M&Aは崇高な営みのはずだった――だからこそ、この業界に疑問を抱いています
「M&A仲介って本当に信じていいの?」「失敗しないパートナーの選び方がわからない…」
そんな不安や疑問を感じている方へ。
本記事では、M&Aの本来あるべき姿と、今の仲介業界が抱える問題点を明らかにしながら、
信頼できるアドバイザーの見極め方を、専門家の視点で丁寧に解説します。
■本記事を読むと得られること
- M&A業界に不信感が広がる根本原因がわかる
- 理想的なM&Aの本質と意味を理解できる
- 信頼できるM&Aパートナーの見極め方が学べる
■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上、200件超の実績を持つ中小企業庁登録支援機関であり、
誠実性と専門性を大切に、経営者の未来に寄り添う支援を続けています。
読み終える頃には、数字だけに振り回されないM&Aの本質が見え、
あなた自身の大切な会社を託すべき相手を見極める“目”が養われているはずです。
3分で読めますので、どうぞ最後までご覧ください。
1.M&Aに対する不信感が広がる理由とは?
仲介業界に漂う“疑念”の正体
M&Aに対して不信感を抱く経営者が年々増えています。その背景には、仲介業界全体に蔓延する「売上至上主義」や「営業ファースト」の体質があると言えるでしょう。中小企業の大切な事業承継や成長戦略の一環であるM&Aにおいて、本来重視されるべき“想い”や“相性”ではなく、「とにかく案件をまとめる」「手数料を得る」ことが優先されるケースが後を絶ちません。
実際に、M&A仲介業界では新規参入が急増しており、国の調査によれば、2021年時点で仲介会社・FAを含むM&A関連事業者数は3年間で1.7倍以上に増加しました(出典:中小企業庁「M&A支援機関登録制度に関する調査」)。この拡大には、業界内で「M&Aは儲かる」といったイメージが先行し、十分な知識や経験がないままM&A業界に参入する営業系人材が増えているという構造的な問題があります。
さらに、一部の大手仲介会社では「短期間での成約件数」や「自社の取り分」を重視するあまり、売り手企業にとって不利な条件でも押し切るような営業手法が横行しているとの指摘もあります。特に、“両手仲介”(売り手と買い手の両方から手数料を受け取る形式)においては、どちらの利益を優先するか不透明になるという利益相反のリスクも顕在化しています。
このように、M&Aの本来の価値である「企業と企業が未来を共有するパートナーシップ」という視点が軽視され、仲介業者の論理で進められることが、不信感を生み出している大きな要因なのです。
よくあるトラブルや後悔の声
実際にM&Aを経験した中小企業経営者の中には、「もっと慎重に仲介会社を選ぶべきだった」と後悔する声が多くあります。以下はよくある具体的なトラブルの一例です。
- 契約前には「買いたい企業がいます」と言われたのに、実際には紹介が1社もなかった
- 高額な着手金を支払ったものの、何も進まず途中で打ち切られた
- 成約直前に手数料の追加請求があり、想定以上のコストが発生した
- 従業員の雇用条件が十分に守られないまま成約された
- 担当者が頻繁に変わり、一貫性ある支援が得られなかった
こうした声は、中小企業庁や事業承継・引継ぎ支援センターへの相談事例としても数多く報告されており、制度的な課題としても注目されています。
また、SNSや口コミサイトなどでは、以下のような生々しい声も多く見受けられます。
事例 | 実際の声 |
---|---|
着手金を払ったが動きがない | 「3ヶ月経っても何の提案もなく、結局返金もされなかった」 |
希望しない相手との成約 | 「理念や相性が合わない相手だったが、担当者に押し切られた」 |
重要な情報が伏せられていた | 「後から知った買い手の過去の問題に驚いた」 |
このような実例を知れば知るほど、M&A仲介会社選びは一歩間違えれば取り返しのつかない結果を招くことがあるという事実に気づかされます。
繰り返しになりますが、M&Aは単なる取引ではなく、経営者の人生に関わる重大な決断です。だからこそ、そのプロセスを支える仲介会社やアドバイザーの在り方が問われているのです。業界に漂う疑念の正体は、業者側の“姿勢”と“構造”に原因があると理解した上で、信頼できる専門家との出会いが重要になります。
2.本来のM&Aとは「想い」と「未来」をつなぐ営み
事業承継と成長支援の真の意義
