M&A仲介の着手金って本当に必要?支払う前に知るべき仕組みと選び方のポイント
「M&A仲介会社から着手金を請求されたけど、本当に払って大丈夫なの?」「成功報酬だけの会社との違いは?」「成果が出なかったら損するのでは…?」そんな不安を抱えていませんか?
本記事では、M&A仲介の実務を熟知した専門家が、着手金に関する疑問やトラブルを回避するための知識を丁寧に解説します。
■本記事を読むと得られること
- 着手金の意味と支払う際のリスクがわかる
- 着手金の有無による仲介会社の違いが理解できる
- 信頼できる仲介会社の見極めポイントがつかめる
■本記事の信頼性
筆者はM&Aアドバイザー歴10年以上。累計200件以上のM&A案件に携わり、中小企業庁登録のM&A支援機関として、誠実かつ専門的な支援を提供しています。
この記事を読むことで、着手金の落とし穴を回避し、納得のいくM&Aを実現するための“目利き力”と“判断基準”が身につきます。
わずか3分で読める内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
1. 着手金とは?M&A仲介における基本を解説
着手金とは、M&Aを仲介する会社(以下、仲介会社)と契約を結ぶ際に、売主や買主が最初に支払うお金のことです。これは、M&Aの成功・不成功にかかわらず支払う必要がある「固定費」であり、多くの場合は数十万円から百万円以上に設定されていることもあります。
この着手金は、仲介会社が具体的な業務に取りかかる前の「初期費用」としての意味を持ちます。たとえば、売却企業の調査・分析、資料作成、買い手候補のリストアップなどにかかる人件費や工数をまかなう目的があります。
また、仲介会社の業界では明確な報酬体系のルールが法的に定められておらず、手数料や着手金の設定は各社の方針に任されています。そのため、着手金を徴収する会社もあれば、完全成功報酬制で着手金を取らない会社もあります。
着手金の位置づけと主な役割
着手金の役割は大きく分けて以下の3つがあります。
- 初期コストの補填:企業価値評価や資料作成などにかかる手間賃として。
- 顧客の本気度の確認:無料だと「とりあえず相談」が増え、途中でやめる人も多くなるため。
- 仲介会社の業務モチベーション確保:費用をもらうことで、業務開始の責任を明確にする。
このように、着手金は仲介会社にとって「リスク回避」と「業務の正当な対価」という2つの意味を持ちます。
国や信頼できる機関の情報に見る着手金の実態
中小企業庁のM&A支援機関登録制度では、仲介会社の報酬体系に関する明確な制限は設けられていませんが、2023年版中小企業白書では、「仲介会社とのトラブルの一因として報酬体系の不透明さ」が挙げられています。
また、事業承継・引継ぎ支援センター(経済産業省支援機関)が推進するM&Aでも、報酬形態は仲介会社によって異なることを明示しており、手数料の内訳をよく確認するよう注意喚起しています。
実際にあった着手金に関する事例
たとえば、ある中小企業の経営者がM&A仲介会社に相談し、着手金として50万円を支払いました。ところが、その後3ヶ月経っても買い手候補の紹介がなく、進捗報告もほとんどない状態が続きました。経営者が不信感を抱いて契約を解除しようとしたところ、「着手金は返還不可」と契約に書かれていたため、返金を求めることもできませんでした。
このケースでは、仲介会社の実務対応の不備に加え、「契約内容をよく確認しなかったこと」が大きな落とし穴となりました。着手金は返還義務がないケースが多いため、支払う前に十分な説明と確認が不可欠です。
よくある契約書における着手金条項の例
契約条項 | 内容 |
---|---|
着手金の金額 | 一律50万円(税別) |
支払時期 | 仲介契約締結後7日以内 |
返金可否 | 業務の進捗にかかわらず返金不可 |
このような契約内容であれば、仮に仲介会社が動かなくても着手金は戻ってきません。だからこそ、契約前に「実際にどのような業務を、どのタイミングで行うのか」を明確に確認する必要があります。
まとめ
着手金は、M&A仲介における「最初の関門」とも言える費用です。仲介会社にとっては業務開始の証であり、顧客にとっては“本当に信頼できる相手かどうか”を見極める判断材料にもなります。
ただし、支払った後に業務が進まないリスクや、返金されないという現実もあるため、金額の大小にかかわらず、慎重に契約内容を確認し、納得した上で支払うことが大切です。
また、着手金の有無だけで仲介会社を評価するのではなく、その会社の対応力、実績、説明の丁寧さといった「総合的な信頼感」で選ぶことが、後悔のないM&Aの第一歩になるでしょう。
2. なぜ仲介会社は着手金を取るのか?その主張と背景
