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COC(チェンジオブコントロール)条項とは?|M&A成功に欠かせない注意点と文例を徹底解説

「主要顧客との契約にCOC(チェンジオブコントロール)条項があり、M&Aで解除されないか不安」「資本拘束条項との違いが曖昧で、IMやDDでどう扱うべきか迷う」「通知義務や解除権など、契約書の書き方・交渉の進め方が分からない」――そんなお悩みを解消します。

本記事では、M&A実務に直結する視点で、COC条項の基本から具体文例、注意点、対処法までを初心者にもわかりやすく整理しました。

■本記事を読むと得られること

  1. COC条項の定義と資本拘束条項との違いが分かる
  2. 通知義務・解除権など具体文例と書き方のコツが分かる
  3. DD確認・同意取得・クロージング条件化の実務が分かる

■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上/関与実績200件以上。中小企業庁の登録M&A支援機関として、信頼性・誠実性・専門性・スピードを重視した支援を行っています。

読み終える頃には、COC条項のリスクを事前に見抜き、重要取引先の承諾取得や条項設計を主体的に進められるようになります。破談や価格毀損のリスクを抑え、円滑なM&A成約へと近づける実践知を、短時間でキャッチアップしてください。

1. なぜM&AでCOC条項が重要なのか

M&Aを進める際、多くの経営者が直面する課題の一つに「取引先との契約関係をどう維持するか」という点があります。その中でも特に注意が必要なのがCOC(チェンジオブコントロール)条項です。これは、企業の経営権が移転した場合に取引先が契約を解除できる権利を定めた条項であり、M&Aの成功・失敗に直結する極めて重要な要素です。

なぜ重要なのかといえば、M&A後も安定した事業継続を確保するためには、取引先との信頼関係が欠かせないからです。もし主要取引先との契約がCOC条項によって解除されれば、売上基盤が崩れ、買収価値そのものが揺らぎます。特に中小企業においては特定の取引先への依存度が高いため、その影響は甚大です。

例えば、中小企業庁が公表している「中小企業白書」でも、日本の中小企業の多くが売上の過半を少数の取引先に依存していると指摘されています。こうした状況では、COC条項が発動することで一気に経営基盤が揺らぐリスクが現実のものとなるのです。

このリスクは、売り手と買い手の双方に影響します。売り手側にとっては「買収後に主要顧客を失うリスクがある会社」と評価され、企業価値が低く算定される可能性があります。一方、買い手側にとっては「取得後に想定していた収益を確保できない」という事態に直面し、投資判断そのものを誤るリスクが高まります。

具体例として、ある製造業のM&A事例を挙げます。対象会社は売上の70%を特定の大手取引先に依存していました。しかし、その取引契約にはCOC条項が盛り込まれており、買収発表後に取引先が契約を解除。結果的に買収は白紙となり、双方にとって大きな損失となりました。このように、COC条項の存在はディールの成否に直結するのです。

COC条項が重要視される背景には、以下のような要素があります。

  • 主要取引先への依存度が高い中小企業の事業構造
  • M&Aに伴う経営権移転による信用不安の発生
  • 情報流出や競合関係の発生リスク
  • 契約解除に伴う売上喪失リスク

また、金融機関や投資家もCOC条項の有無を重視します。なぜなら、契約解除が続発すれば事業価値が急落し、投資回収が困難になるからです。そのため、デューデリジェンス(DD)では契約書のCOC条項の有無や文言が必ず確認されます。

さらに、COC条項は「資本拘束条項」の一種として位置付けられており、株主構成の変化や経営陣の交代など、企業のコントロールに関わる変動をトリガーに発動します。つまり、M&Aだけでなく、組織再編や資本政策の場面でもリスクとなり得るのです。

