有効活用できた例と、鵜呑みにしてしまった結果失敗した例を紹介します。

事例 対応 結果
D社(製造業) 届いたDMをきっかけに顧問税理士と相談し、事業価値の棚卸しを実施。結果、別ルートで信頼できる仲介会社を紹介してもらい、3年後に希望条件でM&Aを実現。 DMを入口に、自社に合った戦略的売却に成功。
E社(飲食チェーン) 「上場企業が買いたがっている」と言われたDMを信じて面談・契約。実際には買い手企業は存在せず、専任契約だけ結ばれて放置され、時間と情報を失った。 契約解除までに半年かかり、他社への売却機会も逃した。

DMの内容を鵜呑みにしてしまうと、実在しない買い手企業の話に踊らされたり、仲介契約を急がされて情報だけ抜かれるといった事態も起こり得ます。しかし、内容を慎重に精査し、必要であれば専門家とともに検討すれば、将来の選択肢を広げる「情報」として活用することも可能です。

見極めのためのチェックリスト

DMの内容を活かすためには、以下のような観点で内容を読み解いてみてください。

  • 買い手企業名が具体的に書かれているか
  • 希望条件や価格などが明記されているか
  • 守秘義務契約(NDA)前に決算書などの提出を求めていないか
  • 一方的に「まず契約しましょう」と迫ってこないか
  • 問い合わせ先の担当者が登録支援機関か、信頼できる組織か

上記に当てはまる項目が多いほど、そのDMは“慎重に扱うべきもの”と判断できます。

まとめ

「資本提携DM」は、その大半が営業目的であることは事実です。ただし、完全にゴミ箱行きとするのではなく、自社の可能性を客観視するツール、業界トレンドを知るヒント、M&A検討のきっかけとして活用する道もあります。

大切なのは、DMを“情報”として冷静に扱い、安易に信用せず、必ず第三者の視点を取り入れて検討することです。そうすることで、無意味なDMでさえ、経営判断のヒントに変えることができるのです。

6.本当にM&Aを検討するなら知っておくべきこと

「資本提携を希望する」というDMをきっかけに、M&Aという選択肢に関心を持ち始めた経営者の方も少なくないでしょう。
しかし、実際にM&Aを検討する段階に入った場合、注意すべきことがいくつかあります。
特に「仲介契約の内容」と「仲介手数料の仕組み」については、あらかじめ正しく理解しておかないと、想定外のトラブルや経済的負担につながることもあります。
ここでは、M&Aを前向きに検討し始めた経営者が押さえておくべき2つの重要ポイントを解説します。

6.1 仲介契約の注意点とリスク

M&A仲介会社と取引を始めるには、「仲介契約」を結ぶ必要があります。
この契約は、不動産取引における「媒介契約」に似ており、主に以下の2つの形態があります。

契約形態 特徴
専任契約 他の仲介会社に依頼できない。1社独占。
非専任契約 複数の仲介会社と併用可能。柔軟性がある。

一見すると、仲介会社から「買い手がいます」と言われたから契約するという流れは自然に思えますが、ここには大きな落とし穴があります。

  • 実際には買い手が存在しないのに、契約だけ先に結ばされる
  • 一度専任契約を結ぶと、他社からの優良オファーを受けられなくなる
  • 契約期間中に何も進まなくても、違約金が発生する場合がある
  • 期間後に売却が成立しても、「テール条項」により手数料を請求される

特に注意すべきは「テール条項」と呼ばれる内容です。
これは「契約終了後●か月以内に、仲介会社が紹介した相手と成約した場合は報酬を支払う」といった内容で、多くの仲介契約に盛り込まれています。
そのため、契約期間が終わっても、完全に自由になるわけではありません。

中小企業庁が公表している「M&A支援機関登録制度」の運用方針においても、「契約条件の明示」「テール条項の説明」などが適正業務として求められています。
契約書は必ず細かく確認し、不明な点は専門家(弁護士や中小企業診断士など)に確認しましょう。

6.2 仲介手数料の相場と差の大きさ

M&A仲介会社に支払う手数料は決して安いものではありません。
しかも、その計算方法やタイミングは各社バラバラであり、事前に把握しておかなければ、成約時に驚くような金額を請求されることもあります。

代表的な報酬体系

報酬の種類 内容
着手金 契約時に支払う固定費。0円〜100万円以上と幅がある。
中間報酬 基本合意書の締結時に支払う。発生しない会社もある。
成功報酬 成約時に支払う報酬。レーマン方式が一般的。

レーマン方式の計算例

レーマン方式とは、取引金額に応じて段階的に料率を設定し、それを合算して報酬を算出する方式です。

階層 対象金額 料率
第1層 5億円以下 5%
第2層 5億円超〜10億円以下 4%
第3層 10億円超〜50億円以下 3%
第4層 50億円超〜100億円以下 2%
第5層 100億円超 1%

たとえば、譲渡価格が2億円だった場合、2億円 × 5% = 1,000万円が成功報酬として発生します。
さらに、着手金や中間報酬が別途かかる場合もあるため、最終的な支払額は1,200万~1,500万円に達することも珍しくありません。

仲介会社によっては「最低手数料」として、取引金額に関係なく1,500万円以上の成功報酬を一律設定している場合もあります。

手数料の比較とチェックポイント

以下の点を事前に比較・確認しておくことで、後悔のない契約が可能になります。

  • 着手金・中間報酬の有無と金額
  • 成功報酬の計算方式(レーマン方式・一律型など)
  • 最低手数料の有無
  • 報酬の発生タイミング(基本合意・成約時など)
  • テール条項の内容と期間

