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M&Aで相手と連絡が取れない…?交渉中の“音信不通”トラブルとその対処法

「M&A交渉中だったのに、突然相手と連絡が取れなくなった…」
そんな不安や疑問を感じていませんか?

本記事では、M&Aの現場でよく起きる“音信不通”トラブルの実態と、適切な対応策について、実例を交えながらわかりやすく解説します。

■本記事を読むと得られること

  1. 交渉相手が音信不通になる理由がわかる
  2. トラブル時の対処法と見切りの基準が学べる
  3. M&A交渉を円滑に進める信頼構築のコツがつかめる

■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上、累計200件超の案件に携わってきた実務家であり、中小企業庁登録のM&A支援機関として活動しています。

この記事を読めば、音信不通リスクに振り回されず、誠実で前向きな交渉を進めるための具体的な知識と判断力が身につきます。

わずか3分で読めますので、ぜひ最後までお付き合いください。

1.M&A交渉で起こる「音信不通」の現実

なぜ急に連絡が取れなくなるのか?

M&A交渉が順調に進んでいたにもかかわらず、突然相手と連絡が取れなくなるというケースは、実は少なくありません。特に初期段階や基本合意前のフェーズにおいては、相手の関心が薄れたり、他案件に流れたりすることで、音信不通になるケースが見られます。

理由のひとつとして、交渉における温度差や、意図しない心理的なギャップが挙げられます。買手にとっては複数案件を並行検討するのが通常であり、売手とのやりとりが「優先度が下がった」と感じられれば、優先順位の低下が音信不通という形で表面化します。

また、M&Aは多くの人が関与するプロセスであるため、担当者の異動・退職・病気といった突発的な事情が要因となることもあります。とくに中小企業においては、オーナー1人が意思決定も実務も担っていることが多く、個人的な事情が直接交渉の進捗に影響を及ぼします。

さらに、秘密保持契約(NDA)締結後に詳細情報を得て初めて「想定と違った」と感じる買手も存在します。このような場合、「断るのが気まずい」「時間がない」といった理由で、連絡を絶つという不誠実な対応に至ってしまうこともあるのです。

2021年に中小企業庁が発表した『中小M&A実態調査報告書』によると、M&Aにおけるトラブル要因として「相手の対応遅延や音信不通」は約18.4%の売手・買手が経験していると回答しています。これは決して珍しい現象ではなく、多くの現場で見られる課題であることがわかります。

このように、音信不通には必ずしも悪意や意図的なものばかりではなく、さまざまな背景が存在します。しかし、交渉相手にとっては大きな不信感の原因となり、結果としてその後のM&Aの進行に悪影響を及ぼすことは間違いありません。

仲介の現場で実際に起きていること

仲介の立場としてM&Aを支援していると、「急に相手と連絡が取れない」という相談を受けることは決して珍しくありません。とくに買手からの反応が突然止まるパターンが多く、NDA締結後に資料を送っても連絡が来ない、面談日程調整の段階で既読スルーされるといった事例が後を絶ちません。

例えば、ある製造業の譲渡案件では、買手候補の1社が初回面談では非常に前向きな姿勢を見せ、NDAを締結したうえで財務情報や事業計画を開示しました。しかし、その後1週間、2週間経っても音沙汰がなく、催促しても一切の返信がないまま連絡が途絶えました。結果として、売手側は他の買手に切り替える判断を強いられました。

また、売手側が音信不通となるケースもあります。あるIT企業の案件では、基本合意直前まで進んでいたにもかかわらず、売手オーナーが「やはり自分で会社を続けたい」と心変わりし、連絡を絶ってしまったという事例がありました。後に分かったのは、直近で業績が急回復したことが大きな理由だったとのことです。

このように、仲介会社は売手・買手の間に立って連絡を促し、交渉が円滑に進むよう努めていますが、双方の事情までは完全にコントロールできません。むしろ、相手からの一報があるだけで交渉の印象は大きく変わります。

仲介の現場では、以下のような対応が求められます:

  • 事前に「何日連絡がなければ他社に切り替える」と売手・買手双方に周知しておく
  • 連絡が取れない場合、電話・メール・メッセンジャーなど複数のチャネルで確認する
  • あらかじめ「途中辞退の場合はその旨を必ず連絡する」というルールを明文化する

また、仲介者が一方に偏った情報を伝えず、中立の立場で調整することで、誤解や疑念を最小限に抑えることも重要です。

結果として、音信不通のリスクを完全に防ぐことは困難ですが、一定のルールづけと誠実な対応を促すことで、信頼ある交渉環境を維持することは可能です。

2.買手が音信不通になる典型的な理由とは?

