会社を売るならいつ?ベストタイミングの見極め方と高く売却する秘訣を完全解説
「会社を売るなら、いつがベストなんだろう?」「高く売れるタイミングってどう判断すればいいの?」
そんな悩みをお持ちの経営者様に向けて、本記事ではM&Aの現場で多くの企業売却を支援してきたプロの視点から、最適な売却タイミングと高値売却のポイントを徹底解説いたします。
■本記事を読むと得られること
- 会社を売るベストなタイミングがわかる
- 高く売却するための実践的な戦略を学べる
- 売却前に準備すべきポイントが明確になる
■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上、累計200件超の実績を持ち、中小企業庁認定の登録M&A支援機関として活動しています。誠実さと専門性を重視したサポートで、多くの経営者様の意思決定を支援してまいりました。
この記事を読めば、「いつ」「どうやって」会社を売ればよいのか、自信を持って判断できるようになります。
タイミングを逃さず、後悔のないM&Aを実現するために、ぜひ最後までお読みください。
1. はじめに|会社を売るときに悩む「タイミング」とは?
会社を売ろうと考えたとき、多くの経営者が最初に直面するのが「いつ売るべきか」というタイミングの悩みです。
会社はモノのように価格が固定されているわけではなく、売却のタイミングや状況によって価格が大きく変動します。ですから、「売るなら今なのか、それとももう少し先なのか」を適切に見極めることが非常に重要です。
たとえば、以下のような疑問を持つ経営者の方も多いのではないでしょうか。
- 会社の業績が好調だが、自分のやる気がなくなってきた
- 後継者が見つからず将来が不安
- 体力的に経営を続けるのが難しくなってきた
- 同業他社のM&Aが増えていて、自社も波に乗るべきか悩んでいる
こうした悩みは非常に自然なものですが、判断を間違えると「もっと高く売れたはずだったのに…」という後悔につながる可能性もあります。
タイミングによって会社の価値は大きく変わる
中小企業庁が発表した「中小企業の事業承継に関する実態調査(2022年)」によれば、M&Aを検討した経営者のうち、実際に売却に至ったのは全体の約3割にすぎません。多くの経営者が「いいタイミング」をつかめず、最終的に廃業という選択を迫られるケースも少なくないのです。
また、同じ会社でも「業績が好調で買い手が多いとき」と「業績が落ちて買い手が限定されるとき」では、提示される価格に数千万円、時には億単位の差が出ることもあります。
高く売れるタイミングはどう見極めるべきか?
では、どうすれば最適なタイミングで会社を売却できるのでしょうか?
実は、会社売却のタイミングを判断するには、以下の3つの観点から考えることが重要です。
- 経営者自身の状況(体力・意欲・年齢)
- 会社の業績や成長性
- 市場環境や業界の動向
これらを総合的に見ながら「いまが売り時なのか」を判断することで、後悔のないM&Aを実現することが可能になります。
タイミングの悪さが招いた実例
例えばある製造業の経営者は、業績がピークのときに「まだまだやれる」と判断し売却を見送りました。しかし数年後、原材料費の高騰と主要取引先の撤退により業績が悪化。再び売却を検討したものの、当初の想定価格より50%以上も安い評価額しか提示されず、最終的には廃業を選ばざるを得なかったのです。
このように「売り時を逃す」ことは、単に価格の問題だけでなく、従業員や取引先、そして経営者自身の人生設計にも大きな影響を及ぼします。
判断基準を持つことが後悔しないカギ
最適な売却タイミングを見極めるためには、「今の自分はどのフェーズにあるのか」「会社の価値はどの程度か」「業界はどんな動きか」といった視点を持ち、自分なりの判断軸を整理することが欠かせません。
本記事では、こうした悩みを解消するために、「会社を売るべきタイミング」「高く売却するための具体的な方法」「売却前にやっておくべき準備」などを、実例とともにわかりやすく解説していきます。