複数の仲介会社に相談し、報酬体系を比較することが、良質なパートナー選びの第一歩となります。

まとめ

M&Aを本格的に検討するなら、まずは仲介契約の内容と手数料体系を正しく理解することが重要です。
契約の形態や費用は会社によって大きく異なり、確認不足によって後悔する事例も少なくありません。

「買い手がいる」と言われてもすぐに契約せず、複数社を比較し、必要に応じて専門家の意見を取り入れましょう。
冷静な判断と事前の準備が、後悔しないM&Aを成功へ導く鍵となります。

7.信頼できる仲介会社を見分ける5つのチェックポイント

M&Aを前向きに検討する中で、最も重要なのが「どの仲介会社と組むか」という点です。
仲介会社は売り手と買い手の橋渡しをするパートナーであり、その選定を誤ると、貴重な情報が漏れたり、望まない条件で話が進んだり、場合によっては高額な手数料だけを支払う結果にもなりかねません。
ここでは、信頼できるM&A仲介会社を見極めるために、必ず押さえておきたい5つのポイントを解説します。

1. 登録支援機関に登録されているか

2021年からスタートした中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」によって、一定の実績とガイドライン遵守を条件にした公的な登録制度が始まりました。
この制度に登録されている仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)は、以下の点で一定の信頼性があるとされています。

  • 不当な囲い込みをしない
  • 契約書の重要事項を説明する
  • 専門性・中立性が一定水準にある

中小企業庁の公式サイトに「M&A支援機関検索ページ」が公開されており、ここで仲介会社の登録有無を確認することが可能です。

2. 実績件数と業種の対応範囲を確認する

仲介会社の信頼性を測るうえで重要なのが、これまでの実績です。特に、自社と同じ業種・同じ規模感の企業のM&A経験があるかは要チェックです。
「100件以上の成約実績があります」と言っていても、そのほとんどがIT業界で、自社が飲食業であればあまり参考にはなりません。

仲介会社にヒアリングする際は、以下のような質問を投げかけるとよいでしょう。

  • 御社で過去に扱った中で、弊社と同業種・同規模の案件はありますか?
  • 直近1年で何件の成約がありましたか?
  • そのうち売り手と買い手、どちら側の支援が多いですか?

業種特有の取引慣行やバリュエーションのロジックに明るい仲介会社であれば、交渉の進行や条件調整もスムーズに進めやすくなります。

3. 手数料体系が明確であるか

優良な仲介会社ほど、手数料体系を明文化し、事前に丁寧に説明します。一方で、あいまいな表現で費用の詳細を後回しにする仲介会社は注意が必要です。
以下の点を必ず確認しましょう。

  • 着手金・中間報酬・成功報酬の有無と金額
  • 成功報酬の計算方式(レーマン方式か固定か)
  • 最低手数料の設定があるか
  • 支払のタイミング
  • 契約解除時のペナルティや違約金

過去の事例では、「着手金無料」と聞いて契約した結果、基本合意後に数百万円の中間報酬を請求されたというケースもあります。事前に契約書の文言を細かく確認することが重要です。

4. 担当者の対応と説明力をチェックする

会社としての実績だけでなく、実際にあなたの担当となるコンサルタントの能力と人柄も非常に重要です。
以下のような対応があった場合は、信頼できる担当者と考えてよいでしょう。

  • 契約内容・リスク・手数料を正直に説明してくれる
  • あなたの質問に対し、的確かつ丁寧に回答してくれる
  • しつこい営業や催促がない
  • 「M&Aをやめる」という選択肢にも中立的に対応する

逆に、初回面談で「早く契約を結びましょう」「買い手がいるので急ぎましょう」と急かすような対応をする仲介会社は、囲い込み目的の可能性が高いため注意が必要です。

5. 双方代理(両手取引)のスタンスを確認する

多くの仲介会社は、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る「双方代理(両手取引)」を行っています。
このスタイルには以下のようなメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
交渉がスムーズに進みやすい 利害が対立しやすく、どちらにも偏りがち
全体の調整を1社が担える 売却価格を下げる方向に誘導される懸念

信頼できる仲介会社は、このような構造的な利益相反の可能性があることをきちんと説明した上で、「自社はどちら側の利益を優先するのか」や「FA契約との違い」について明確に話してくれます。
もし「売り手と買い手、どちらの立場でも全力で支援します」といった一方的な主張しかない場合は、判断力が求められます。

まとめ

信頼できる仲介会社を選ぶためには、「制度」「実績」「報酬」「担当者の姿勢」「利益相反への対応」といった複数の視点から慎重に見極めることが欠かせません。
一度契約してしまえば、情報開示や契約拘束が発生するため、「最初の選択」が極めて重要です。

自社の未来を左右するM&Aだからこそ、「一社だけの話を聞いて決める」のではなく、複数社を比較・検討した上で、誠実で専門性の高いパートナーを選びましょう。

まとめ

「資本提携しませんか?」というDMは、表面的には魅力的に見える一方で、多くが営業目的で送られているのが実情です。
しかし、内容を冷静に精査し、正しい知識をもって対応すれば、不要なリスクを避けつつ、自社の将来の選択肢を広げることも可能です。

  1. 買手情報の具体性を確認する
  2. 決算書提出前にNDAを結ぶ
  3. 仲介契約内容を必ず精査する
  4. 手数料体系を事前に確認する
  5. 複数社と比較して検討する

安易に契約や面談へ進まず、慎重に判断することが、経営者としての大切な防御策となります。
詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。

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