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買手がいる業種・いない業種とは?M&Aで人気の会社と売れづらい会社の違いを徹底解説

「自分の会社はM&A市場で売れるのか?」「買手が本当に現れるのか不安…」

そんなお悩みをお持ちではありませんか?業種によっては買手が殺到する一方で、まったく関心を持たれないケースもあります。

本記事では、現役のM&Aアドバイザーが、買手が付きやすい人気業種・付きにくい業種の特徴を徹底解説し、売却成功へのヒントをお届けします。

■本記事を読むと得られること

  1. M&A市場で人気の業種と不人気業種の傾向がわかる
  2. 同じ業種でも売れやすい会社の共通点が見える
  3. 自社が売れる業種かどうかを見極める具体的方法を知れる

■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上、累計200件以上のM&A案件に関与。中小企業庁登録のM&A支援機関として、信頼・誠実・スピード・専門性を重視した支援を行っています。

この記事を読むことで、「買手がいるか不安」「本当に売れるのか」といった悩みが整理され、最適な戦略を立てられるようになります。

3分ほどで読める内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。

1. はじめに:会社売却の成否は「業種選び」で9割決まる?

会社を売却する際、「うちの業種はそもそも売れるのか?」と悩む経営者の方は少なくありません。実はこの疑問、M&Aにおいては非常に重要な出発点です。なぜなら、業種によって買手の多さや意欲が大きく異なり、それが最終的な売却の成否や価格に直結するからです。

M&Aの世界では、事業内容や財務内容以上に「業種」が注目されるケースが多くあります。特に中小企業M&Aでは、買手側が「どの業界を伸ばしたいか」「どの分野に人材・ノウハウがあるか」を基準に選定するため、業種が入口でフィルターにかけられることも珍しくありません。

実際に、中小企業庁が発表した「中小企業のM&A実態調査(令和4年版)」でも、買手企業がM&Aで重視する項目として、以下のような結果が出ています。

重視項目 回答割合(複数回答)
業種・業界の親和性 65.2%
地域性(地理的な近さ) 49.8%
売上・利益規模 42.1%
人材やノウハウの有無 38.7%

このように、売上や利益といった数値面よりも、「自社の事業と相性が良いかどうか」、つまり業種の親和性がM&Aの判断材料として最重要視されているのが現実です。

たとえば、あるシステム開発会社が同業のSES事業者を買収するケースでは、共通言語や人材のスライド配置ができるため、非常に人気があります。一方で、まったく異業種で専門性が高い小規模製造業などは、引き継ぐにも知見が足りず、買手候補が限られてしまいます。

また、買手の立場になってみると、自社がすでに得意としている領域での買収は「経営リスクが少なく」、成果が出やすいため積極的になります。逆に、未知の分野では「人材流出」「オペレーション理解不足」「PMI(統合プロセス)の失敗」などの懸念が高くなり、検討すらされないこともあります。

そのため、自社が属する業種が「買手が多い人気業種」なのか「買手が限られる業種」なのかを理解することは、売却戦略を考える上で極めて重要な基礎知識となります。

もちろん、業種が人気でなかったとしても、まったく売却できないわけではありません。ただし、希望する売却額や交渉力に大きな影響を及ぼすため、最初から現実的な目線で臨む必要があります。

たとえば、ある調剤薬局の場合、薬剤師の確保や立地によっては買手が殺到し、逆に競争的な売却プロセスに発展した事例もあります。これは「業種が人気」であることに加えて、「人材や場所といった買収後の運用がスムーズ」な条件が揃っていたことが理由です。

一方、人口減少が進む過疎地の小規模スーパーなどでは、買収後の利益改善が見込みづらく、買手が見つからずに長期間掲載が続く事例も多く見受けられます。

このように、会社を売るという決断のスタート地点において、「業種の立ち位置」を正しく知ることは、現実的な売却戦略を立てるうえで欠かせません。

結論として、M&Aでの売却成功を目指すには、まず自社の業種が「市場でどう評価されているか」を客観的に把握することが第一歩となります。そして、それを前提に「どう売るか」「どこを強みとして打ち出すか」を戦略的に考えることで、買手とのマッチングの可能性を最大化できるのです。

2. 買手が殺到する!M&A市場で人気の高い業種とは

2.1 なぜこの業種は人気なのか?需要と供給の関係

M&A市場では、業種ごとに「買手が殺到する人気業種」と「なかなか買手がつかない業種」がはっきりと分かれます。特に人気の高い業種には共通点があります。それは、「買収後にすぐに利益が見込める」「人材や設備が揃っていて即戦力になる」「成長市場である」など、買手側にとってメリットが大きいことです。