この記事を読み進めることで、あなたの会社が「今、売るべきかどうか」の判断材料が得られ、後悔のない決断につながるはずです。
2. 会社を売るメリット・デメリットを整理しよう
2.1 売却益の獲得とリタイア準備
会社を売却すると、株式の対価としてまとまった現金を得ることができます。これは「創業者利益(キャピタルゲイン)」とも呼ばれ、経営者が長年築いてきた努力の成果として受け取れる大きな報酬です。
このお金は以下のようにさまざまな用途に使えます。
- 老後の生活資金や年金代わりの蓄え
- 新しいビジネスや投資への資金
- 家族への生前贈与や相続対策
中小企業庁の調査によると、M&Aによる事業承継を行った経営者の約6割が「リタイア後の生活資金として安心できた」と回答しています。これは多くの経営者にとって、売却益が将来の不安を解消する手段となっている証拠です。
たとえば、60代で長年経営してきた飲食チェーンの社長が、体力的な限界を感じてM&Aを選択。会社を3億円で売却し、その資金で地方移住と投資信託による資産運用を始め、穏やかな第二の人生を送っているという事例があります。
このように、会社の売却益はリタイア後の「安心」を手に入れるための有効な手段であり、経営者の次のステージに向けた土台づくりにつながります。
2.2 後継者問題の解決手段として
日本では多くの中小企業が後継者不在という問題を抱えています。中小企業庁によると、2025年には70歳以上の中小企業経営者のうち約127万社が後継者未定とされており、そのまま廃業すると年間約22兆円のGDPが失われるとも言われています。
こうした状況を踏まえ、M&Aは「親族以外への事業承継」という解決策として注目されています。
特に以下のようなケースで、第三者への売却は有効です。
- 子どもや親族に事業継承の意思がない
- 社内に適任の後継者が育っていない
- 外部の資本とノウハウを取り入れて会社を存続させたい
たとえば、ある製造業の社長が息子に事業を継がせようとしましたが、本人は医師の道を選び、事業承継は断念。後継者探しに苦労していたところ、同業他社がM&Aを申し出て、従業員の雇用と工場の存続が守られたという成功例があります。
このように、M&Aによる事業承継は「人材に悩む中小企業」が安心してバトンを渡せる手段であり、事業と従業員の未来を守る選択肢となります。
2.3 デメリット(手放すリスク・心理的葛藤)とは
一方で、会社を売ることには一定のリスクやデメリットも存在します。特に心理的な負担は見逃せません。
以下に、よくあるデメリットをまとめます。
- 経営の主導権を失うことへの寂しさ
- 従業員や取引先からの誤解や反発
- 買い手との相性が悪かった場合の組織崩壊
実際に、M&A成立後に「もっと慎重に買い手を選べばよかった」と後悔する経営者も少なくありません。たとえば、買い手が人件費削減のために人員整理を始め、結果的に社風が一変してしまったという話もよく耳にします。
また、創業者にとって「自分の分身のような会社を手放すこと」は、例え金銭的に得をしても割り切れない気持ちを生むこともあります。M&A後に喪失感や虚無感に襲われるケースもあるため、心の準備や周囲との対話が非常に重要です。
このように、会社を売ることにはメリットだけでなく、精神的・人的リスクも伴います。しっかりと時間をかけて準備をし、信頼できる相手と納得感ある取引を行うことが大切です。
まとめ
会社を売るという決断は、経営者にとって非常に大きな意味を持ちます。売却益の獲得による安心したリタイアや、後継者不在問題の解消といったメリットがある一方で、経営の主導権を手放すことへの不安や、社内外との関係変化といったデメリットもあります。
最終的な判断においては、「なぜ売るのか」「誰に託すのか」「売った後にどう生きるのか」といった長期的な視点を持つことが重要です。その上で、信頼できるアドバイザーや家族としっかり相談しながら、最良の選択肢を見極めていきましょう。
3. 会社を売るべき最適なタイミングはいつか?