重要なのは、COC条項を「障害」としてだけ捉えるのではなく、あらかじめ対応策を講じておくことです。たとえば以下のような工夫が考えられます。

対応策 具体例
契約内容の事前精査 重要契約書を法務DDで確認し、条項の有無と影響を把握
取引先への事前説明 M&Aの目的や今後の方針を丁寧に説明し、理解と承諾を得る
交渉での条件調整 通知期限や解除条件の緩和を事前に協議する
代替取引先の確保 主要顧客以外の販路を拡大し、依存度を低下させる

このように、COC条項はM&Aにおける大きなリスクであると同時に、交渉や事前準備によってコントロール可能な要素でもあります。事前に契約内容を把握し、関係者との信頼関係を築くことで、むしろM&A後の安定性を高める契機となるのです。

結論として、M&AにおいてCOC条項は「必ず確認すべき最重要契約条項」のひとつです。その影響を軽視すればディール全体が破綻する可能性がありますが、適切に理解し準備すれば、買い手と売り手双方にとって安心感を持って取引を進められる基盤となります。M&Aを成功に導くためには、COC条項への正しい知識と実務的な対応力が欠かせないのです。

2. COC(チェンジオブコントロール)条項とは

2.1 基本定義と資本拘束条項との関係

COC(チェンジオブコントロール)条項とは、企業の経営権や支配権に変動が生じた場合に、取引先や契約相手方が特定の権利を行使できるよう定めた契約条項です。例えば、会社が買収されて株主構成が大きく変わると、新しい経営陣が現れます。このような状況で「今後も契約を継続すべきか」を取引先が自由に判断できるようにする仕組みがCOC条項です。契約相手が新しい経営体制に不安を抱いた場合、契約を解除できるようにしたり、事前通知や承諾を義務付けたりします。

この条項は「資本拘束条項」と呼ばれる大きな枠組みの中に含まれます。資本拘束条項とは、会社の支配権や資本構成が変化する際に、契約上の制限や条件を設ける条項の総称です。その中でもCOC条項は特に「経営権の移転」に焦点を当てており、株式譲渡、合併、会社分割、株式交換などのM&Aによるコントロール変更が起きた場合に発動するのが特徴です。

経済産業省が発表している「中小M&Aガイドライン」でも、契約書の条項精査の重要性が指摘されています。特にCOC条項は「重要取引の継続性に大きな影響を与える」とされており、M&Aの成否を左右するポイントとされています。

例えば、以下のような取り決めがCOC条項の典型例です。

  • 経営権が移転する場合は、事前に契約相手に通知しなければならない
  • 取引先は通知を受けた後、一定期間内であれば契約を解除できる
  • 経営権の変更後も契約を続ける場合には事前承諾が必要

このように、COC条項は「相手が望まない新体制との取引を強制されないようにする」ための安全弁の役割を果たしています。売り手企業にとってはM&A時のリスク要因、買い手企業にとっては事業価値を大きく左右する要素となるのです。

実際の事例として、あるIT企業のM&Aでは、主要取引先との契約にCOC条項が盛り込まれていました。買収後に取引先が契約解除権を行使した結果、想定していた売上が失われ、買い手企業の投資回収が難しくなったケースがありました。このように、条項の存在を軽視すると大きな経営リスクに直結するのです。

したがって、COC条項は単なる契約上の文言に留まらず、M&Aの成功を左右する「経営基盤を守るための仕組み」であると理解する必要があります。

2.2 M&Aで問題となる典型的な「コントロール変更」

M&Aにおける「コントロール変更」とは、会社の意思決定権を誰が握るかが変わることを指します。一般的には議決権の過半数を持つ株主が変わるとコントロール変更とみなされますが、契約によってはさらに広く定義されることがあります。