こうした背景には、M&Aにおける需要と供給のバランスが大きく関係しています。売却を希望する企業(供給)よりも、それを買いたい企業(需要)の方が多い業種では、買手が競争してでも取得したいと考えるため、人気が集中するのです。

たとえば、以下のような業種は特に人気があります。

  • システム開発(受託開発、SESなど)
  • 調剤薬局(薬剤師の確保ができていて、立地が良い)
  • 運送業(ラストワンマイル配送など、EC需要の高まりが背景)
  • 工事業(電気・設備・土木など、職人が若くて人数も多い)
  • 人材派遣業(IT系・事務系・軽作業などで派遣スタッフが豊富)
  • ビルメンテナンス(大手企業との契約や安定した管理戸数)
  • 保険代理店(既存顧客が安定し、社長退任後も契約維持が可能)

国土交通省や経済産業省などの公的資料では、今後も拡大が期待される業界として、IT・医療・物流・建設・環境エネルギー分野が挙げられており、実際にこれらの業界ではM&Aも盛んです。

特にIT業界では、DX(デジタルトランスフォーメーション)需要の高まりにより、2020年代以降、IT系企業の買収件数が大幅に増加しています。中小企業庁「中小企業のM&A実態調査(令和4年度)」でも、買手企業の関心分野としてITサービス業が上位にランクインしています。

このように、社会的な需要が高く、買手が多い業界では、売却希望企業が1社出てくると、複数の買手からアプローチがあるケースも少なくありません。結果として、売手にとっては有利な条件で交渉を進めやすくなります。

たとえば、ある40名規模のSES事業者がM&Aを実施した際には、上場企業を含む8社から買収の申し出があり、最終的には希望価格を上回る条件で成約しました。これは、「エンジニアが確保できている」「案件の種類が多様で継続性がある」という業界ニーズを満たしていたことが要因です。

つまり、買手が多い業種というのは「成長市場」であり、「すぐに収益化できる」可能性が高い領域であるという特徴があるのです。

2.2 仲介会社が案件獲得に動く業界の共通点

もうひとつの視点として、「M&A仲介会社が積極的に営業をかける業種」があります。これらは、買手の引き合いが多く、成約までのスピードが早いため、仲介会社にとっても取り組みやすい案件です。

仲介会社が積極的に動く業種には、以下のような共通点があります。

  1. 買手が複数存在しており、紹介先に困らない
  2. 案件の希少性が低く、調査や資料作成の負担が少ない
  3. 人材や顧客が継続しやすく、統合リスクが小さい
  4. 類似案件のデータや相場が豊富で、価格交渉がスムーズ

このような条件を満たす業種では、仲介会社が売手企業に対して「買手がいます」「ぜひ一度ご相談を」といった営業を頻繁に行う傾向があります。売手企業から見ると、たくさんのDMや電話が届くのは、「人気業種である証」とも言えます。

一方で、仲介会社の営業トークの中には、「買手がいます」という言葉を口実に売却案件を集めようとするケースもあるため、注意が必要です。本当に買手がいるのかどうかは、案件化後の買手からの問い合わせ状況や、過去の成約実績を確認することである程度見極めることが可能です。

たとえば、都市部の電気設備会社に対して、5社以上の仲介会社がアプローチをしていた事例では、最終的にそのうち3社が本気の買手を見つけて競合状態になりました。これは、買手ニーズが明確な業界であるうえに、仲介会社が実際に顧客ネットワークを持っていたからこそ成立した結果です。

逆に、過疎地域の家族経営スーパーに対して、「買手がいます」と言っていた仲介会社が、実際には1件も買手提案をできなかったケースもあります。人気のある業種であっても、条件が合わなければ買手は現れません。業種の人気に加え、規模感や立地、従業員構成なども影響するのです。

このように、M&A仲介会社が積極的に営業してくる場合、その業種がM&A市場で「売りやすい」と判断されていると考えて良いでしょう。ただし、単なる営業トークではなく、実際の案件数や買手の動向を見極めて、冷静に判断することも重要です。

まとめると、人気業種とは「買手が多く、すぐに動ける」「仲介会社も営業をかけやすい」「過去の成約データが豊富で交渉しやすい」という特徴を備えた領域です。売手としては、自社がこのカテゴリに該当するかを早い段階で把握し、戦略的にM&A活動を進めていくことが、納得のいく売却成功につながるのです。