3.1 業績が良いのに意欲が下がっているとき
会社の業績が順調であっても、経営者自身が「もうこれ以上頑張れない」と感じるタイミングは、売却を真剣に考えるべき重要なポイントです。
経営者のモチベーションは、会社の成長や従業員の士気にも大きな影響を与えます。経営に対する情熱や気力が薄れている状態では、判断力が鈍り、結果的に業績にも悪影響が出てしまうことがあります。
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」でも、「経営者が意欲を失ってからでは遅い。引退を意識し始めた段階でM&Aを含む準備を進めるべき」と強調されています。
たとえば、ある50代の製造業社長は、業績が過去最高を記録していたものの「達成感から次の目標が見えない」と感じ、売却を決断しました。結果的に高値でのM&Aが成立し、買い手企業のもとで従業員の雇用も維持された成功例です。
このように、業績が好調なうちに次の世代へバトンタッチすることは、買い手にも魅力的に映り、売却条件の向上にもつながります。
3.2 引退・体力的限界を感じたとき
年齢や健康面での限界を感じ始めたときも、会社を売却する重要なタイミングの一つです。
とくに中小企業の場合、経営者がすべての意思決定を担っていることが多く、経営者の体調がそのまま会社の安定性に直結します。
中小企業庁の発表によると、60代後半~70代でM&Aを検討し始めた経営者のうち、「もっと早くから準備すればよかった」と後悔した方は7割以上にのぼります。
実際に、70代の運送業社長が体調不良をきっかけに引退を決意しましたが、買い手探しを始めたときにはすでに事業が縮小し始めており、買い手からの評価も厳しくなってしまった事例があります。
これに対し、健康なうちに準備を始めておけば、後継者候補との対話やデューデリジェンス(調査)にも余裕を持って臨めます。
会社を売る際には、経営者自身の健康と気力が大きな資産です。心身ともに元気なうちに「次の人生」を見据えて決断することが、後悔のないM&Aにつながります。
3.3 市況が好景気または業界再編期の場合
会社を売却する際には、自社の状況だけでなく、社会全体の景気や業界動向も大きく影響します。
一般的に景気が好調なときは、買い手側も積極的になり、企業買収にかけられる予算も多くなります。そのため、同じ会社でも不況期よりも高い評価を受けやすい傾向があります。
また、業界再編の動きがあるとき、つまり「同業他社の統合・買収が相次いでいるとき」も、絶好の売り時です。このようなタイミングでは、規模拡大やシェア拡大を目指す企業が活発に買収先を探しており、買い手の選択肢が広がります。
たとえば、2020年代のIT業界では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の流れにより、システム会社やWeb制作会社が次々と買収される事例が見られました。IT企業を経営していた60代の社長は、この動きを見て売却を決断。市場価値が高いタイミングだったため、想定以上の価格でM&Aが成立しました。
このように、社会や業界の動向を注視することで、自社が「売り手市場」にいるかどうかを見極めることができます。下記は簡単な判断のポイントです。
外部環境の動き | 売却の好機度 |
---|---|
好景気で買収ニーズが高まっている | 非常に高い |
業界再編のニュースが増えている | 高い |
業界が成熟し競争が激化している | やや低い |
不景気・買い手の動きが鈍い | 低い |
業界の「今」を的確に見極めることが、数年先の評価額を左右します。情報収集を怠らず、買い手が活発な時期にアクションを起こすことが成功のカギです。
まとめ
会社を売却する最適なタイミングは、単に「今すぐ」ではなく、「経営者の意欲・健康状態」と「外部環境(景気や業界)」の両面を見ながら判断する必要があります。
- 業績は好調だが、やる気が続かないとき
- 引退を意識するほど体力に限界を感じたとき
- 市場が好況または業界が再編されているとき
これら3つのタイミングを見逃さず、早めに準備を始めることで、より良い条件での売却が可能になります。迷ったときは、専門家に相談することも選択肢の一つです。