M&A仲介会社が着手金を請求するのは、単なる営業戦略ではなく、自社の業務運営や顧客対応の質を維持するための現実的な理由があるからです。主な理由は以下の4点に集約されます。
1. 売主・買主の「本気度」を見極めるため
まず第一に挙げられるのが、売主や買主の「本気度」を確認するためという理由です。M&Aは長期間にわたる交渉と手続きが必要となり、途中で方針変更や気持ちのブレがあると、仲介会社がかけた労力や時間がすべて無駄になってしまいます。
着手金を請求することで、「この案件に本気で取り組む意思があるか」を確認し、無責任な問い合わせや冷やかし的な依頼を事前に防ぐ効果があるとされています。
- 無料なら気軽に相談できてしまい、途中で辞退する人が増える
- 着手金を払うことで、当事者に覚悟と責任感が生まれる
この考え方は特に売主に対して強調されることが多く、仲介会社にとっては「信頼できる売主とだけ業務を進めたい」という切実な背景があります。
2. 仲介会社側の初期コスト(人件費・資料作成)をカバーするため
2つ目の理由は、仲介会社が最初に必要とする実費の補填です。M&A仲介では、以下のような業務が契約締結直後から発生します。
- 売主企業の事業・財務内容のヒアリングと分析
- 企業価値評価レポート(バリュエーション)の作成
- ノンネームシートや情報開示資料の作成
- 買手候補のロングリスト作成と初期打診活動
これらの業務には、少なくとも10時間~30時間以上の作業時間がかかり、実務経験のあるコンサルタントが対応するため、相応のコストが発生します。
そのため、着手金を請求することは「業務に対する最低限の労務費」として位置づけられており、全くの無料で引き受けるのは、現実的には難しいという仲介会社の本音もあります。
3. 過度な「成功報酬依存」を避けるリスク分散
仲介会社の多くは、最終的にM&Aが成立した時点で成功報酬を受け取りますが、この成功報酬だけに依存していると、次のような問題が起こりやすくなります。
- 売主の条件に妥協を強いる(早く成約させようとする)
- 本当にマッチする買手よりも、成約しやすい相手を優先して紹介する
- 売主と買主の対立を無理にまとめてしまう
これらはすべて「成功報酬がもらえなければ赤字になる」というプレッシャーから生まれる行動です。したがって、一定の着手金があることで、仲介会社が中立性や冷静な判断を保ちやすくなるという見方もあります。
4. 仲介会社の「業務モチベーション維持」のため
最後に、仲介会社のモチベーション維持のためという意見もあります。着手金がない場合、「どれだけ頑張っても成果が出なければ収益ゼロ」となるため、非効率案件や難易度が高い案件を後回しにする心理が働きがちです。
着手金をいただいていれば、たとえ途中で難航しても、「きちんと契約に基づく対価を得ているからこそ最後まで責任を持って対応しよう」という気持ちになりやすく、業務クオリティの安定化にもつながります。
着手金の考え方をまとめた比較表
着手金の有無 | 売主・買主への影響 | 仲介会社への影響 |
---|---|---|
あり | 本気度が高くなり、途中辞退が減る | 業務の質が安定し、リスク分散が可能 |
なし | 無料相談が増えるが、成約まで至らないケースも増える | 収益が不安定になり、売却強要のリスクも |
実際に着手金を請求する仲介会社の見解
実務上、上場企業や大手M&A仲介会社の多くは、標準的に着手金制度を採用しています。たとえば、株式会社ストライクやM&Aキャピタルパートナーズなどは、業務開始前に数十万円~百万円の着手金を設定しています。
また、これらの企業は「完全成功報酬では、質の高いサービスが維持できない」という立場を取っており、着手金をいただくことで「売却戦略の立案や買手候補の選定に真剣に取り組む」姿勢を示しています。
一方で、中小規模の仲介会社や地域密着型の業者の中には、「着手金無料」で顧客を集め、成功報酬一本で運営している会社もあります。このように、着手金の考え方は仲介会社の規模や戦略によっても異なるのが実情です。
まとめ
仲介会社が着手金を取るのは、決して「儲けるため」だけではありません。売主や買主の本気度を確認し、仲介会社としても安心して業務に取り組むための「リスクヘッジ」としての意味合いが強いです。
着手金には、心理的なコミットメント効果や、仲介会社の対応力の担保といった実務的なメリットがあります。一方で、契約内容によっては返金されないリスクもあるため、事前に内容をよく理解し、納得したうえで契約することが大切です。
今後、M&Aを検討される方は、「着手金がある・ない」という表面的な違いだけで判断するのではなく、その会社がどのような姿勢で業務に取り組んでいるのか、総合的な視点で見極めていくことが重要です。
3. 着手金を取らない仲介会社の考え方と戦略とは?