3. 買手がつきにくい業種の特徴とその理由

3.1 ニッチすぎる製造業や立地に難ありの業種

M&A市場においては、すべての業種が平等に買手から求められるわけではありません。特に、製造業の中でも製品が非常にニッチで、限られた用途しかない事業は、買手がつきにくい傾向にあります。また、過疎地域やアクセスの悪い立地にある企業も、買手の検討対象から外されがちです。

その背景には、買手企業が「買収後にすぐに事業を引き継げるかどうか」を重視していることがあります。特殊な製品を作っている企業の場合、設備や技術を理解し運用するのに時間がかかるうえに、販路や顧客も限定的であれば再現性が乏しく、買収リスクが高まります。

また、立地が不利な場合、人材確保の難しさや物流コストの増加といった課題も発生します。特に、人口が減少している地域では、事業承継後の維持が難しいと判断され、敬遠されることもあります。

たとえば以下のようなケースでは、買手の検討が進まないことがよくあります:

  • 製造している部品が1社特有の仕様に依存している
  • その地域に工場以外の拠点がない(移転が難しい)
  • 代表者の技術力に依存しすぎており、マニュアル化されていない
  • 地域に若年労働者がいないため、事業継続の担い手が不足している

中小企業庁の「中小企業の事業承継に関する実態調査(令和3年)」によると、買手企業が事業承継を避ける理由として以下の点が挙げられています。

避けられる理由 割合
業務が特殊すぎて継続が困難 58.3%
立地が不利で人材確保が困難 44.2%
売手の技術やノウハウが属人的 41.5%

実例として、ある地方の精密金属加工会社では、高度な加工技術を持っていたものの、社長の手作業に大きく依存しており、また、その社長しか顧客との交渉ができなかったため、買手がつきませんでした。工場の場所も最寄り駅から車で30分以上とアクセスが悪く、買手が足を運ぶ段階で検討から外されたケースです。

このように、製品がニッチすぎることや、物理的な場所の問題があると、買手にとって「再現性」や「引き継ぎのしやすさ」が見込めず、M&Aが成立しづらくなるのです。

3.2 オーナー依存・権利のみ型ビジネスの課題

もう一つ買手がつきにくい要因として、「経営者に依存しているビジネス」や「実態のないビジネス」があります。これは一見、業績がよく見える場合でも、実際には引き継ぎが非常に難しいことから、買手にとってリスクが大きいと判断されるのです。

たとえば以下のような事業形態が該当します。

  • 社長がメインの営業・顧客対応をしている(属人化)
  • 会社の売上が特定の1~2社に依存している
  • 営業ノウハウが文書化・仕組み化されていない
  • 「許認可」や「特定の契約」など、権利のみを保有する会社
  • 実体がなく、Webサイトだけの形式的な法人

このような事業は、経営者が退任することでそのまま会社が機能しなくなる可能性があるため、買手にとっては非常に扱いづらいのです。

特に最近では、許認可ビジネスや補助金スキームに依存する事業が増えており、「許認可だけを買いたい」「資格だけを移転したい」といった問い合わせも多くなっています。しかし、これらは法的にM&Aとして成立しないケースもあり、仲介会社でも取り扱いが難しいとされています。

たとえば、建設業許可だけを保有する休眠会社の売却相談があったケースでは、買手からの問い合わせがゼロに近く、結果的に解散・清算となりました。許可を取得するには時間がかかるため、一定のニーズはあるものの、実際には「実体のある事業」を求める買手の方が圧倒的に多いのです。

また、家族経営で従業員がいない会社や、社長とパート1人だけで成り立っている会社なども、事業の継続性に疑問が持たれやすく、買手候補が現れないことが多いです。

買手は、単に売上や利益を見ているわけではなく、「事業の仕組み」「人材」「持続可能性」を総合的に見ています。属人的なビジネスモデルでは、その3つが欠けやすいため、M&A市場では評価が下がってしまうのです。

結論として、買手がつきにくい業種には「継承が難しい」「ニーズが限定的」「会社の中身が見えにくい」といった共通点があります。これらを克服するには、事業の標準化や人材体制の強化、情報の整理など、事前準備がとても重要です。自社の売却可能性を高めるには、まずはこれらのハードルを認識し、対策を講じることがスタートラインになります。