初期段階で興味を失うケース

M&Aの交渉において、買手が最初の段階で急に連絡を絶つケースは少なくありません。これは、初期の情報提供を受けた段階で、買手が想定していた条件やビジネスモデルと合致しないと判断したことが主な原因です。特に、ノンネーム情報だけで「面白そうだ」と感じても、詳細資料を確認して現実とのギャップに気づくと、一気に関心が薄れてしまうのです。

こうした初期の“気軽なリアクション”は、M&Aをまだ真剣に考えていない層に多く見られます。中小企業庁の『中小M&A実態調査(2021年)』によれば、M&Aの検討段階で「思ったより条件が合わなかった」「時間的余裕がなくなった」として撤退した事業者が全体の23.6%に上るとされています。

たとえば、ある飲食業の売却案件では、10社以上の買手候補にノンネーム情報を提供したところ、6社から「関心あり」の返信を受けました。しかし実際にNDA締結後、IM(企業概要書)を送ったところ、4社は無言のまま連絡が途絶え、2社も「条件が合わない」とメール一本で交渉を打ち切ったのです。

こうした状況は、売手側にとって精神的にも時間的にもダメージが大きく、期待を抱いたぶんだけ落胆も大きくなります。ですが、これらは「初期の温度差」が原因であり、売手としては「ノンネーム段階の反応に過度な期待をしない」という割り切りが必要です。

NDA締結後に消える心理的背景

買手がNDAを締結して以降に連絡を絶つ場合、その背景には“断ることへの心理的抵抗”があります。日本人に特有の「NOをはっきり言えない文化」に起因する部分もあり、買手は「断る理由を伝えるのが億劫」「相手に悪い印象を与えたくない」と感じてしまうのです。

また、買手が社内稟議や上層部の判断を仰がなければならない体制にある場合、情報提供を受けたものの検討が止まってしまい、結果として連絡を後回しにしている間に「忘れてしまった」「タイミングを逃した」といった事態も起こります。

心理的に「まだ返事をしていない」という罪悪感が積み重なると、時間が経てば経つほど返信がしにくくなり、ついには「無視」という選択に至るのです。この現象はビジネスメールでもよく見られる傾向ですが、M&Aのような信頼が問われる場面では大きな問題となります。

筆者の経験でも、あるIT企業のM&A交渉において、買手企業がNDAを締結したあとにIMや決算書を渡したにもかかわらず、2週間、3週間と一切返信がなく、催促メールにも反応がありませんでした。後日、同社の担当者と別件で偶然再会した際に事情を聞くと、「社内でストップがかかったが、伝えにくくてそのままにしてしまった」とのことでした。

このようなケースでは、仲介者が間に入って適度なフォローアップを行うことで、買手が連絡をしやすくなる環境を整える必要があります。また、売手側も「返信がない=悪意」と捉えるのではなく、「断りにくいだけかもしれない」という視点を持つと、無用なストレスを避けられます。

真剣度を見極めるためのポイント

買手が音信不通になるのを未然に防ぐためには、初期の段階で「真剣度」を見極めることが非常に重要です。以下のような項目を確認することで、交渉を進めるべき相手かどうかの判断材料になります。

  • 問い合わせ段階で質問の具体性があるか
  • NDA締結の際に返信スピードや文面に誠実さがあるか
  • IM送付後に具体的なコメントや質問があるか
  • 面談日時の調整に前向きであるか
  • 買収の決裁プロセスや意思決定者を明示しているか

たとえば、NDA締結までに1週間以上かかる買手や、事務的な返答のみで熱意が見えない相手は、交渉が長引くリスクが高いと言えます。逆に、質問が多く、自社の買収目的や課題を明確に語れる買手は、検討の優先順位が高いことを示しています。