4. 自社の業績別にみる売却のベストタイミング
4.1 業績好調時に売るべき理由
会社の業績が好調なときは、最も高く売れるタイミングの一つです。売上や利益が伸びている状態は、買い手にとって非常に魅力的であり、交渉を有利に進めやすくなります。
特に中小企業では、「業績の安定性」が企業価値に大きく影響します。買い手側は、将来的にリターンを得られると見込める企業に対しては、プレミアムを上乗せした価格を提示することもあります。
たとえば、以下のような要素が揃っていれば、好条件での売却が期待できます。
- 3期連続で増収増益
- 新規顧客の獲得数が増加傾向
- 利益率が高く、財務体質が安定
中小企業庁の『M&Aの実態調査(令和3年度)』によると、売却時に高い価格がついた企業の70%以上が「業績が安定していた」または「直近3年間で成長していた」と回答しています。
たとえば、ある建設関連会社は、5期連続で黒字を維持していたタイミングで売却を決断。売上の将来性と社員の定着率が評価され、想定より2割高い価格で成約しました。
このように、業績がピークにあるときに売却することで、買い手にとっての「安心材料」となり、結果的により高い評価額につながるのです。
4.2 業績不振時でも売却を選ぶ判断軸
一方、業績が悪化しているときでも、会社を売却すべきケースは存在します。たとえ評価額が下がったとしても、事業の継続や雇用の維持を優先する判断が求められることがあります。
以下のような状況にある場合は、「早めの売却」が合理的といえるでしょう。
- 赤字が数期続いている
- 資金繰りが厳しく、新規投資が難しい
- 経営者が心身ともに疲弊しており再建の意欲がない
経済産業省の「中小企業の再生支援等に関する調査(2021年)」でも、「資金繰りの悪化が深刻になる前に事業譲渡を検討した企業は、再建成功率が高い」と報告されています。
たとえば、ある印刷会社では、デジタル化の波に乗れず、売上が20%以上減少。経営者は資金繰りをしながらの再建に限界を感じ、早期にM&A仲介会社に相談。結果的に、同業のデジタルプリント会社に売却し、従業員の雇用も守られました。
業績が悪いと売却をためらう方も多いですが、「倒産」や「信用不安」が現実化する前に動くことで、最小限のダメージで会社と従業員を守ることができます。
4.3 意欲があるなら提携や再建も選択肢
業績が芳しくなくても、経営者に強い意欲があり、「再建の見込みがある」場合には、売却ではなく他の選択肢を検討するのも有効です。
特に以下のような状況下では、すぐに売却せずとも企業価値を高める努力が可能です。
- 顧客基盤や技術に強みがある
- 外部資本の導入や業務提携の余地がある
- 一時的な外部要因(コロナ禍など)で業績が落ち込んでいる
このような場合は、事業再生ファンドやベンチャーキャピタルとの提携、あるいは資本業務提携によって、会社の立て直しを図ったうえで、数年後に売却を再検討する戦略も考えられます。
実例として、ITベンチャー企業が資金難に陥った際、投資会社からの出資を受け、3年間で黒字転換。改善された業績を背景に、最終的には国内大手企業に高値で買収されたという成功ケースがあります。
意欲がある限り、「売る」のは最終手段として温存し、まずは成長の種を見つけて磨き上げる時間を確保することも一つの選択です。
まとめ
会社の売却タイミングは、単に「業績が良いから売る」「悪いから売らない」ではなく、経営者の意欲と状況に応じて最適な選択をすることが重要です。
会社の状況 | 適した対応 |
---|---|
業績好調 × 意欲低下 | 高値売却の好機 |
業績不振 × 意欲も低下 | 早期売却で損失を最小限に |
業績不振 × 意欲あり | 提携・再建を経て再評価も可能 |
どの状態にあるかを冷静に分析し、「自社にとっての今」がどんなフェーズにあるのかを見極めることが、後悔のないM&Aや経営判断につながります。
5. 会社を高く売るための3つの戦略ポイント
5.1 株価評価の基本(3手法を解説)