代表的なコントロール変更のケースには以下があります。

  1. 株式譲渡による議決権の過半数移転
    たとえば、A社がB社の株式を51%取得した場合、B社の経営方針を決定する力をA社が持つことになります。この時点でコントロール変更が発生します。
  2. 合併による法人格の統合
    合併により、存続会社が契約の相手方を引き継ぐ場合でも、契約相手から見れば経営権が変わったと感じることがあります。そのためCOC条項が発動するケースがあります。
  3. 株式交換や株式移転
    親会社・子会社関係が成立する場合や、グループ再編で経営支配が変わるケースもコントロール変更に含まれることがあります。
  4. 経営陣の交代
    契約によっては、一定数の取締役が入れ替わることも「コントロール変更」として定義されている場合があります。特にベンチャー投資や外資との契約ではこの点が細かく規定されることがあります。
  5. 親会社における間接的な支配権変更
    対象会社自体ではなく、親会社の株主構成が変わった場合でも、間接的に経営権が変わるとしてCOC条項が発動することがあります。

日本弁護士連合会が公表している契約実務指針でも「コントロール変更の定義は契約ごとに異なるため、文言を明確に定めることが紛争防止に不可欠」とされています。特に曖昧な表現のままでは、買収後に解釈を巡って取引先と争うリスクが高まります。

例えば、ある製造業のケースでは「主要経営陣の交代」がコントロール変更に含まれていたため、創業者社長が退任しただけで契約解除事由となり、大口取引が打ち切られてしまった事例がありました。買い手企業にとっては想定外のリスクであり、事前確認の重要性が浮き彫りになったのです。

以上のように、M&Aにおけるコントロール変更は単に「株式の過半数が移ったかどうか」だけで判断されるものではありません。契約によって幅広く規定されるため、対象企業の契約書を精査し、どの範囲までがコントロール変更とされるのかを確認することが不可欠です。これを怠ると、M&A実行後に主要な契約を失い、事業価値が大幅に毀損するリスクが高まります。

結論として、COC条項を正しく理解するためには、「コントロール変更」が何を意味するのかを契約ごとに明確に把握する必要があります。売り手・買い手の双方がこの視点を持ち、事前にリスクを見極めることが、M&Aを成功に導くための第一歩となるのです。

3. COC条項の具体的な文例と契約記載方法

3.1 通知義務条項の文例

通知義務条項は、M&Aなどで経営権の変更が発生した際に、対象会社が取引先に対して事前または事後に知らせることを義務付ける条項です。この規定があることで、取引先は経営環境の変化に備えることができ、リスクを事前に把握することが可能となります。

例えば、以下のような文言がよく使われます。

「甲(対象会社)が合併、株式移転、株式交換、または甲の現在の株主が
保有する議決権の過半数を第三者に譲渡する場合、甲は当該効力発生日の
30日前までに乙(取引先)に対して書面により通知しなければならない。」

このように通知期限を具体的に定めることで、相手方は十分な検討時間を確保できます。中小企業庁の「M&Aガイドライン」でも、契約条項を曖昧にせず、数値や日数を明示することが望ましいとされています。

実際の事例として、食品メーカーのA社が株式譲渡によりオーナー企業を変更した際、主要取引先への通知が遅れたことで信頼を損ね、一部取引の縮小につながったケースがあります。このようなリスクを避けるためには、通知期限を明確にし、契約書に沿った対応を徹底することが重要です。

3.2 契約解除権条項の文例

契約解除権条項は、経営権が変更された場合に、取引先が一方的に契約を終了できる権利を定めた条項です。これは取引先が望まない新体制との取引を避けるための手段として機能します。

典型的な記載例は以下の通りです。

「乙(取引先)は、甲(対象会社)について以下の事由が生じた場合、
何らの催告を要することなく本契約の全部または一部を解除することができる。
① 合併、会社分割、株式交換、株式移転その他の組織再編行為
② 議決権の過半数を保有する株主の変更
③ 事業の全部または重要な一部の譲渡」

この条項によって、取引先は不測の経営方針転換や品質低下、競合関係の発生などを回避できます。ただし、売り手や買い手にとっては契約が失われるリスクが高まるため、交渉の重要ポイントになります。

実例として、製造業のB社がM&Aで大手競合企業に買収された際、取引先の一部が解除権を行使しました。その結果、B社の売上は大きく減少し、買い手企業にとって想定外の損失が発生しました。契約解除権は取引先を守る有効な仕組みですが、M&Aの成功を左右する重大な要因となるのです。