4. 同じ業種でも差が出る!売れやすい会社・売れにくい会社

4.1 汎用性の高さが成約率を上げる

M&Aでは、同じ業種に属する会社であっても、売れやすい会社と売れにくい会社がはっきり分かれます。その理由のひとつが「汎用性の高さ」です。つまり、買手が買収後にそのまま事業を引き継ぎやすく、他の事業にも応用しやすい会社は、成約率が高くなる傾向にあるのです。

たとえば、以下のような特徴を持つ会社は、汎用性が高いと評価されやすくなります。

  • 特定の顧客や業界に依存せず、複数の取引先がある
  • 業界内で広く通用するサービスや技術を提供している
  • 業務のマニュアル化が進み、引き継ぎが容易
  • 従業員の年齢構成やスキルがバランスよく安定している
  • 設備や仕組みが他社でも活用しやすい

経済産業省「中小企業白書2023」でも、買収企業が重視する要素として「引き継ぎやすさ」や「事業の再現性」が上位に挙げられており、事業の汎用性がある会社は高く評価されやすいことが明らかになっています。

実際の例として、東京都内でITインフラの保守を行っていた企業では、大手企業向けだけでなく中堅・中小企業にも対応しており、サービスも汎用的だったため、複数の買手から関心を集めました。結果として、同じ業種でより特殊なシステム開発をしていた企業よりも、早期に好条件での成約に至りました。

一方で、特定の製品しか扱えない会社や、業務が顧客ごとに大きく異なるような会社は、買手が「自社にフィットしない」と判断することが多くなります。そのため、同じ業種でも売却が進みにくくなるのです。

汎用性が高いということは、「買手の選択肢が広がる」「業界外の買手も検討に乗ってくる」可能性があることを意味します。つまり、相対的に競争入札になりやすく、売却条件も向上しやすくなるのです。

売却を考える経営者は、自社のサービス・人材・仕組みが「他社でも活用できるか」という観点で見直すことが、成約率を高める大きなカギとなります。

4.2 特定人物依存・後継者不在がネックになることも

逆に、売れにくい会社の代表的な特徴として、「特定の人物に依存しすぎている」「後継者が不在で引き継ぎが難しい」といったケースが挙げられます。これらは、事業の継続性が見込めないと判断され、買手にとっては大きなリスク要因となります。

以下のようなケースでは、買手からの評価が低くなる傾向があります。

  • 社長が営業・人事・財務・現場をすべて担っている
  • 社長が顧客との関係を独占しており、他の社員が対応できない
  • 後継者候補の社員が育っておらず、経営が引き継げない
  • 技術やノウハウがすべて頭の中にあり、文書化されていない

特に中小企業では、経営者が創業者であるケースが多く、長年の経験や人脈によって事業が支えられていることが一般的です。しかし、買手企業にとっては「その経営者がいなくなった後も売上や顧客が維持できるか」が最も気になるポイントとなります。

中小企業庁の「中小企業のM&A実態調査(令和4年)」によると、M&Aが成立しなかった理由として「代表者の属人的な経営スタイルが障壁となった」が32.7%と報告されており、これは無視できない要因となっています。

たとえば、地方で美容院を経営していたケースでは、経営者が施術も集客もすべて行っており、従業員がいない状態でした。店舗の立地や顧客数には魅力がありましたが、「引き継いだ後に誰が運営するのか」が不透明だったため、複数の買手が辞退し、成約には至りませんでした。

また、特定のキーマンにしか技術やノウハウがない製造業では、その人が退職した時点で事業の継続が難しくなってしまうため、買手からは非常に慎重な判断が下されます。

このように、会社が一部の人物に強く依存している場合、買手にとっては「不安定な資産」と見なされやすく、M&Aが成立しにくくなってしまいます。

そのため、売却を見据えて早い段階から、業務の仕組み化や社員の育成を進めることが大切です。経営者自身が引退しても、会社として機能し続ける体制を整えておくことで、買手からの信頼も高まり、スムーズな売却へとつながっていきます。

まとめると、同じ業種であっても、汎用性が高く誰でも引き継ぎやすい会社は売れやすく、特定人物に依存しすぎている会社は売れにくい傾向があります。これからM&Aを目指すなら、「どれだけ誰でも回せる会社か」という観点で自社を見直すことが、成功への第一歩になります。

5. 希望価格と人気業種のバランス感覚をどう持つか

5.1 「高く売りたい」が売れ残る原因になるケース

M&Aにおいて、売手が「できるだけ高く売りたい」と考えるのは当然のことです。しかし、希望価格が現実とかけ離れていると、買手が見つからずに売却が長期化したり、最終的に成約できなくなってしまうケースも少なくありません。