会社を高く売るためには、まず「自社の株価はどうやって決まるのか」を理解することが必要です。特に非上場企業の場合、株価は市場価格がないため、専門家による企業価値評価(バリュエーション)で決まります。
主な評価手法は次の3つです。
- コストアプローチ(時価純資産法):会社が持つ資産と負債をもとに計算します。
- インカムアプローチ(DCF法):将来得られる利益やキャッシュフローを現在価値に換算します。
- マーケットアプローチ(類似会社比較法):同じような企業のM&A事例や上場会社の株価と比べて評価します。
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」によると、中小企業では「時価純資産+営業利益×のれん倍率(3〜5倍程度)」で評価されるケースが多く、特に安定した収益がある企業ほど、のれんが高くつく傾向にあります。
たとえば、年間の営業利益が2,000万円で、のれん倍率が4倍の場合、のれんは8,000万円となり、時価純資産が5,000万円なら、企業価値は合計で1億3,000万円になります。
このように、どの評価手法が使われるかによって売却価格は大きく変わります。したがって、評価の前提を理解し、事前に対策を打つことが、高値売却の第一歩です。
5.2 収益力・財務体質・投資効率の改善方法
会社の価値を高めるには、売る前の「磨き上げ」が重要です。とくに以下の3つの要素が評価額を左右します。
評価要素 | 改善のポイント |
---|---|
収益力 | 売上の安定性、利益率の改善 |
財務体質 | 負債比率の低下、BSの健全化 |
投資効率 | 不採算部門の整理、資産の選択と集中 |
収益力の改善には、既存顧客への追加提案(アップセル)や、不要なコストの削減が効果的です。たとえば、役員報酬や広告費を見直すだけで、営業利益が一時的に大きく改善され、バリュエーションに反映されます。
財務体質の改善では、遊休資産や不要な債権の整理がポイントです。固定資産や未回収の売掛金などは、バランスシートを圧迫するため、売却前に現金化することで、より健全な企業と評価されます。
投資効率の見直しも重要です。複数の事業を展開していて、赤字事業がある場合、それを切り離すことで全体の利益率が改善します。また、稼働率の低い設備は廃棄・売却し、利益を生む資産へとシフトする判断も求められます。
たとえば、製造業のある企業では、不要な倉庫や社用車を売却し、BSをスリム化。営業利益の増加とあわせて、売却価格が当初想定より2,000万円高くなったという成功事例もあります。
このように、売却前に数か月〜1年程度の準備期間を設け、会社の収益力や財務状態を見直すことで、評価額を大幅に引き上げることが可能です。
5.3 魅力的な企業に見せる「磨き上げ」のコツ
買い手にとって魅力的に映る企業であるためには、数字だけでなく「見た目の整備」も大切です。
次のようなポイントを整えることで、買い手の安心感と信頼感を引き出すことができます。
- 業務マニュアルの整備:誰が見ても業務がわかるようにしておく
- 主要取引先との契約書の明文化:口約束ではなく書面で残す
- 労務管理の健全化:未払い残業代や労働トラブルを事前に解消
- 強みを一目で伝える企業概要資料の作成:事業の魅力を端的に表現
たとえば、ある小売業者では、Excelで管理していた業務をマニュアル化し、販売管理システムを導入。さらに、企業パンフレットを刷新し、買い手が安心して引き継げる仕組みを整備した結果、買収企業から「他社より格段に安心できた」と評価され、想定価格より高い条件でM&Aが成立しました。
数字以外の「人」「組織」「文化」といった目に見えにくい部分も、買い手が買収後のシナジーをイメージしやすくなるよう、整理・可視化しておくことが、成功への近道です。
まとめ
会社を高く売却するには、以下の3つの戦略が重要です。
- 自社の価値を正しく理解する(株価評価の理解)
- 業績や財務面を改善し、数字で魅力を示す
- 買い手の視点で「引き継ぎやすさ」を整える
これらを計画的に進めておくことで、同じ会社でも数千万円以上の差が出ることもあります。売却は「準備で決まる」といっても過言ではありません。
6. タイミングを逃さないための準備とは?