M&A仲介会社の中には、契約時に着手金を請求せず、完全成功報酬型で業務を受ける会社もあります。こうした「着手金不要派」の仲介会社は、単にお金を取らないということではなく、戦略的な理由と顧客配慮の姿勢に基づいて、その方針を選択しています。
顧客目線に立った配慮から始まった着手金ゼロの姿勢
近年では、M&Aを検討する中小企業の経営者の多くが、着手金の負担に不安を感じています。「もし成約しなかったら、払ったお金は無駄になるのでは?」という心理的な抵抗が強いため、あえて着手金を取らず、ハードルを下げる方針を採用する仲介会社が増えています。
- 契約時の負担を減らし、より多くの相談を受けやすくする
- 費用のリスクをすべて仲介側が背負い、誠実さを示す
- 「途中で断られても文句は言わない」という顧客ファーストの姿勢を明示する
中小企業庁が公表する2023年版中小企業白書でも、M&A仲介業者への相談で最もネックになるのは「手数料や費用に対する不安」であるとされています。着手金を無料とすることで、こうした心理的障壁を取り除き、M&Aの裾野を広げるという社会的意義もあります。
競争環境の激化による差別化戦略
M&A業界は近年、大手企業だけでなく地域密着型や業界特化型の仲介会社が急増し、競争が激化しています。こうしたなかで、差別化戦略として「完全成功報酬制」を打ち出す会社が増加しています。
特に、以下のような中小・独立系の仲介会社は、
- 他社より相談件数を獲得したい
- 売主側の信頼を得たい
- 競合との差別化を図りたい
といった戦略目的で、あえて着手金を取らず、まずは「相談のしやすさ」や「顧客の利益を優先する姿勢」を強調する方針をとっています。
成功報酬のみでも十分に利益が見込めるという判断
一部の仲介会社は、着手金がなくてもM&Aが成約すれば高額な成功報酬を受け取ることができるため、無理に着手金を取らなくてもビジネスが成立すると判断しています。
成功報酬の相場は、一般的に以下のレーマン方式に基づきます:
譲渡金額の区分 | 手数料率(%) |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
たとえば、5億円のM&Aが成立すれば、単純計算で2,500万円の成功報酬になります。このように成功報酬の金額が大きいため、仲介会社側がリスクを背負っても、成約までたどり着けばビジネスとして十分に成り立つという考え方です。
実際の事例:着手金無料で信頼を得た仲介会社のケース
東京都内にある中堅のM&A仲介会社では、設立当初から「完全成功報酬型」を打ち出しています。理由は、創業期に資金に余裕がない中小企業に向けて、「気軽に相談できる窓口」を提供することを最優先としたからです。
この会社では、着手金は一切取らず、業務にかかるコストはすべて自社で先行投資しています。その分、買い手のネットワーク強化や成約率の向上に注力し、現在では年間30件以上の成約を実現しています。
実際にこの会社を利用した売主の声では、
- 「初期費用ゼロなので気軽に相談できた」
- 「誠実に動いてくれる姿勢に信頼が持てた」
- 「途中経過もまめに報告してくれて安心だった」
など、着手金がないことによる不安よりも、「信頼して任せられること」に価値を感じている様子が見て取れます。
まとめ
着手金を取らない仲介会社は、決して手抜きの業者ではありません。むしろ、「顧客にリスクを負わせたくない」「気軽にM&Aを相談してほしい」という強い想いと、差別化のための戦略的な意図があります。
成功報酬だけでもビジネスが成り立つという判断、競争激化によるポジショニングの明確化、さらには中小企業の支援という社会的使命感を持って活動する仲介会社も増えてきています。
ただし、着手金が無料だからといって無条件に安心できるわけではありません。報酬体系全体をしっかり比較し、信頼できる担当者がいるかどうか、報告体制や実績などを総合的に判断することが重要です。
4. 着手金の「ある・なし」で何が変わる?メリットとリスクの比較
M&Aにおける着手金の有無は、ただの費用の違いではありません。仲介会社の姿勢、売主・買主との関係性、成約のプロセスに大きな影響を与える重要な要素です。着手金がある場合とない場合では、それぞれに異なるメリットとリスクが存在します。