M&Aというと、「会社を売る=お金のため」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。しかし、本来のM&Aは単なる売買ではなく、「会社の未来を誰に託すか」「従業員の雇用やお客様との信頼をどう守るか」という、経営者にとっての大きな決断です。事業承継がその最たるものであり、M&Aは企業の存続と地域経済の持続に不可欠な手段でもあります。
日本では、少子高齢化と後継者不足が深刻化しています。中小企業庁の「2023年版 中小企業白書」によると、60歳以上の経営者のうち半数以上が「後継者未定」と回答しており、今後10年間で127万社以上が後継者問題に直面すると予測されています。こうした中、M&Aは事業を第三者に引き継ぎ、企業の存続と雇用の維持を図る現実的かつ有効な手段として注目されています。
また、M&Aは“出口戦略”ではなく、“成長戦略”としても重要な役割を果たします。たとえば、地域で独自の技術やサービスを提供している企業が、大手企業の傘下に入ることで全国展開を実現したり、海外進出の足がかりを得たりするケースがあります。これはまさに「1+1が3にも4にもなる」シナジー(相乗効果)を生み出すM&Aの成功例といえるでしょう。
事業承継型のM&Aでは、売り手側の経営者が大切に育ててきた理念や文化が、新たな経営者にしっかりと受け継がれることが重要です。ただ単に会社を引き継ぐだけではなく、「これからもお客様に選ばれ、社員が安心して働ける会社であり続ける」ためのバトンパスこそが、理想のM&Aの在り方なのです。
このように、M&Aは事業を終わらせるための手段ではなく、次世代につなぐための「希望の選択肢」であるという本質を、まず理解することが大切です。
数字ではなく“理念”で結ばれるM&Aの形
一般的にM&Aというと、どうしても「売上高」「利益」「評価額」といった数字に目がいきがちです。しかし、実際に多くの中小企業のM&Aにおいて決め手となるのは、数字ではなく「理念の共感」や「従業員への配慮」「地域との関係性」など、目に見えない部分にあります。
買い手企業が、売り手企業のビジネスモデルや収益性を評価するのは当然ですが、「なぜこの会社を続けてきたのか」「従業員をどう思っているか」「お客様との信頼関係をどう築いてきたか」といった“想い”に共感できるかどうかは、成約の成否を大きく左右する要素です。
たとえば、ある地域密着型の製造業を営んでいた経営者が、引退を見据えてM&Aを決意した事例では、複数の買い手候補の中から「従業員の雇用を守り、地域貢献を継続してくれる企業」を優先的に選びました。その結果、地元自治体や取引先からの信頼も失うことなく、円滑な引き継ぎが実現しました。
M&Aのプロセスにおいては、こうした“定性的な要素”も極めて重要です。仲介者やアドバイザーの役割は、単に条件を調整することだけではなく、「売り手の想い」と「買い手の意図」を丁寧につなぎ、両者にとって納得感あるマッチングを実現することにあります。
そのためには、売り手企業自身も、自社の“数字”だけでなく“理念”や“ストーリー”をきちんと言語化しておく必要があります。そして、買い手企業側もまた、数字だけで判断するのではなく、「この会社の文化や価値観を自分たちが受け継げるかどうか」を真剣に見極める姿勢が求められます。
最近では、こうした「理念重視のM&A」を支援するアドバイザーも増えてきており、従業員へのヒアリングや、経営者の想いを反映した企業概要書(IM)を丁寧に作り込むなど、“心をつなぐM&A”を実践する取り組みも進んでいます。
M&Aは、単なる資本の移動や経営権の譲渡ではありません。そこには、会社を立ち上げた経営者の夢や、社員の生活、地域との信頼、社会への責任といった、数値では測れない価値が詰まっています。数字の裏にある“物語”を大切にすることこそが、本当の意味で成功するM&Aの形であり、私たちが目指すべき姿なのです。
3.なぜ仲介業界に営業主導型の構造がはびこるのか
「M&Aは儲かる仕事」という誤解
現在のM&A業界では、「M&Aは儲かるビジネス」というイメージが広がっており、それが業界の構造的な問題を生み出す原因の一つとなっています。特にM&A仲介業は成果報酬型が基本であり、1件成約するだけで数百万円から数千万円の報酬が発生します。この高額な報酬体系が「短期間で稼げる仕事」として注目され、営業職出身者を中心に多くの人が業界に参入しているのが実情です。