6.1 目的を明確化する重要性
会社を売却する際に最も重要なのは、「なぜ売るのか」という目的を明確にすることです。目的がはっきりしないまま売却を進めると、買い手の選定や条件交渉の軸がぶれてしまい、納得のいかない結果になりがちです。
たとえば、以下のように目的は大きく3つに分かれます。
- リタイアして生活資金を確保したい
- 後継者がいないため、事業承継したい
- シナジーを狙って大手の傘下に入りたい
中小企業庁の「事業承継・引継ぎガイドライン」では、「売却の動機を曖昧にしたまま話を進めると、相手の期待とのギャップが生まれ、失敗する可能性が高まる」と警鐘を鳴らしています。
たとえば、「とにかく高く売りたい」という気持ちだけで交渉を進めた経営者が、結果的に自社文化や従業員の処遇に配慮のない買い手と契約し、M&A後に社員が大量に辞めてしまったという例もあります。
このような事態を避けるためにも、自分の「譲れない軸」が何なのかを言語化しておくことが非常に重要です。目的を定めれば、理想の買い手像が明確になり、適切なマッチングが可能になります。
6.2 株主・財務・法務の整理整頓
会社を売却する際には、株主構成や財務・法務の状態を整理しておくことが必須です。どんなに業績が良くても、基本的な整理ができていなければ、買い手に不信感を与えてしまいます。
まず株主構成についてですが、株券を発行している企業では「誰が株主なのか」「株式がきちんと分配されているか」を明確にしておく必要があります。株主が複数いる場合、全員から同意を得なければ売却が進まないこともあります。
財務面では、以下の項目をチェックしましょう。
- 帳簿と実態が一致しているか
- 売掛金や買掛金に滞留がないか
- 役員報酬が適正か(過大・過少でないか)
法務面では、次の点を整備する必要があります。
- 主要な契約書(取引先・従業員など)が書面で管理されているか
- 知的財産(商標、特許など)の名義が自社名義か
- 就業規則や労務管理が整っているか
経済産業省の報告によれば、デューデリジェンス(買収前調査)で最も指摘の多い分野は「財務」「人事」「法務」の3つです。つまり、ここがきちんと整っていれば、買い手の信頼を得やすくなり、交渉もスムーズに進みます。
ある小売企業では、株主名簿が紛失しており、誰が何株を持っているか不明確でした。売却を希望しても整理に1年以上かかり、結果的に買い手を逃してしまったという事例もあります。
このように、「売ると決めてからでは遅い」ことも多いため、日頃から会社の体制を整えておくことがタイミングを逃さないポイントです。
6.3 情報漏洩への注意と秘密保持契約
M&Aにおいて、最も注意が必要なのが「情報漏洩」です。会社を売るという情報が従業員や取引先に漏れると、不安や混乱を招き、最悪の場合、信用を失って事業に支障をきたす恐れもあります。
情報漏洩が起きる主な原因は次のようなものです。
- 社内でうっかり話してしまう
- 関連資料を無造作に保管しておく
- 秘密保持契約を結ばずに買い手候補に情報を渡す
こうしたリスクを避けるには、買い手候補と接触する前に「秘密保持契約(NDA/CA)」を必ず締結することが基本です。この契約により、外部に情報を漏らすことや、不正利用することを法律的に禁止できます。
また、買い手候補が複数いる場合には、情報の開示範囲を段階的に設定することも有効です。たとえば、最初は概要だけ開示し、信頼関係が深まってから財務情報を開示するという方法です。
実際に、秘密保持契約を結ばずに資料を渡してしまい、結果的にその情報が競合に伝わってしまったというトラブルも起きています。取引先や従業員が不安を感じ、離れてしまうリスクもあるため、慎重な情報管理が必要です。
M&Aは社外だけでなく、社内の混乱を最小限に抑えることも重要です。そのためには、情報の取り扱いについて、経営者自身がしっかりと方針を定め、専門家と連携しながら進めることが大切です。
まとめ
会社を高く、そして円滑に売却するためには、タイミングを逃さないための「事前準備」がカギとなります。
- 目的を明確にして、理想の買い手を見極める
- 株主構成・財務・法務を整え、信頼性を高める
- 情報漏洩を防ぎ、買い手との信頼関係を築く
こうした準備を早い段階から進めておくことで、いざ売却の好機が訪れたときにもスムーズに行動でき、より有利な条件でのM&Aを実現できるでしょう。
7. 実際に相談すべきタイミングとその窓口