着手金がある場合の主なメリットとリスク
着手金を設定する仲介会社は、以下のような効果を期待しています。
- 売主・買主の「本気度」が高くなる
- 仲介会社が初期からリソースを集中しやすくなる
- 業務の責任感が明確になり、スケジュールが進みやすい
一方で、着手金のリスクとして以下の点が挙げられます。
- 成果が出なくても費用が返ってこない可能性がある
- 仲介会社にとっては「もらったから仕事をする」構図になる恐れがある
- 途中で辞退するハードルが高くなる(心理的・金銭的に)
メリットとリスクを整理した表
項目 | 着手金あり | 着手金なし |
---|---|---|
契約時の負担 | 中~大(数十万円~) | 原則ゼロ |
業務の開始スピード | 早い(責任明確) | やや遅くなることも |
売主・買主の覚悟 | 明確になりやすい | 気軽に相談できる |
成約しなかった場合 | 費用が無駄になるリスク | 金銭的リスクが少ない |
仲介会社の動機 | 最初から費用を確保できる | 成功報酬を得るために全力 |
中小企業庁も着手金に関する留意を促している
中小企業庁が公開している「中小M&Aガイドライン」では、報酬体系の透明性と妥当性について特に注意喚起がされています。着手金について明確な定義や制限はないものの、売主が十分な説明を受けないまま高額な費用を支払ってしまい、結果として不満を持つケースが多いと指摘されています。
また、「事前に報酬の内訳を提示すること」「費用が発生するタイミングを明記すること」「返金条件があるかどうかの明示」などを求めており、着手金の有無にかかわらず、契約前の丁寧な説明が重要であると明記されています。
実例:着手金の有無で変わった売主の行動と結果
ある地方の製造業オーナーが、最初に相談した仲介会社で着手金50万円を支払いました。仲介会社は企業概要書を作成し、3社に打診しましたが、その後の連絡がほとんどなく、結果的に進捗が止まってしまいました。
納得できないまま契約期間が終了し、返金もなく別の仲介会社に切り替えることに。次に相談した仲介会社は着手金ゼロの完全成功報酬制で、担当者が週1回の進捗報告を徹底してくれた結果、半年後に地元の同業者に売却が成立しました。
この売主が語った感想として、
- 「着手金があった方が安心できると思っていたが、実際には不透明で不満が残った」
- 「着手金なしの会社は、不安だったが報連相がしっかりしていて信頼できた」
という声があり、金額よりも担当者の対応や進捗管理体制が大切だという学びを得たようです。
まとめ
着手金の「ある・なし」は、単なるお金の問題ではなく、売主・買主と仲介会社の関係性や動機に影響する重要なポイントです。
着手金があることで本気度が高まったり、仲介会社の動きが早くなる一方、成果が出なかった場合の損失リスクも伴います。逆に、着手金がない場合は心理的に相談しやすいものの、仲介会社によっては業務開始が遅れるケースもあります。
大切なのは、「着手金の有無だけで判断しない」ことです。報酬体系全体のバランス、契約内容の明確さ、担当者の姿勢や報告頻度などを総合的に見極め、自分にとって最適なパートナーを選ぶことが成功への第一歩になります。
5. 「着手金を払ったのに成果ゼロ?」後悔しないためのチェック項目
M&A仲介会社と契約する際に、最初に支払う「着手金」。しかし、支払ったものの成果が出ず、結果的にお金だけが消えてしまったという声も少なくありません。こうした後悔を防ぐためには、契約前にしっかりと確認しておくべきポイントがいくつかあります。ここでは、支払い前に必ず押さえておきたい5つのチェック項目をご紹介します。
1. 着手金は返金されるかどうか
もっとも重要な確認事項の一つが「返金の有無」です。着手金は通常、「業務の着手に対する対価」として位置づけられ、途中で成約しなかった場合でも基本的には返金されません。
ただし、一部の仲介会社では以下のような返金条件が設定されている場合もあります。
- 仲介会社の重大な過失が認められた場合は一部返金
- 着手金の一部を成功報酬から控除する仕組み
- 明確に「業務未実施なら返金」と契約書に記載されているケース