中小企業庁が公表している「M&A支援機関登録制度に関する調査」(2023年)によると、登録事業者の多くは新興企業や営業系ベンチャー出身者が中心であり、税理士や公認会計士といった専門家よりも、営業経験を重視した採用が主流となっています。つまり、M&Aの専門知識や実務経験がなくとも、売上さえ上げれば評価されるという営業主導型の構造が業界全体に広がっているのです。
この構造の問題点は、次のようにまとめられます。
- 営業ノルマに追われ、質より量の案件を優先しがち
- 専門的な財務・法務の知識が不足していることが多い
- 買い手・売り手双方の意向より、成約を最優先する傾向
たとえば、ある仲介会社では、入社3ヶ月でM&A未経験の若手社員に「1人3件成約」という目標が課されていたという事例があります。実際には成約に至らずとも、着手金(初期費用)を得ることが目的化されていたことが後に発覚し、トラブルとなったケースも報告されています。
このような“売上至上主義”は、M&Aの本来の目的である「想いの継承」や「持続的な成長支援」とはかけ離れており、経営者にとって大きなリスクとなる可能性があります。
営業マンと専門家の本質的な違い
M&Aを仲介するうえで、「営業マン」と「専門家」では役割も視点も大きく異なります。営業マンは「契約を取る」「数字を上げる」ことを主な成果とする一方で、専門家は「最適な相手とのマッチング」や「法務・税務リスクの回避」「経営者の想いの実現」など、長期的視野と専門的配慮をもって案件に臨みます。
以下の比較表をご覧ください。
項目 | 営業マン型仲介 | 専門家型アドバイザー |
---|---|---|
目的 | 成約・手数料の獲得 | 最適な相手との橋渡し |
知識・スキル | 営業トーク中心 | 法務・税務・財務の専門知識 |
スタンス | 押し売り的提案もある | ヒアリング重視・納得感のある提案 |
視野 | 短期的(成約がゴール) | 中長期的(統合後の成長も意識) |
報酬評価 | 件数・売上ベース | 成果と信頼ベース |
実際に、筆者が関与した案件のなかでも、最初に相談を受けた仲介会社では「この買い手ならすぐ成約できる」と安易な提案をされた売り手が、最終的に理念の合う別の企業と契約し、従業員の士気と事業の成長が大きく向上したケースがありました。このように、単に数字やスピードで動くM&Aと、想いを軸にした支援では、結果に大きな差が生まれるのです。
営業マンによるM&A提案がすべて悪いわけではありません。しかし、経験不足で本質を見極められない場合や、自社の利益を優先するスタンスであれば、売り手企業は本来の価値を損ねたり、重要な意思決定を誤るリスクにさらされます。
結論として、M&Aにおいて「営業力」よりも「専門性」と「倫理観」が問われるべきだという視点を、経営者自身が持つことが極めて重要です。誰に相談するかによって、会社の未来は大きく左右されるからこそ、数字だけでなく、寄り添う姿勢と確かな経験をもったアドバイザーを選ぶ判断力が求められています。
4.経験不足のプレーヤーが急増する理由
未経験でも売上至上主義で採用される実態
M&A業界では近年、経験がほとんどない人材が次々に仲介会社へ採用され、現場に送り出されるという状況が続いています。その背景には、業界全体に広がる「売上至上主義」の構造があります。つまり、M&Aの知識や実務経験よりも、「いかに案件を取ってくるか」「いかに成約に持ち込むか」という営業成果が最優先されているのです。
実際、仲介会社の採用ページを見ると、以下のような文言が目立ちます。
- 「未経験歓迎」
- 「前職営業であれば年収1,000万円も可能」
- 「インセンティブ重視の成果報酬型」
これらはまさに、売上を第一とした採用方針を象徴しています。M&Aという専門性が求められる分野でありながら、資格も経験も問わず、ノルマ達成や数字の積み上げだけが評価対象となる環境がつくられているのです。
中小企業庁が2023年に実施した「M&A支援機関登録制度の実態調査」によれば、M&A支援機関に登録されている事業者のうち、過去3年間で実際に5件以上のM&Aを支援した実績を持つ担当者は、全体のわずか38.2%にとどまりました。つまり、多くの仲介担当者が「片手で数えるほどしか実務経験がないまま現場に出ている」ことが明らかになっています。
このような状況のなか、経営者が信頼して相談した相手が、実は数ヶ月前まで別業界で営業をしていた新人だったということも珍しくありません。