7.1 M&A専門家へ相談すべきタイミング
会社を売ろうと考え始めた段階で、できるだけ早くM&A専門家に相談するのが理想です。「まだ早いかもしれない」と感じても、早期に動くことで選択肢が広がり、より良い条件での売却が実現しやすくなります。
多くの経営者は「売却を決めてから相談する」と考えがちですが、実際はその前段階での情報整理や準備こそ、プロの力を借りるべきフェーズです。
中小企業庁が発表した「事業承継・引継ぎ補助金に関する調査」でも、M&Aを成功させた企業の約75%が「売却の1年以上前から専門家に相談していた」と報告されています。
たとえば、60代の製造業経営者が「そろそろ後継者が必要かもしれない」と思い立ち、2年前からM&A仲介会社に相談。時間をかけて磨き上げを行い、希望通りの価格での売却に成功しました。
このように、「まだ売るかどうか決めていない」状態でも、タイミングや準備のアドバイスを受けるために、専門家への早期相談をおすすめします。
7.2 無料相談を活用するコツ
M&A支援機関の多くは「無料相談」を実施しており、初期段階の情報収集や疑問解消に非常に役立ちます。特に次のような場面での活用がおすすめです。
- 会社の価値がどれくらいか知りたい
- 後継者が見つからず、他の選択肢を探している
- 売却したいが、まず何から始めるべきかわからない
無料相談を有効に活用するためのポイントは以下の通りです。
- 事前に自社の概要(売上・利益・従業員数)を整理しておく
- 売却理由や目的をできる範囲で言語化しておく
- わからないこと、聞きたいことをリスト化しておく
たとえば、ある建設会社の社長は、「自社の価値が知りたい」と無料相談を利用し、その場で簡易評価を受けたうえで、今後2年かけて磨き上げを行う決断をしました。結果的に、当初の評価額より30%高い価格で売却できたそうです。
無料相談は“営業の場”ではなく、“情報収集の場”と考えて臨めば、有意義な時間となり、自社の今後を考える大きなヒントが得られます。
7.3 信頼できるアドバイザーの選び方
M&Aは一生に一度あるかないかの大きな決断です。そのため、信頼できるアドバイザーを選ぶことは、成功のカギとなります。
以下のポイントを意識して、納得のいくパートナーを見つけましょう。
- 経験値:中小企業のM&A支援実績が豊富か
- 専門性:業種や規模に応じたアドバイスができるか
- 報酬体系:成功報酬が明確かつ合理的か
- 誠実さ:売却だけでなく、経営者の将来も含めた提案があるか
中小企業庁が2021年に公開した「中小M&Aガイドライン」でも、アドバイザー選定において「情報の非対称性を利用しない説明責任」が明記されています。つまり、専門知識を持つ側が、経営者に不利な提案をしないかが重要な判断軸になります。
たとえば、ある飲食チェーンのオーナーは、過去に手数料が不透明な仲介会社に依頼し、売却価格の20%近い費用を取られてしまったという経験を踏まえ、次は報酬体系が明確な専門家に依頼。結果として、安心して取引を進められました。
アドバイザー選びは「価格」だけでなく、「この人に任せたいと思えるか」という“人間性”も大切です。最終的に信頼できるかどうかは、何度か面談し、価値観や姿勢を見て判断するのがよいでしょう。
まとめ
会社を売却する際には、以下の3つのポイントを意識して、早めに行動することが成功の鍵となります。
- 売却の意志が固まる前でも、専門家への相談は早い方がよい
- 無料相談は積極的に活用し、自社の方向性を整理する場とする
- 信頼できるアドバイザーを選び、納得感のあるM&Aを実現する
「誰に相談するか」「いつ相談するか」で、その後の道筋は大きく変わります。少しでも迷いがある方は、まず一度、相談の一歩を踏み出してみてください。
まとめ
会社売却を成功させるためには、事前の準備とタイミングの見極めがすべてです。思い立ったときにすぐ動けるよう、日頃から目的や情報の整理をしておくことが重要です。本記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 売却目的を明確にする
- 業績と意欲を見極める
- 事前準備を丁寧に進める
- 適切なタイミングで動く
- 信頼できる専門家を選ぶ
後悔のない会社売却を実現するために、早めの行動が未来を左右します。詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。