3.3 通知と解除を組み合わせた文例

実務では、通知義務と解除権を組み合わせた条項が使われることも多くあります。これにより、取引先は経営権変更の事実を通知で把握し、そのうえで契約継続か解除かを選択できる柔軟性を持つことができます。

文例としては以下のようなものがあります。

「甲(対象会社)の支配権に変更が生じる場合、甲は事前に乙(取引先)に
書面で通知しなければならない。乙は当該通知を受領した日から30日以内に
書面で本契約を解除する意思を表示することができる。乙が期限内に解除の
意思表示を行わない場合、本契約は継続するものとする。」

この仕組みにより、取引先は状況を見極めて判断する時間を確保できます。特に大口顧客や重要サプライヤーとの契約では、このタイプの条項が多用されています。経営権変更によって必ずしも関係が悪化するとは限らず、継続できる場合もあるため、こうした条項は双方にとってバランスの取れた内容といえます。

実際の事例として、IT企業C社の買収案件では、取引先にこの条項が適用されました。買収後、取引先は新経営陣と面談を行ったうえで「取引条件は維持される」と判断し、解除権を行使せず契約継続を選びました。結果的に関係性はむしろ強化され、M&Aは成功裏に進みました。このように通知と解除を組み合わせることで、リスクを低減しつつ柔軟に対応できるのです。

結論として、COC条項の文例や契約方法は、単なる法的テクニックではなく、M&Aを円滑に進めるための重要なコミュニケーション手段です。通知義務・解除権・両者を組み合わせる条項を適切に使い分けることで、取引先の安心感を高め、M&A全体の成功確率を向上させることができます。

4. COC条項が効果を発揮する5つの典型場面

4.1 買い手と取引先が競合関係にある場合

M&Aにより新たな買い手が登場した際、その買い手が取引先の直接的な競合企業である場合があります。このケースでは、取引先は自社の重要な情報やノウハウが競合に流出するリスクを強く懸念します。そのため、COC条項が設定されていれば、取引先は契約を解除することができ、自社の競争力を守る手段となります。

例えば、ある食品メーカーが競合企業に買収された場合、そのメーカーと長年取引してきた原材料供給業者は「今後は競合に情報が漏れる恐れがある」と判断し、COC条項を根拠に契約を終了しました。このような仕組みがあることで、取引先はリスクを回避しやすくなります。

4.2 組織再編により不利益が生じる場合

合併や会社分割などの組織再編が行われると、取引条件や支払い条件に変更が生じる可能性があります。新しい経営体制の方針によっては、取引先にとって不利な条件に変わることも少なくありません。COC条項は、このような場合に契約を見直すきっかけを与え、不利益を受けるリスクから取引先を守る役割を果たします。

経済産業省の調査によると、M&A後に仕入れ条件が変更されたことで中小企業の収益が圧迫された事例も報告されています。こうしたリスクを軽減するために、COC条項は契約の安定性を担保する仕組みとして機能します。

4.3 買い手の信用度に懸念がある場合

M&Aにより新たに支配権を得た買い手企業の財務基盤や経営方針が信用できない場合、取引先は「今後の支払いは確実に行われるのか」「品質は維持されるのか」といった不安を抱きます。COC条項が存在すれば、取引先は経営リスクを未然に回避するために契約解除という選択肢を取れるのです。

例えば、建設業界で大手企業が中小企業を買収した際、新しい親会社の財務状態が悪化していたため、取引先はCOC条項を利用して契約を解除しました。その結果、未払いリスクを事前に避けることができました。

4.4 契約解除の好機となる場合

COC条項は単なるリスク回避だけでなく、取引先にとっては契約解除の「チャンス」として利用されることもあります。例えば、以前から取引条件に不満を抱いていた場合や、新しい取引先との関係を構築したいと考えていた場合、M&Aによる経営権の変更は契約を見直す絶好の機会となります。