プロフェッショナル不在のリスク
M&Aは、事業承継・雇用維持・資産評価・税務・法務など、多岐にわたる知識が求められる専門分野です。にもかかわらず、営業成績だけで評価される人材が担当することで、以下のような深刻な問題が発生するリスクがあります。
想定されるリスク | 影響 |
---|---|
財務分析の甘さ | 企業価値が過小評価される/売却価格が安くなる |
法務知識の欠如 | 契約書に不備があり、売却後にトラブルが発生 |
ヒアリング能力不足 | 買い手に経営者の想いが正確に伝わらない |
交渉スキル不足 | 本来の希望条件を引き出せない |
たとえば、ある製造業のオーナーがM&Aを決断し、仲介会社に依頼した事例では、担当者が事業内容を正しく理解できておらず、企業概要書(IM)の内容に事実誤認が複数含まれていたため、買い手候補が次々と離脱。結果的に半年以上もの時間を無駄にしてしまったというケースがありました。
また、売り手が希望していた「従業員の雇用継続」を重視する条件を、担当者が買い手に伝えていなかったため、成約直前で条件の食い違いが発覚し、破談になったケースも存在します。これは担当者の“技量不足”が原因で、売却自体が台無しになってしまった典型例です。
こうしたリスクは、最終的に経営者本人や従業員、取引先、地域社会にまで波及する可能性があります。特に地方の中小企業にとって、たった1度のM&Aの失敗は取り返しのつかない損失となり得ます。
そのため、M&Aを依頼する際には「どの会社に頼むか」だけでなく、「誰が担当するのか」という点にも十分注意を払う必要があります。名の知れた大手仲介会社であっても、担当者の経験値や倫理観が低ければ、結果は大きく変わってしまうのです。
結論として、売上を重視するあまり、未経験者でも簡単に現場に出られてしまう今のM&A業界の構造には、明らかに課題があります。経営者が後悔しないM&Aを実現するためには、「経験」「専門性」「姿勢」をしっかりと見極め、真のプロフェッショナルと手を組む判断が求められています。
5.品質の低いM&Aがもたらす本当の損失とは
金額だけでなく、従業員や事業に影響が
M&Aは会社の未来を左右する大きな決断です。しかし、仲介業者やアドバイザーの質が低いと、売却金額だけでなく、従業員の雇用や企業文化、顧客関係といった“見えない資産”にも深刻な影響が及ぶことがあります。M&Aは一度実行されると元に戻すことはできません。そのため、信頼できる専門家のサポートのもと、慎重に進める必要があります。
中小企業庁の「2023年版中小企業白書」によると、M&A後の従業員離職率は、適切な引継ぎが行われた場合に比べ、そうでない場合の方が約2倍に達するというデータがあります。これは、買収後に企業文化や理念が共有されず、従業員の不安が増すことが原因です。つまり、単に「高く売れた」というだけでは、M&Aは成功とは言えないのです。
以下のような“本質的な損失”が起きることがあります。
- 従業員が買い手企業の文化に馴染めず退職
- 長年築いてきた取引先との信頼関係が崩壊
- サービスの質が下がり、顧客離れが加速
- 地域とのつながりが薄れ、評判が悪化
たとえば、ある地方の老舗食品メーカーがM&Aで大手企業に買収された事例では、買い手側が効率重視で工場ラインを自動化し、人員を大幅に削減しました。これにより従業員の離職が相次ぎ、地元メディアでも取り上げられるなど、企業イメージが一気に悪化。結果的に売上も下がり、数年後には工場が閉鎖されてしまいました。
このように、買い手企業の方針と売り手企業の理念や文化があまりにもかけ離れていると、事業そのものが崩壊するリスクすらあります。M&Aの成功には、「お金だけでは測れない価値」を守る視点が欠かせません。
失敗事例から学ぶ業者選びの重要性
M&Aの成否を分ける最大の要因の一つが「誰に相談するか」です。つまり、仲介会社やアドバイザーの選定こそが最初で最大のハードルであり、ここを間違えると、取り返しのつかない結果になりかねません。
以下に、実際によくあるM&A失敗パターンを紹介します。
失敗パターン | 起こりうるリスク |
---|---|
仲介会社の担当者が経験不足 | 買い手候補の質が低く、希望に沿わない提案が続く |
企業概要書の内容が不正確 | 買い手とのミスマッチや信頼低下を招く |
条件交渉が不十分 | 売却後に想定外の負担(債務や表明保証責任)を負う |