特に「人気業種に属しているから高く売れるはず」と思い込んでしまうと、市場の相場や実態を無視した価格設定になり、買手からの興味を失ってしまいます。売手の希望と市場の評価がズレている場合、買手は「その価格では割に合わない」と感じ、交渉の土俵にすら乗らないのです。

中小企業庁の「中小M&A実態調査(令和4年度)」によると、M&Aが成立しなかった要因の一つとして「売手の希望価格が高すぎた」が31.6%を占めています。これは、売却がうまくいかない大きな原因の一つであることを示しています。

以下に、価格が高すぎて成約に至らなかった典型的なケースを示します。

  • 調剤薬局で実績はあるが、薬剤師が不足していて買収後の運営リスクが高かった
  • 地域密着型のスーパーで立地条件が悪く、来店客数が限られていた
  • 創業者のブランド力で売上が支えられていたが、退任後の再現性が低いと判断された

これらの例では、過去の業績や経営者の思い入れに基づいて高値を希望した結果、買手の判断基準と合致せず、交渉すら進まないという状況が発生しました。

希望価格を決める際には、以下のような現実的な観点が重要です。

  1. 買手が見込める利益(EBITDA)から逆算する
  2. 類似業種・同規模の成約事例と比較する
  3. 業種の人気度だけでなく、立地・人材・再現性などを加味する

M&Aでは、「いくらで売れるか」ではなく、「買手がいくらまでなら出せるか」を基準に価格感を調整する必要があります。

価格を高く設定した結果、長期間売れ残ってしまうと、情報の鮮度も失われ、「売れ残り案件」として評価が下がるリスクもあるため注意が必要です。

5.2 成約重視か、こだわり重視かを整理する

M&Aを成功させるには、最初に「何を最も重視するのか」を整理することが重要です。高く売りたいのか、それともできるだけ早く確実に成約させたいのか。その優先順位によって、戦略も価格設定も変わってきます。

一般的に、M&Aの売却戦略は以下の2つのスタンスに分けられます。

スタンス 特徴 メリット デメリット
高値重視型 自社の価値を最大限に評価してくれる買手を探す 納得感のある価格で売却できる 時間がかかり、成約確率が下がる可能性がある
成約重視型 現実的な相場に合わせて広く買手を募る スピーディに進みやすく、確度が高い 想定よりも価格が下がる場合がある

たとえば、経営者が「1年以内に引退したい」と考えている場合、あまり高値を追いすぎるとタイミングを逃してしまいます。一方で、「特定の理念や経営方針を引き継いでくれる会社に譲りたい」といったこだわりがある場合は、価格よりもマッチ度を優先すべきです。

実際の事例として、ある地方の建設会社では、「できるだけ地元雇用を維持してくれる会社に譲りたい」という思いから、買手の理念や人事方針を重視して交渉を進めました。結果として、希望価格よりは低い金額での譲渡になりましたが、従業員の継続雇用が実現し、売手も買手も満足するM&Aとなりました。

逆に、「とにかく高く売りたい」と考えていた企業が、1年以上売れ残り、最終的には希望価格を大きく下回る条件で譲渡したケースもあります。これは、当初から目的と戦略がずれていたことが原因です。

このように、M&Aでは「何を重視するか」を明確にしてから動き出すことで、価格とスケジュール、買手の選定基準などがブレず、より納得感のある結果につながります。

まとめると、人気業種であっても「高すぎる希望価格」では売れ残ってしまうリスクがあります。成約を重視するのか、こだわりや条件を重視するのか、そのバランスを整理した上で、現実的かつ戦略的な価格設定をすることが、成功するM&Aには欠かせません。

6. 自社の業種が「人気業種」か調べる方法

6.1 仲介会社のセミナーや特集から読み解く

M&Aを検討するうえで、「自社の業種が市場で人気があるのかどうか」を知ることは、売却成功に直結する重要なステップです。その見極め方として効果的なのが、仲介会社が開催しているセミナーや業種別特集ページをチェックすることです。

多くのM&A仲介会社では、自社のホームページ上で「注力業種」「注目の業界」といった形で情報を発信しています。こうした業種は、すでに買手からの需要があることが多く、仲介会社が売却案件を積極的に探している証拠です。