筆者は、買手から「このような業種の案件を○件以上見ている」といった情報を聞けたとき、「本気で買収を検討している」と判断します。逆に、「とりあえず情報だけほしい」「先に資料を見たい」といった温度感の相手とは、あまり深入りしすぎないほうが賢明です。

また、仲介者としては、初回面談や資料送付の前に「買収検討の背景」「自社の強み」「意思決定フロー」などを丁寧にヒアリングしておくことで、売手にも安心感を与え、効率的なマッチングにつなげることができます。

結果として、買手の真剣度を早期に見極めることができれば、「音信不通リスク」を大幅に減らすことができます。無駄な時間と労力を使わず、よりよい候補にリソースを集中させることが、M&A成功の近道なのです。

3.売手が音信不通になる典型パターンとは?

並行交渉と優先順位の変化

M&Aの初期フェーズでは、売手が複数の買手候補と同時に交渉を進めているケースが一般的です。このため、売手からの連絡が滞る場合、その背景には「より条件の良い買手との交渉に集中している」という事情がある可能性が高いです。

たとえば、買手A社と条件提示まで進んでいる一方で、買手B社はまだ初回面談の段階であるとします。売手がB社との交渉に魅力を感じた場合、A社への対応が後回しになってしまうことは珍しくありません。このとき、A社からすると「急に連絡が取れなくなった」と感じる状況が生まれます。

中小企業庁の「中小M&A実態調査報告書」でも、売手側が複数交渉を並行して進める中で連絡が滞ることにより、買手との信頼関係に支障をきたす事例が多く見られると指摘されています。

実際の現場でも、あるサービス業の売却案件で、売手は3社と交渉を進めていたものの、最も評価額の高い1社との交渉に注力しすぎた結果、他の2社への連絡が1か月以上滞りました。最終的にその本命案件が破談となったものの、他の買手はすでに撤退してしまっており、チャンスを逃した形となりました。

売手としては、複数交渉を行う際に以下のような対応を心がけることで、信頼を損なわずに進めることが可能です:

  • 並行交渉中であることをあらかじめ伝える
  • 他社との検討状況やタイムラインを共有する
  • 一定期間内に必ず返答する旨を約束する

交渉の優先順位が変化すること自体は問題ではありませんが、相手に不安や不信感を与える形での沈黙は、将来的な選択肢を狭めることにもつながります。

M&A自体の撤回や心変わり

売手が音信不通になるもう一つの典型的なパターンは、「やっぱり会社を売りたくない」と考え直すケースです。これは、交渉がある程度進んだ段階でも起こり得るため、買手側にとっては非常にやっかいな事象です。

たとえば、交渉中に業績が好転し、「自分で経営を続けた方が利益が出る」と判断したり、家族や従業員との話し合いの結果、気持ちが揺らいだりするケースがあります。特にオーナー経営が中心の中小企業では、経営者本人の意志ひとつで大きく方針が変わるため、このリスクは無視できません。

ある医療系事業のM&Aでは、オーナー社長が買手との条件交渉を終え、基本合意直前まで進んでいたにもかかわらず、「やっぱりもう少しだけ自分でやってみたい」として交渉を中止した事例がありました。買手側は既に会計士や弁護士を動かしており、費用の一部が発生していたため、落胆は大きく、関係性も断絶する結果となりました。

売手としては、最初から以下のような心構えで交渉に臨むことが重要です:

  • 売却の目的を明確に言語化する
  • 家族や主要社員とも事前に合意を取っておく
  • 業績回復など外部要因にも左右されない軸を持つ

「心変わり」は人間として当然の感情ですが、M&Aは契約と信頼の積み重ねです。軽率な判断変更は、信用を失い、今後の交渉機会を狭める結果になります。

緊急事態や個人的な事情の影響

音信不通の背後には、売手にとって不可抗力とも言える緊急事態が潜んでいることもあります。たとえば、病気や事故、災害、家族の介護など、本人の意思とは関係なく交渉継続が困難になるケースです。

過去には、基本合意後のデューデリジェンス段階で売手社長が急病で入院し、連絡が取れなくなった事例がありました。買手側は突然の音信不通に困惑しましたが、後日家族から連絡があり、事情が明らかになったことで、再開まで待つという判断に至りました。