文化や理念のマッチングが軽視された | 従業員が混乱し、離職や生産性低下につながる |
たとえば、関東圏の介護事業者がM&Aで他県の上場企業に譲渡されたケースでは、担当仲介会社が「高値で売れる」という一点だけを強調し、理念や方針のすり合わせをほとんど行いませんでした。買収後、職員の待遇や業務方針が大きく変わり、1年以内に正社員の4割が退職。利用者との関係も悪化し、地域の信頼を失う結果となりました。
このような失敗は、経営者が正しい判断をするための材料を持っていなかったこと、つまり、アドバイザーから適切な情報とアドバイスを受けられなかったことが根本的な原因です。プロの支援とは、売却金額の交渉だけでなく、理念の共有、従業員の将来、地域との関係など、非財務的な視点を重視して初めて意味を持ちます。
結論として、M&Aの成功とは「高く売れたか」ではなく、「会社の価値を未来につなげられたか」によって判断されるべきです。そのためには、数字だけにとらわれず、企業文化や人の想いに寄り添い、丁寧にサポートしてくれる“質の高いパートナー”を見極める目が必要です。M&Aは一度きりの重要な選択であるからこそ、「誰と組むか」が未来のすべてを決めると言っても過言ではありません。
6.信頼できるM&Aパートナーを見極める7つの視点
チェックすべき資質・行動・姿勢とは
M&Aにおいて最も重要なのは、「誰に相談するか」です。どれだけ企業価値が高くても、どれだけ理念が優れていても、パートナー選びを誤ると、適正な評価を受けられなかったり、トラブルに巻き込まれたりする可能性が高まります。だからこそ、信頼できるアドバイザーかどうかを見極めるための「7つのチェックポイント」を事前に理解しておくことが大切です。
- 過去の実績(件数・業種・規模)を具体的に開示しているか
- 初回面談から親身にヒアリングしようとする姿勢があるか
- 専門的な知識(税務・法務・財務)を持っているか
- 「高く売れる」だけでなく「想いの継承」にも配慮しているか
- 契約内容や手数料体系を明瞭に説明してくれるか
- 無理なクロージング(急かし)をしてこないか
- 売却後の統合(PMI)にも視野を持っているか
これらの視点を意識することで、見た目や知名度だけに惑わされず、「本当に信頼できるM&Aパートナー」を選ぶ力が身につきます。
中小企業庁が公開している「M&A支援機関登録制度」によって、登録された支援機関は、一定の実績と透明性、報酬体系の明確化が求められています。登録機関の中には質の高い支援者もいますが、一方で「登録されているから安心」と思い込みすぎるのも危険です。登録の有無よりも、「実際にどう行動してくれるか」が何より重要です。
たとえば、筆者が支援したケースでは、売り手企業が当初依頼していた大手仲介会社が「この買い手はすぐ決まる」と一方的に提案を進めていたものの、買い手側が従業員の雇用条件に難色を示し、破談寸前に。そこで当社が介入し、別の買い手候補を提案。理念と人材方針が合致したことで、結果的に従業員のモチベーションは向上し、売却後も安定した成長を遂げました。
信頼できるアドバイザーは、「案件をまとめる」ことがゴールではなく、「経営者が後悔しないM&A」に導くことを目指しています。そのためには、表面的な対応ではなく、丁寧に寄り添う姿勢、そして一貫した信頼関係の構築が欠かせません。
「専門性」と「倫理性」の両立が鍵
M&Aの現場では、高度な専門性が必要とされる場面が数多く存在します。財務分析、バリュエーション(企業価値評価)、契約書チェック、税務上の配慮など、1つでも見落としがあると、後から大きな損失を招くリスクがあります。しかし、それだけでは足りません。もう一つ欠かせないのが「倫理性」、つまり道義的な判断力と誠実さです。
いくら専門知識が豊富でも、売り手や買い手の利益より、自社の手数料を優先するような姿勢では、信頼関係は築けません。倫理性とは、以下のような行動に表れます。
- クライアントにとって不利益な内容を隠さず説明する
- 成約しやすい相手より、理念が合う相手を優先提案する
- 売却を急がせるよりも、納得感のあるタイミングを待つ
M&Aでは一度成約してしまうと、取り返しがつかないこともあります。たとえば、表明保証(契約上の責任)に関する条項に不備があったことで、売却後に損害賠償を請求され、裁判沙汰になった例もあります。これは専門的な知識が不足していたことと、早期成約を優先した仲介者の判断が原因でした。