また、オンライン・オフラインを問わず、仲介会社が定期的に開催している無料セミナーでは、以下のようなテーマが取り上げられることが多いです。

  • 調剤薬局業界のM&A動向
  • 建設業における事業承継の実態
  • IT企業の譲渡で気をつけたいポイント
  • 物流・運送業界のM&Aニーズ

これらのセミナータイトルや、紹介されている成約事例、会場の参加者数などから「この業界は今、需要があるんだな」という傾向を読み取ることができます。

たとえば、大手仲介会社の一つである「日本M&Aセンター」では、公式サイト上に「注力業種」「注目テーマ」などのカテゴリーが用意されており、建設・医療・ITといった業界に特化した支援体制を明示しています。

また、「ストライク」「トランビ」などの大手プラットフォーム型M&A企業も、特定業界に特化した資料やレポートを無料提供しており、PDF資料を読めば自社業界の人気度や過去の成約データが把握できます。

以下のようなチェックリストを活用すると、仲介会社の注力度合いを判断しやすくなります。

チェックポイント 注目すべき内容
セミナー開催回数 特定業界で月に複数回実施されているか
業種別ページの充実度 業界ごとに専用ページがあるか
成約実績の掲載件数 類似業界の事例が多く紹介されているか
買手の声・ニーズ紹介 「この業界に興味がある買手が増えている」などの記述

このように、M&A仲介会社がどれだけ力を入れているかを客観的に観察することで、自社の業種が「今、売りやすいのか」「買手が探しているのか」を把握することができます。

経営者にとって、こうした情報収集は手間に思えるかもしれませんが、最適なタイミングで売却を成功させるには欠かせない行動です。

6.2 M&Aプラットフォームの閲覧数や掲載数を見る

もう一つの有効な方法が、「M&Aプラットフォームでの案件情報の分析」です。これにより、リアルタイムでどの業種に人気が集まっているか、実際のデータをもとに把握することができます。

主要なM&Aプラットフォームには以下のようなサービスがあります。

  • トランビ(TRANBI)
  • バトンズ(BATONZ)
  • スピードM&A
  • ビズリーチ・サクシード

これらのサイトでは、売却案件がカテゴリ別(IT、飲食、医療、製造など)に掲載されており、多くの場合、以下の情報が公開されています。

  • 閲覧数(何人の買手候補がその案件を見たか)
  • いいね数・関心登録数
  • 掲載期間(日数が長い場合は人気が低い可能性)

たとえば、IT系の会社で従業員10名の案件がわずか数日で数百の閲覧を獲得している場合、その業種は高い関心を集めていると判断できます。一方で、掲載から3ヶ月以上経ってもほとんど閲覧されていない案件は、市場ニーズが低い可能性があります。

以下に、閲覧数と注目度の関係の目安を示します。

閲覧数(公開後1週間) 市場での注目度
300件以上 非常に高い(人気業種)
100〜299件 やや高い(買手がつきやすい)
50〜99件 平均的(業種による)
50件未満 注目度が低い可能性あり

このように、実際の「案件ごとの動き」から客観的に需要の高い業種・そうでない業種を把握できるのが、プラットフォーム分析の最大のメリットです。

さらに、過去に掲載されていた案件の傾向を追うことで、季節性や市況の変化にも気づくことができます。たとえば、年末や年度末にかけて特定業界の案件が急増する場合は、そこに買収需要が集まっている可能性が高いと考えられます。

まとめると、自社が人気業種かを知るためには、仲介会社のセミナー情報や業種特集をチェックするとともに、M&Aプラットフォーム上の閲覧数や掲載傾向を分析するのが有効です。これらを総合的に見ることで、売却活動の判断材料として非常に強力な武器になります。

7. 人気がない業種でもM&Aは可能!成功事例と共通点

7.1 地方ホテルや美容業の成約事例から学ぶ

M&A市場では「人気業種」でなくても、会社の売却が成功するケースは多く存在します。特に、地方にあるホテルや美容業など、一見すると買手がつきにくそうな業種でも、工夫とタイミング次第で成約に至ることが可能です。

地方のホテルや美容院は、業界としては「不人気業種」とされることが多く、理由としては以下のような課題が挙げられます。

  • 過疎地域にあり、集客が困難
  • 設備の老朽化や資金繰りの不安
  • オーナー依存型の運営体制
  • 人材不足による運営継続の懸念

しかしながら、こうした業種でも以下のような要素がある場合、買手の興味を引き、M&Aが成立するケースが実際にあります。

成功のポイント 具体例
施設の立地・雰囲気が良い 観光地に近く、再生により集客が見込める
リピーター顧客が存在 地元客やSNS経由のファンが一定数いる
コンセプトに独自性がある 地域の食材を使った料理・エステメニューなど
買手の再生ノウハウがある ホテル再生や美容事業の多店舗展開実績がある