実例として、あるIT企業が買収された際、長年コスト面で不満を抱えていた取引先がCOC条項を理由に契約を終了。その後、より有利な条件を提示する別のパートナーと契約を結び直しました。こうした使われ方は、取引先にとって合理的な選択肢となるのです。

4.5 情報流出リスクがある場合

取引関係の中では、製造工程や価格設定、顧客情報などの機密情報が共有されることが少なくありません。買い手が競合企業や異業種の企業である場合、これらの情報が流出する危険性が高まります。COC条項は、情報流出のリスクを避けるために契約を解除できる仕組みとして大きな意味を持ちます。

たとえば、精密機器メーカーが外資系企業に買収された際、取引先は自社の技術情報が海外に流出することを懸念しました。結果としてCOC条項を活用し、契約を終了させました。これにより、機密保持を優先する経営判断が可能となったのです。

このように、COC条項は単なる契約条件ではなく、取引先にとっての「安全弁」として機能します。競合関係や信用不安、情報漏洩リスクなど、M&Aに伴う多様な問題に対応できるため、実務上きわめて重要な条項であることが理解できます。総じて、COC条項はM&A後の不測のリスクから取引先を守り、事業の安定性を確保するための不可欠な仕組みであるといえるのです。

5. COC条項のメリットと期待できる効果

COC(チェンジオブコントロール)条項は、単なる契約条件の一つではなく、M&Aの安全性や信頼性を高める重要な仕組みです。この条項を設けることで、取引先や関係者は経営権の変化に伴う不測のリスクを回避でき、売り手・買い手双方にとって安心材料となります。特に、主要取引先との契約関係がM&A後も維持できるかどうかは、企業価値や取引の成否を左右するため、COC条項が大きな役割を果たします。

そのメリットを整理すると、以下のようになります。

  • 取引先にとっての安全弁となり、リスク回避が可能になる
  • 買い手企業にとっては、事業価値の毀損を未然に防ぐことができる
  • 売り手企業にとっては、透明性を示し、M&A価格評価にプラスに働く場合がある
  • 関係者全体に安心感を与え、信頼関係を維持することにつながる

国の調査でも、契約関係の安定がM&A後の事業成長に直結することが示されています。経済産業省の「中小M&Aガイドライン」では、重要契約の精査を怠るとクロージング後に取引先との関係が悪化し、事業基盤が大きく損なわれるリスクがあると指摘されています。逆に、契約条項を明確に定め、COC条項を適切に組み込むことで、M&A後も円滑に事業を継続できることが強調されています。

具体的な効果を、立場ごとに整理すると以下のようになります。

立場 COC条項によるメリット
取引先 望まない相手との取引を回避できる/経営リスクを事前に遮断できる
買い手企業 契約上のリスクを把握し、投資判断の精度を高められる/価格調整や交渉の材料になる
売り手企業 契約内容の透明性を示すことで、信頼性を高める/事前承諾を得ることで企業価値の毀損を防ぐ

例えば、ある製造業のM&Aでは、COC条項に基づいて主要顧客に事前承諾を取得しました。その結果、買収後も全ての契約が継続され、売上の維持が実現しました。このように、事前に適切な対応を行うことで、M&A後の事業安定性が格段に高まります。

逆に、COC条項がなかった場合や、曖昧な文言のまま契約されていた場合には、取引先が突然契約を解除する事態が発生する可能性があります。そのリスクを未然に防げる点が、COC条項の最も大きな効力といえるでしょう。

また、COC条項は交渉の場でも有効に活用されます。買い手にとっては「どの契約がM&A後も確実に継続するのか」を明確にすることで、価格評価の根拠を強化できます。売り手にとっては「取引先からの承諾を既に得ている」と示すことで、交渉力の向上につながる場合があります。このように、COC条項は単なるリスク回避の仕組みではなく、交渉や評価を有利に進める武器としても働きます。