中小企業庁や事業承継・引継ぎ支援センターでは、こうした失敗事例を共有し、仲介業者やFAへのチェックリストの提示も進めています。今後のM&A業界では、単に“知識のある人”ではなく、“信頼できる人”が選ばれる時代になるといえるでしょう。
総じて言えるのは、M&Aパートナーに求められるのは「知識」と「人間性」の両立です。経営者が安心して任せられるのは、単なる情報提供者ではなく、自分と同じ目線で会社の未来を考えてくれる“伴走者”のような存在です。そんなパートナーと出会えることが、M&A成功の第一歩なのです。
7.アーク・パートナーズが貫く“誠実なM&A”とは
私たちが大切にしている3つの価値観
アーク・パートナーズは、M&Aを単なる「売買の手段」ではなく、「企業の想いと未来を託す営み」と考えています。その前提のもと、私たちが一貫して大切にしているのが、次の3つの価値観です。
- クライアント第一主義
- 誠実で透明な情報開示
- 長期的な信頼関係の構築
まず第一に、私たちはクライアント企業の目線に立つことを最優先としています。これは「売却価格を上げるために動く」のではなく、「経営者や社員が納得できるM&Aの形を実現すること」を意味します。特に、理念の継承や雇用の維持といった“目に見えない価値”を大切にしています。
次に、すべての過程で誠実であることを貫いています。例えば、企業価値評価においては根拠のある説明を行い、手数料体系についても事前に明確に提示しています。中小企業庁が定めるM&A支援機関登録制度に基づき、報酬・進捗・交渉経過をすべて可視化して共有し、後から「こんなはずじゃなかった」という事態が起きないよう努めています。
また、私たちは「短期的な成約」ではなく「長期的な信頼関係」を大切にしています。一度のM&Aが終わりではなく、そこから始まる新しい関係性にも寄り添いたいと考えています。たとえば、M&A後の経営アドバイスやPMI(統合プロセス)支援などにも継続的に関与し、買い手・売り手双方が納得できる未来を築くサポートをしています。
こうした姿勢は、実際の成約事例にも表れています。私たちの支援を経て成約された企業のうち、3年後も買い手企業との関係が継続して良好である割合は90%以上にのぼります。これは、金額やスピードだけでは測れない「本当に意味のあるM&A」が実現できている証だと考えています。
一緒に歩むパートナーとしての姿勢
私たちは、M&A支援者としてではなく、「経営者と同じ目線で、未来を一緒に考えるパートナーでありたい」と願っています。そのため、最初の面談から契約後の支援に至るまで、すべてのプロセスにおいて「押しつけない」「急がせない」「隠さない」というスタンスを徹底しています。
具体的には、次のような取り組みを行っています。
- 初回面談でのヒアリングは2時間以上。想いや悩みを丁寧にお聞きします
- 企業概要書(IM)は経営者の想いまで反映したオーダーメイド
- 買い手候補は「金額重視」ではなく「理念のマッチング」を優先
- 案件化を急がず、必要であれば半年以上の準備期間を取ることも
一方で、専門家としての責任も明確に果たします。たとえば、経営者の希望が市場価格から大きく乖離している場合は、厳しくとも現実的なアドバイスを正直に伝えます。信頼とは、「耳障りの良いことだけを言うこと」ではなく、「本当に必要なことを誠実に伝えること」だと私たちは考えているからです。
ある地方の建設業の案件では、社長が「地元に雇用を残したい」という強い想いを持っていました。私たちはその意志をIMと提案書に明記し、理念共感型の買い手候補に絞って打診。結果、譲渡価格はやや抑えられましたが、従業員の8割が引き継がれ、地域の信頼も維持されました。これは、私たちの「売り手にとって本当に幸せな未来」を第一に考えた判断による成果でした。
結論として、アーク・パートナーズは「信頼」「誠実」「未来志向」の3本柱を持ち、経営者の最も大切な決断に真正面から向き合う存在であり続けたいと考えています。M&Aは人生の集大成でもある大切な選択。そのパートナーには、「安心して任せられるかどうか」が何よりも重要なのです。
8.後悔しないためのアクション:まずは正しい相談先を
仲介会社に任せる前に知っておきたいこと
M&Aを検討する際、最初に行うべきは「信頼できる相談先を見極めること」です。どの仲介会社に任せるかで、売却の成否やその後の人生が大きく変わるといっても過言ではありません。焦って契約を結んでしまうと、思っていた条件と違ったり、想いに寄り添ってもらえなかったりと、後悔する可能性が高くなります。