このような緊急事態に備えるためにも、M&A交渉では複数の連絡ルートや担当者の設定が重要です。以下のような備えが有効です:

  • 経営幹部や右腕となる社員に情報共有しておく
  • 仲介会社にも緊急時の連絡先を共有する
  • 家族に交渉の存在と重要性を伝えておく

個人的な事情が交渉に与える影響は大きく、M&Aという「人と人との取引」において、誠実な情報共有が信頼構築のカギになります。交渉が一時的にストップすること自体は問題ではありませんが、「なぜ止まったのか」の情報がないことこそが、大きな問題なのです。

4.交渉途中での情報管理とリスク回避策

初期段階で出すべき情報の線引き

M&A交渉においては、情報開示の範囲を段階的にコントロールすることが非常に重要です。とくに初期段階では、相手がどの程度真剣に検討しているのか不明なため、すべての機密情報を開示してしまうと大きなリスクにつながります。

具体的には、以下のような情報は初期段階での開示を避けたほうが良いとされています:

  • 顧客リスト(取引先の社名や連絡先)
  • 従業員の氏名・給与情報
  • 製品やサービスの技術的ノウハウ
  • 契約書類や取引条件

代わりに、初期の資料では以下のような範囲に留めることが適切です:

  • 売上・利益などの概算数字(年度ベース)
  • 業種、事業モデルの概要
  • 強みやビジネス上の特徴(特許やブランド力など)
  • 店舗数・従業員数などの大まかな規模

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(2020年版)」でも、秘密保持契約(NDA)を結んでいても、開示情報は「段階的・必要最小限にとどめること」が望ましいとされています。これは、情報が第三者に渡った場合の影響を最小限に抑えるためです。

実際のケースでも、ある飲食業の譲渡案件で、初回面談前に詳細な顧客リストや取引単価まで開示してしまった結果、買手候補が音信不通になり、後にその買手が類似ビジネスを開始していたという疑いが浮上した事例がありました。

もちろんすべてが悪意とは限りませんが、買手が真剣に検討していない段階での過剰な情報開示は、無用なリスクを招く可能性があることを常に意識するべきです。M&Aは信頼が前提の交渉ですが、慎重さを失ってはいけません。

競業避止や基本合意の活用方法

M&A交渉がある程度進展し、買手候補との信頼関係がある程度築けたタイミングでは、より踏み込んだ情報開示が求められる場面も出てきます。そうした際には、法的な拘束力を持つ仕組みを併用して、情報漏洩や不正利用のリスクを回避することが有効です。

代表的な方法として、「基本合意書(LOI)」の締結があります。この基本合意書には、単なる交渉の意思表明だけでなく、以下のような項目を記載することで、リスクの抑止が可能になります:

  • 交渉の独占期間(エクスクルーシビティ)
  • 開示情報の使用目的限定
  • 競業避止義務(一定期間・一定地域で類似事業を行わない)
  • 秘密保持義務の再確認

競業避止条項(Non-Compete Clause)は特に重要で、買収を前提として入手した情報を、もし買収が破談になった場合に別の目的で使われることを防ぎます。ただし、あまりに過度な競業避止を課すと、買手が交渉を敬遠する原因にもなるため、「対象業種」「期間」「地域」を明確にして、バランスの取れた設定にすることが大切です。

また、買収監査(デューデリジェンス)前にこれらの取り決めが明文化されていることで、買手も安心して検討でき、交渉のスピードも上がります。交渉が一方通行にならず、双方にとってフェアな環境をつくることが、成約に向けた大きな一歩となります。

たとえば、あるIT系企業の売却では、基本合意の前段階で競業避止条項を設けたところ、買手側から「そこまでされると柔軟な検討ができない」と反発がありました。そこで、対象となる競業範囲を限定的な記載に修正し、再度合意を得た結果、交渉が円滑に進行しました。

このように、情報開示とリスク回避のバランスをうまくとるためには、書面の内容だけでなく、相手との信頼関係の構築が不可欠です。形式だけ整えても、実際の運用で不信感を持たれてしまえば意味がありません。