総じて、COC条項のメリットは以下の3点に集約されます。

  1. リスク回避の仕組みとして、取引先を守る
  2. M&A後の事業継続性を高め、企業価値を安定させる
  3. 売り手・買い手双方にとって、交渉力や信頼性を強化する要素となる

結論として、COC条項はM&Aにおいて「事業の安定」「関係者の安心」「交渉の有利性」という三つの効果を発揮する非常に重要な条項です。適切に設定し、事前に関係者と調整することで、M&Aを成功に導くための強力な武器となります。

6. COC条項のデメリットと注意点

COC(チェンジオブコントロール)条項は取引先を守る安全弁として有効に機能しますが、同時に売り手や買い手にとっては大きなリスク要因となることがあります。契約の安定性を高めるメリットがある一方で、デメリットや注意すべき点を理解せずにM&Aを進めると、事業価値の毀損や取引破談に直結する恐れがあります。

まず考えられる主なデメリットを整理すると以下の通りです。

  • 契約解除のリスクが高まる:取引先が解除権を行使すると売上が減少する可能性がある
  • 交渉のハードルが上がる:買い手は承諾取得や条件調整に時間とコストを要する
  • 契約条項の解釈に幅がある:曖昧な文言のままでは、紛争やトラブルの原因となる
  • 取引価格に影響する:買い手がリスクを見込んで企業価値を低く評価する可能性がある

経済産業省の「中小M&Aガイドライン」でも、重要契約に含まれるCOC条項の確認はデューデリジェンスの必須事項とされ、対応を怠るとクロージング後に契約解除や事業縮小のリスクが顕在化すると指摘されています。つまり、COC条項の存在はM&Aの成否そのものに影響を及ぼすのです。

実際のケースとして、あるサービス業のM&Aでは、主要顧客契約にCOC条項が盛り込まれていました。買収後、顧客が解除権を行使し、売上の30%を占める大口契約が失われました。結果的に買い手は当初の想定利益を確保できず、投資回収に大きな支障が生じました。このように、事前の対応を誤ると多大な損失につながる危険性があります。

さらに注意すべきなのは、COC条項が交渉カードとして使われる点です。取引先が「承諾を出す代わりに条件を有利に変更してほしい」と要求する場合があり、買い手にとっては予想外の追加コストや契約条件の見直しを迫られることがあります。このため、承諾取得に時間がかかり、M&Aのスケジュールが遅延する要因ともなります。

加えて、COC条項は一見シンプルな文言でも解釈が分かれる場合があります。たとえば「経営権の変更」という定義が株式譲渡だけなのか、経営陣の交代や親会社の変更まで含むのかによって適用範囲が異なります。曖昧さを残すと、後に「解除できる/できない」で紛争となるリスクが高まります。

これらの点を踏まえると、COC条項のデメリットや注意点に対しては以下のような対策が有効です。

  1. 契約内容を明確化し、解除事由や通知義務の範囲を具体的に定義する
  2. デューデリジェンスで対象会社の全契約を精査し、COC条項の有無をリスト化する
  3. 主要取引先には事前に承諾を得て、合意書や覚書に残す
  4. 解除リスクがある場合は、買収価格やクロージング条件に反映させる
  5. 専門家(弁護士・M&Aアドバイザー)に相談し、リスク管理体制を整える

まとめると、COC条項は取引先保護の仕組みとして欠かせない一方で、売り手・買い手にとっては契約解除や価格低下などのリスクを内包しています。特に、デューデリジェンス段階での確認不足や交渉戦略の誤りは、大きな経営ダメージに直結します。したがって、COC条項に向き合う際には「条項の曖昧さをなくす」「事前承諾を得る」「価格や条件に反映する」という3点を徹底することが、M&A成功のための重要な注意点となります。

7. M&AでCOC条項に注意すべき5つのポイント

COC(チェンジオブコントロール)条項は、M&A取引において非常に重要な役割を果たします。しかし、その内容や対応を誤ると契約解除や企業価値の毀損など重大なトラブルにつながる恐れがあります。以下では、M&Aの現場で特に注意すべき5つのポイントを解説します。