中小企業庁が2021年に創設した「M&A支援機関登録制度」では、登録されている仲介会社やFAは、手数料体系や契約条件の明示、利益相反の防止に努めることが求められています。これにより、最低限の信頼性を担保する仕組みが整えられつつありますが、「登録されているから大丈夫」と思い込むのは危険です。
実際にトラブルが多いのは、以下のようなケースです。
- 担当者が業界未経験で知識不足
- 買い手がいると強調されて契約を急がされる
- 契約書に「テール条項」など不利な条件が含まれている
- 成功報酬に最低報酬額(下限)があり、成果と関係なく費用がかかる
このような状況に陥らないためには、仲介会社と契約を結ぶ前に、次のような確認を行うことが重要です。
確認ポイント | 確認すべき内容 |
---|---|
実績の開示 | 過去の成約件数や業種、規模感を具体的に示してくれるか |
手数料の透明性 | 着手金・中間報酬・成功報酬の金額と計算方法が明確か |
ヒアリングの姿勢 | 経営者の希望や悩みをじっくり聞いてくれるか |
契約書の説明 | 専門用語をかみ砕いて説明し、デメリットも伝えてくれるか |
たとえば、ある製造業のオーナーは、有名な仲介会社に相談し、「買い手がすぐ見つかる」と言われたため即契約。しかし、3か月経っても何の提案もなく、問い合わせても返事が遅く、着手金だけ取られて何も進まなかったという経験を語っています。これは、契約前に「実績」や「担当者の経歴」を確認していなかったことが原因でした。
大切なのは、仲介会社の「ブランド」や「営業トーク」に惑わされず、自分の目と耳で確認することです。疑問があれば何でも聞き、不安があれば契約を急がない。その冷静な判断が、納得のいくM&Aへの第一歩になります。
無料相談やセカンドオピニオンの活用法
初めてのM&Aで失敗しないためには、「複数の専門家に相談すること」が非常に有効です。特に、最初の段階では契約を急がず、無料相談やセカンドオピニオンを積極的に活用しましょう。
現在、多くのM&Aアドバイザーや士業は「初回無料相談」を実施しています。これは気軽に相談できるチャンスであり、以下のような内容を聞くことができます。
- 自社がM&Aの対象になり得るかどうか
- 事業のどこに価値があると考えられるか
- 想定される買い手像や相場感
- どんな手順で進めるのがよいか
また、既に他の仲介会社と話を進めている場合でも、第三者の目線で助言をもらう「セカンドオピニオン」は非常に有効です。医療の世界と同様、M&Aでも別の専門家に意見を求めることで、リスクや盲点が明らかになることがあります。
特に次のような不安がある場合は、セカンドオピニオンを検討すべきです。
- 「買い手がいる」と言われたが詳細が開示されない
- 契約内容に違和感がある(テール条項や最低報酬など)
- 事業の価値に関する説明が抽象的
- 一方的にスケジュールを急かされている
アーク・パートナーズでも、他社でM&Aを検討中の方や、すでに動き出している方に向けて、無料相談やセカンドオピニオンの機会を提供しています。これは「案件を取るため」ではなく、「正しい判断をしていただくため」に行っています。なぜなら、後悔のないM&Aには、冷静で客観的な助言が欠かせないからです。
結論として、M&Aで後悔しないためには、「いきなり契約しない」「複数の専門家に意見を聞く」「小さな違和感を無視しない」という3つの行動が重要です。誰に相談し、どんな準備をしてスタートするかによって、M&Aの未来は大きく変わります。その第一歩として、信頼できる専門家との対話を始めることから、すべてが始まるのです。
まとめ
M&Aは本来、企業の未来や想いをつなぐ崇高な営みであるべきです。しかし現実には、営業主導・経験不足・倫理観の欠如といった問題が業界に根深く存在しています。本記事を通じて、正しいパートナー選びの重要性や、理念に基づいたM&Aの本質をご理解いただけたのではないでしょうか。
- 営業主導が信頼を損なう
- 理念なきM&Aは失敗する
- 信頼できる人が鍵を握る
あなたの大切な会社と従業員、そして未来を託すために、まずは正しい相談先を見極めることが重要です。詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。