たとえば、北海道のある温泉旅館では、後継者不在で閉館を考えていたところ、宿泊事業を全国展開している会社が買収。客室のリニューアルとIT予約導入により、1年で黒字転換に成功しました。このように、「再生ノウハウを持つ買手」とのマッチングが重要な鍵となります。

また、地方の美容院でも、都市部のチェーンが人材確保と出店拡大を目的として買収する例があります。特に、既存顧客が継続的に通っていることや、スタッフが定着している点が評価されやすく、単独経営よりも安定収益が見込めると判断されます。

経済産業省の「中小企業白書2022」でも、再生型M&Aの成功事例として、地方資源を活用した旅館や観光業の再建モデルが紹介されており、「売りにくい業種」=「売れない業種」ではないことがデータからも示唆されています。

つまり、「業種が不人気」であることだけを理由に諦めるのではなく、「自社ならではの魅力」や「買手が持つ再生戦略との親和性」を考えることが、成功への第一歩となります。

7.2 強い買手がいる業界でのニッチ戦略とは

不人気業種でもM&Aが成功するもう一つのパターンが、「強い買手が特定の目的を持って買収を行っているケース」です。つまり、市場全体では需要が少なくても、「その業種を伸ばしたい」「ノウハウを取得したい」と明確な狙いを持った企業が存在する場合、売却の可能性が大きく広がるのです。

たとえば、以下のような業種では、ニッチながら強い買手がいることで成約に至るケースがあります。

  • 印刷業(Webと紙の統合を進めたい広告代理店)
  • 介護事業(エリア展開を進める介護法人)
  • 製造業(特殊部品を扱う自社製品と技術が合う企業)
  • 農業法人(地方創生事業と連動したファンドなど)

たとえば、ある小規模な印刷会社は、デジタル化が進む中で売上が減少していましたが、紙媒体とSNS広告の連携ソリューションを模索していた広告代理店が興味を示し、印刷機と顧客リストを活用する形で買収が実現しました。

このように、業種単体での人気度が低くても、「ある買手」にとっては戦略上欠かせないピースであることがあり、その価値は絶対的ではなく「相対的」なのです。

以下のような視点で「自社の価値を見つけ直す」ことが、ニッチ業種でのM&A成功に直結します。

  1. 特定の技術・人材が他社と補完関係にあるか
  2. 買手の今後の事業展開にどう貢献できるか
  3. 競合が少ないエリアであるか
  4. 顧客基盤や地域での信頼が活かせるか

実際、成約が難しいとされていた中古車販売業でも、買手が地域に拠点を設けたいという意図を持っていたため、店舗・人材・既存顧客の獲得を目的とした買収に至った例もあります。

このように、どんなにニッチで不人気に見える業種でも、「強い買手」「明確な意図を持った買手」がいる限り、M&Aは成立します。そのため、売手側は「誰が欲しがるか」「どんな活用が想定できるか」といった視点で、自社の事業価値を再定義することが重要です。

まとめると、不人気業種でもM&Aが可能となるポイントは以下の2つに集約されます。

  1. 自社の独自価値を見つけ出し、それを必要とする買手と出会うこと
  2. 再生や統合のノウハウを持つ「強い買手」を狙ったアプローチを行うこと

売れないと思われていた業種でも、適切な相手とつながれば、希望に近い形での売却が実現する可能性は十分にあります。

8. 売却を成功させるために知っておきたい3つの視点

8.1 売却の目的を明確にする

M&Aにおける成功とは、単に会社が「売れた」という結果だけではありません。「なぜ売却したいのか」「売却後に何を実現したいのか」といった目的を明確にすることで、希望に近い形でのM&Aを実現しやすくなります。

目的がはっきりしていないまま売却活動を始めると、途中で方針がぶれたり、買手との条件交渉で一貫性を欠いてしまったりするため、結果的に良い条件での成約が難しくなります。

売却の目的には、以下のような種類があります。

  • 後継者がいないため、事業を継続してくれる企業に託したい
  • 成長ステージに入るため、大手グループに入りたい
  • 経営者自身が引退・キャッシュアウトをしたい
  • 経営のスリム化のため、ノンコア事業を切り離したい
  • 人材や営業力のある企業と組み、シナジー効果を狙いたい