7.1 法務DDでの契約確認

M&Aにおいて最初に行うべきは、法務デューデリジェンス(法務DD)での契約精査です。対象会社が取引している主要な契約にCOC条項が含まれているかを確認することは不可欠です。なぜなら、重要顧客やサプライヤーとの契約に解除権が付与されていれば、M&A後に売上や供給網が失われるリスクがあるからです。

経済産業省が公表している「中小M&Aガイドライン」でも、重要契約の存在と内容確認を怠ることは「買収後の経営不安定化」につながる典型的な失敗事例とされています。

例えば、製造業の買収において、売上の50%を占める主要取引契約にCOC条項が含まれていたにもかかわらず、DDで十分に確認されず、買収後に契約が解除されたケースがありました。このような事態を避けるため、DD段階での徹底したチェックが必須です。

7.2 重要取引先への事前通知と承諾取得

COC条項が含まれている場合、対象会社はM&Aの成立前に重要取引先へ通知し、承諾を得ることが望ましいです。これを怠ると、取引先が不安を抱え、契約解除や条件変更を申し出る可能性があります。

実務では、以下のような手順が取られることが多いです。

  • 対象会社から主要取引先へ書面で通知
  • M&A後の事業継続性や条件不変を説明
  • 承諾を得た場合は覚書などの形で書面化

あるIT企業のM&Aでは、主要取引先5社に事前通知を行い、承諾書を取り付けたことで、買収後もスムーズに契約が継続されました。承諾取得はM&Aの安心材料となり、交渉を円滑に進める要因となります。

7.3 クロージング条件での位置づけ

M&A契約のクロージング(最終成立)条件に「主要取引先からの承諾取得」を盛り込むことも重要です。これにより、承諾が得られない限り契約が成立しないように設定でき、リスクを未然に回避できます。

例えば、買い手は以下のようにクロージング条件を設定することが可能です。

「本取引のクロージングは、対象会社が主要取引先A、B、Cから
COC条項に基づく承諾を得ることを条件とする。」

このように条件を明文化することで、買い手は安全に取引を進められます。売り手にとっては負担が増えますが、透明性を高め、信頼性を強化する効果もあります。

7.4 IM作成段階での情報開示

IM(インフォメーション・メモランダム)作成段階で、対象会社が保有する重要契約のCOC条項の有無を明示することも重要です。IMは買い手候補が投資判断を行うための重要資料であり、この段階で情報を開示しなければ、後に「情報隠し」と捉えられて交渉が難航するリスクがあります。

また、COC条項を明確に示すことで、買い手は早期にリスクを把握でき、スムーズな条件交渉につながります。情報開示の透明性は、取引全体の信頼性を高める要素となります。

7.5 専門家による精査

COC条項の文言は一見シンプルでも、実際には解釈の幅が広く、専門的な知見が必要です。例えば「支配権の変更」が株式過半数の取得だけを意味するのか、経営陣の交代や親会社の変更も含むのかによって、適用範囲が大きく変わります。

このため、法務・会計・M&Aアドバイザーなどの専門家による精査が欠かせません。専門家は契約リスクを洗い出し、必要に応じて修正提案を行うことで、M&A後の不測のトラブルを防止します。

実際に、ある不動産関連企業のM&Aでは、弁護士による契約精査の結果、曖昧なCOC条項が修正され、取引先からの解除リスクを大幅に低減できた事例があります。専門家の関与はコストがかかりますが、その効果は計り知れません。

総じて、M&AでCOC条項に注意すべき5つのポイントは「DDでの確認」「事前通知と承諾取得」「クロージング条件への反映」「IMでの情報開示」「専門家の精査」です。これらを徹底することで、リスクを最小限に抑え、M&Aの成功確率を大きく高めることができます。