M&Aはスピードと信頼が両輪です。開示と保護の仕組みを整えることで、安心して本音の交渉ができる環境をつくりましょう。

5.音信不通時に取るべきアクション

一定期間で切り替える判断基準

M&A交渉中に相手と連絡が取れなくなった場合、最も重要なのは「待ちすぎないこと」です。明確な判断基準を設けないまま長期間待ち続けてしまうと、時間的損失が大きくなり、他のチャンスを逃してしまう可能性があります。

一般的に、相手からの連絡が以下の期間を超えてない場合は、注意信号と捉えるべきです:

  • 初回面談の打診後:3営業日以内に返信がない
  • 資料送付後:1週間以上リアクションがない
  • 面談後のフォロー:10日以上連絡が取れない

中小企業庁の「中小M&A推進計画」でも、案件化から成約までの平均期間は「6か月〜1年」とされており、交渉の停滞は時間コストに直結します。数週間単位で進捗が止まる場合は、別の買手に乗り換える判断も重要です。

実際の現場でも、買手からの質問に対し資料を送ったものの、その後2週間音沙汰がなかったケースで、「こちらは本気で待っていたのに、買手は他案件に乗り換えていた」という事例は多数あります。

売手としては、「3営業日以上反応がなければ一度確認の連絡を入れる」「10日経っても連絡がない場合は、案件検討から除外する」というような社内基準を設けておくと判断に迷わず対応できます。

また、仲介会社を通じている場合は、仲介者に状況確認を依頼し、以下のような対応を検討すべきです:

  1. 1回目のリマインドメール(送信から3営業日後)
  2. 2回目の電話確認(7営業日後)
  3. 3回目の確認依頼と合わせて他候補へのアプローチ検討(10営業日後)

交渉において大切なのは、熱があるうちに次に進むことです。「連絡が来るまで待とう」と思っているうちに、相手も気まずくなって連絡を断ち切ってしまうという“負のループ”が生まれることもあります。

音信不通は、信頼関係が崩れたサインとも取れます。明確な基準を設けることで、冷静に判断し、時間を無駄にしない戦略的対応が可能になります。

他の候補者探索への移行方法

一定期間連絡が取れない相手に固執せず、新たな買手候補を探すことが、次のチャンスをつかむ最も実践的な対処法です。M&A交渉は「縁とタイミング」がすべてと言っても過言ではありません。

買手候補の探索は以下の手段で効率化できます:

  • 仲介会社に新規リストアップを依頼する
  • 以前反応が良かったが条件面で折り合わなかった相手に再提案
  • 事業引継ぎ支援センターや金融機関に紹介依頼を行う
  • 業界内で協業関係にある企業に直接声をかける

また、買手候補を見極める際には、過去に音信不通になったケースを教訓に、「検討スピード」「返答の誠実さ」「質問の質や具体性」などを基準にすると、再び同じミスを繰り返さずに済みます。

たとえば、以前に基本合意直前で交渉が流れたある物流会社の案件では、条件提示後に3週間連絡がなかった買手を切り、事業承継支援機関の紹介に切り替えたところ、1か月以内に別の買手と基本合意に至りました。

売手の立場で注意したいのは、「再提案=妥協ではない」ということです。一度断った相手でも、交渉条件やタイミングが変われば良いマッチングにつながることもあります。

また、複数の買手候補に同時にアプローチすることで、交渉が止まった際にもすぐに代替先に切り替えることができます。これにより、1社に依存せずに柔軟な交渉を進められるのです。

以下のような買手候補管理リストを活用すると、見直しや進捗把握がしやすくなります:

買手候補社名 ステータス 最終連絡日 対応予定
ABC株式会社 資料送付済 2024/6/25 フォローアップ中
XYZホールディングス 基本合意候補 2024/7/03 面談調整中
DEF商事 音信不通 2024/6/10 今週中に打ち切り判断

新しい候補との出会いを柔軟に受け入れることが、結果的により良い条件での成約につながるケースも多々あります。音信不通を恐れるのではなく、次の行動に移るための“合図”と捉える視点が重要です。

6.信頼を築くM&Aの進め方

情報共有の透明性とタイミング

M&A交渉では、「相手にとって情報がどこまで見えているか」という透明性が、信頼構築のカギになります。買手や売手が相手の意図や進捗を正確に把握できない状態が続くと、疑心暗鬼や誤解を招き、音信不通や交渉破綻の引き金となることがあります。