中小企業庁の「事業承継ガイドライン」によると、譲渡目的が明確であればあるほど、買手企業も売手の意図を理解しやすく、M&A後の統合作業(PMI)がスムーズに進みやすいとされています。

実際の事例として、ある地方の工務店が「従業員の雇用継続と地元貢献」を目的に売却を進めたところ、地域密着の住宅メーカーが共感を示し、希望条件を維持したままスムーズにM&Aが成立しました。売却の「軸」がぶれていなかったことが成約のカギとなりました。

このように、売却の目的を最初に整理することは、交渉の中でブレない判断をするための羅針盤になります。価格や条件の判断に迷ったときも、目的に立ち返れば冷静な判断ができるのです。

8.2 複数の仲介会社を比較検討する

会社の売却を考えるとき、最初に相談した1社だけで進めてしまう経営者も少なくありません。しかし、仲介会社によって得意とする業種や売却先のネットワーク、実績、手数料体系、提案力には大きな差があります。複数社を比較してから決めることで、納得感のあるM&Aが実現しやすくなります。

仲介会社を比較する際には、以下のポイントを意識しましょう。

比較項目 チェックポイント
得意業種 自社と同業種の成約実績があるか
買手ネットワーク 大手・地域・ファンドなど多様な買手候補を持つか
手数料体系 着手金や成功報酬の金額、最低報酬の有無
担当者の質 質問に的確に答えられるか、信頼できるか

特に注意が必要なのは、「買手がいます」という言葉を安易に信じすぎないことです。その発言が具体的な提案に基づくものであるのか、営業トークなのかを見極めるには、他社との比較が効果的です。

たとえば、ある飲食店チェーンの売却では、最初に相談した仲介会社では「買手が見つからない」と言われましたが、別の仲介会社に相談したところ、同業の買収意欲が高い会社にすぐ繋がり、結果として希望価格で成約できたという事例があります。

このように、仲介会社によって見えてくる選択肢が大きく変わるため、複数社を検討することで、「最良のパートナー」を見つけることができるのです。

8.3 第三者視点で会社を見直してみる

売却を成功させるためには、経営者自身が「自社を客観的に見直すこと」も重要なステップです。経営者にとっては愛着ある事業でも、買手から見ると「改善が必要な点」や「リスク要因」が多く見えることもあるからです。

自社を第三者視点で見直すには、以下のような項目をチェックしてみましょう。

  • 財務内容は健全か(債務超過や赤字の有無)
  • 業務は属人化していないか(マニュアルの整備)
  • 顧客や取引先への依存度が高すぎないか
  • 設備やIT環境は時代に合っているか
  • 従業員の定着率や後継者候補の有無

中小企業庁の「経営資源引継ぎガイドライン」でも、売却準備において「経営の見える化」が重視されており、業務フロー・財務状況・人材配置などの可視化が、M&Aの成約率と評価額向上に直結するとされています。

たとえば、ある製造業の企業では、財務は黒字でしたが社長のワンマン経営が原因で買手が見つかりませんでした。そこで社内の業務をマニュアル化し、担当者を育成した結果、「体制が整っている」と評価され、別の買手からの関心を得て無事に売却が成立しました。

このように、「自分の会社の強みと弱み」を買手視点で冷静に分析し、改善できるポイントは事前に整備しておくことが、売却成功の近道になります。

まとめると、M&Aを成功に導くためには、以下の3つの視点を意識して準備することが重要です。

  1. 売却の目的を明確にし、軸を持って交渉する
  2. 複数の仲介会社を比較し、最適なパートナーを選ぶ
  3. 第三者視点で会社を見直し、改善点を整理する

この3つを押さえておくことで、売却の実現可能性が高まり、希望に沿ったM&Aを成功させやすくなります。

まとめ

M&Aにおいて「どんな会社が売れるのか」は、業種だけで決まるわけではありません。たとえ不人気業種であっても、事業の魅力や体制次第で買手は見つかります。売却を成功させるには、自社の立ち位置を客観的に見つめ、戦略的に準備を進めることが重要です。

  1. 業種ごとの人気傾向を把握する
  2. 汎用性と引継ぎやすさを高める
  3. 希望価格と現実をすり合わせる
  4. 信頼できる仲介会社を選定する
  5. 買手目線で会社を見直してみる

自社の売却可能性を知りたい方、もっと具体的なアドバイスが欲しい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。経験豊富な専門家が丁寧にサポートいたします。

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