8. 実務での対処法|売り手・買い手・取引先それぞれの対応

COC(チェンジオブコントロール)条項は、M&Aにおけるリスク管理の中でも特に重要な契約要素です。条項の内容次第では、主要顧客や仕入先との契約が解除される可能性があり、取引の成否や企業価値に直結します。そのため、売り手・買い手・取引先それぞれの立場でどのような対応をとるべきかを理解しておくことが必要です。

売り手の対応

売り手企業は、M&Aに備えてあらかじめ取引契約に含まれるCOC条項の内容を整理し、リスクを見える化することが求められます。主要な対応策は以下の通りです。

  • 既存契約の精査:重要顧客や仕入先との契約をリストアップし、COC条項の有無や内容を確認する
  • 事前交渉:契約解除権がある場合には、事前に承諾を得たり、覚書で解除不可を確認する
  • 情報開示の透明化:IM(インフォメーション・メモランダム)やデューデリジェンスの段階で条項の存在を明示する

例えば、ある中堅メーカーでは、売却前に主要仕入先と交渉し、「買収後も契約条件を維持する」という覚書を取得しました。その結果、買い手は安心して取引を進められ、スムーズなクロージングにつながりました。

買い手の対応

買い手にとって、COC条項は事業継続性に直結するため、慎重な対応が欠かせません。特に以下の対応が重要です。

  1. デューデリジェンスでの徹底調査:法務DDにおいて契約書を精査し、COC条項の有無とリスクを明らかにする
  2. クロージング条件の設定:重要取引先の承諾取得をクロージング条件として契約書に盛り込む
  3. 価格調整:解除リスクが高い場合は、買収価格を減額する、あるいはアーンアウト方式を導入する

実際に、あるIT企業のM&Aでは、主要取引先の承諾取得をクロージング条件とし、条件が整わない場合は契約を白紙に戻す仕組みを設けました。この対応により、買い手は過大なリスクを負わずに取引を進めることができました。

取引先の対応

取引先にとって、COC条項は「新しい経営者と安心して取引できるか」を判断するための重要な手段です。そのため、以下のような対応が想定されます。

  • 経営安定性の確認:買い手企業の信用度や経営体制を評価する
  • 条件交渉:承諾を出す代わりに契約条件の見直しを求める場合がある
  • 解除権の行使:新しい経営陣に不安がある場合には契約解除を選択することも可能

例えば、金融機関との融資契約にCOC条項が盛り込まれている場合、経営権が移転した際に契約解除や条件変更を迫られるケースがあります。実際に、中小企業のM&Aで、買収後に金融機関から追加担保を求められた事例もあります。

三者のバランスを取る対応

売り手・買い手・取引先の立場はそれぞれ異なりますが、COC条項への対応は「三者の利害を調整する」ことが成功の鍵です。そのために有効な実務的手法は以下の通りです。

立場 主なリスク 有効な対応策
売り手 契約解除による企業価値低下 事前承諾の取得・リスク開示
買い手 承諾が得られない場合の取引失敗 クロージング条件の設定・価格調整
取引先 新経営陣への不安 条件交渉・契約解除権の行使

まとめると、COC条項はM&Aにおいて大きなリスクを内包する一方で、事前の準備や交渉によって十分にコントロールできる要素でもあります。売り手は契約精査と承諾取得を徹底し、買い手はリスクを契約条件に反映させ、取引先は信頼関係を重視して判断することで、三者にとって納得感のあるM&Aを実現できます。これらの対応を実務で徹底することが、M&A成功への近道となります。

まとめ

COC(チェンジオブコントロール)条項は、M&Aの成否を左右する重要な契約要素です。売り手・買い手・取引先それぞれの立場でリスクとメリットを正しく理解し、適切に対応することが求められます。本記事の要点を整理すると以下の通りです。

  1. COC条項の定義と役割を理解する
  2. 資本拘束条項との違いを把握する
  3. 具体的な契約文例を確認する
  4. メリットとデメリットを整理する
  5. 実務での対応策を検討する

COC条項を正しく理解し、事前にリスクを把握することで、M&Aを円滑に進めることができます。詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。

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