たとえば、売手が複数の買手候補と交渉している場合、その事実を伏せて一社のみと交渉しているように見せると、買手側が「誠意が感じられない」と感じ、交渉から撤退することもあります。一方で、正直に「他社とも並行して交渉していますが、御社にも大きな期待をしています」と伝えることで、むしろ信頼されることもあります。

情報共有で特に意識したいのは、以下の2点です:

  • 相手の知りたいことを先回りして提示する
  • 自社の状況や判断プロセスを具体的に説明する

たとえば、買手が「なぜこのタイミングで売却を検討しているのか」を知りたい場合、「経営者の引退時期が近づいている」「最近の業績推移が安定しているうちに譲渡したい」など、背景情報を率直に伝えることで、相手は安心して検討を進めることができます。

また、情報提供のタイミングも重要です。資料を求められてから数日以上かかると、「本当に前向きなのか?」という不信感につながります。中小企業庁の『中小M&A実態調査』(令和3年)によれば、「情報の開示スピードが交渉の進捗を大きく左右した」と回答した仲介者は全体の47%に達しています。

筆者が関与したある製造業の案件では、売手が「必要資料を翌日中に送る」と約束し、その通りに提出したことで、買手の信頼が一気に高まり、通常2〜3週間かかる意思決定が数日で進んだケースもありました。これは、タイミングと透明性がセットで効いた好例といえます。

逆に、提出物が遅れたり、書類に整合性がなかったりすると、それだけで相手の温度が一気に下がる可能性があるため、「スピードと正確さ」はセットで意識する必要があります。

誠実なコミュニケーションの重要性

M&Aは単なる売買ではなく、信頼と誠実さの積み重ねによって成り立つプロセスです。どれだけ条件が整っていても、「この人となら一緒にやっていける」「この会社なら自分の事業を託せる」と思ってもらえなければ、最終的な合意には至りません。

特に中小企業のM&Aでは、オーナー社長の人柄や価値観が大きな判断材料になります。そのため、コミュニケーションにおいては形式的なやりとりだけでなく、以下のような「人としての誠実さ」が求められます:

  • 聞かれたことには素直に答える
  • 不明な点があれば調べてから後日回答する
  • 自社にとって不利な情報も隠さず伝える

たとえば、筆者が過去に支援したIT企業の売却案件では、売手が「この部分はまだ整っていないのが正直なところです」と率直に伝えたところ、買手は逆にその誠実さに好感を持ち、交渉がスムーズに進行しました。隠そうとした情報が後から発覚した場合、その損失は計り知れません。

また、誠実な対応とは、言葉だけでなく「行動の一貫性」にも表れます。言ったことを守る、約束の期日を守る、対応スピードを一定に保つといった小さな積み重ねが、相手からの評価につながります。

コミュニケーションにおいては、以下のような姿勢が重要です:

  1. 曖昧な表現を避けて、端的に伝える
  2. 相手の話をしっかりと聞き、否定せず受け止める
  3. 論点がズレた場合には丁寧に軌道修正する

メールや資料など「記録に残る形」でやりとりを進めることも重要です。感情的なやり取りを避け、論点がブレないように冷静に進行させることが、交渉の質を高めるコツです。

M&Aの成功は「数字」だけではなく、「信頼」によって支えられています。誠実なコミュニケーションこそが、音信不通などのトラブルを未然に防ぎ、最終的な合意への道を切り開く力になるのです。

まとめ

M&A交渉における音信不通は、相手の事情や信頼関係の欠如が原因となって発生することが多くあります。本記事では、実際に起こりうるケースとその対処法、そして信頼を築くための具体的なポイントを解説しました。

  1. 音信不通には段階的な理由がある
  2. 初期対応と見切りが重要である
  3. 誠実な情報共有が信頼を生む
  4. 交渉ルールの整備でリスクを減らす
  5. 切り替えと再探索も前向きな選択

トラブルを未然に防ぐためには、冷静な判断と実務的な備えが不可欠です。相手と誠実に向き合う姿勢が、結果として円滑なM&Aの成立につながります。詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。

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