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」でも、報酬の透明性と説明責任の徹底が求められており、着手金の返金可否や条件が曖昧な契約はトラブルの原因になると注意喚起されています。2023年版中小企業白書もあわせて確認しておくとよいでしょう。
2. 業務の内容と進め方が明記されているか
着手金を支払うということは、「仲介会社が何らかの業務を始める」ことを意味します。では、その業務内容とは何か?これが不明確なままでは、後になって「動いてもらえなかった」と感じることになりかねません。
契約書の中に、以下のような文言がしっかり記載されているかをチェックしましょう。
- 企業概要書(IM)の作成有無と納期
- 買手候補への打診数・選定方法
- 打診後の報告・対応スケジュール
口頭では「やります」と言っていても、書面に残っていなければ証拠にはなりません。契約書や業務委託契約書の内容をじっくり確認し、可能であれば専門家(弁護士など)に目を通してもらうと安心です。
3. 定期的な進捗報告の仕組みがあるか
「着手金を払ったあと、1ヶ月以上連絡がない…」そんな相談も多く寄せられています。これを防ぐために重要なのが、「進捗報告の頻度・方法・内容」を事前に決めておくことです。
チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|
報告の頻度 | 週1回 or 月2回などのペースが契約書に明記されているか |
報告の方法 | メール/Zoom/対面などの形式が事前に決まっているか |
報告の内容 | 打診状況、買手候補の反応、次のアクションなどが含まれているか |
報告体制がしっかりしている仲介会社は、業務への責任感も高く、結果にもつながりやすい傾向があります。
4. 担当コンサルタントの経歴と実績
M&A仲介は「人」がすべてです。どれだけ会社の規模が大きくても、実際に担当してくれるコンサルタントのスキルと経験次第で、案件の進み方は大きく変わります。
契約前に、次のような質問をしておくと安心です。
- これまでに担当したM&A案件の件数と業種
- 同じ業界・規模の売却経験があるか
- 過去にトラブルが発生した際の対応方法
「担当変更が可能かどうか」も、あわせて確認しておくとリスクヘッジになります。
5. 着手金以外の費用構成の確認
「着手金は少額だったのに、最終的な手数料が驚くほど高かった」という声もあります。仲介会社によっては、着手金は安く見せておきながら、成功報酬や最低報酬額を高く設定している場合もあります。
以下のような費用構成を契約前に把握しましょう。
- 成功報酬:レーマン方式か、それ以外の固定率か
- 最低報酬額:売却額に関係なく請求される下限報酬
- 中間金の有無:成約前に追加請求される費用があるか
報酬構成の例
報酬の種類 | 金額・割合の一例 |
---|---|
着手金 | 30万円(契約時に支払い) |
中間金 | 50万円(基本合意時に支払い) |
成功報酬 | 譲渡価格の5%(成約時に支払い) |
最低報酬額 | 500万円(いくらで売れても最低この額) |
総合的なコストを把握せずに契約すると、「手元にほとんどお金が残らなかった」という事態になりかねません。
まとめ
着手金を支払うこと自体が悪いわけではありませんが、何も確認せずに支払うことは大きなリスクを伴います。契約前に以下の5つを必ずチェックしましょう。
- 返金条件が明確かどうか
- 業務内容と実行計画が具体的に書かれているか
- 進捗報告の頻度・方法が明記されているか
- 担当者の実績と対応力に信頼が持てるか
- 着手金以外の報酬構成を総合的に把握しているか
これらを確認しておけば、後悔する可能性は大きく減らせます。大切な会社の未来を託すからこそ、「着手金を払う前の一手間」を惜しまないようにしましょう。
6. 成功報酬・最低報酬額の仕組みと注意点
M&A仲介において、着手金が無料だったとしても油断はできません。実は、着手金がない代わりに「成功報酬」や「最低報酬額」が高額に設定されているケースが多く、結果としてトータルの費用が非常に高くなることがあります。ここでは、報酬体系の仕組みと注意点について詳しく解説します。
成功報酬とは何か?
成功報酬とは、M&Aが成約したタイミングで仲介会社に支払う成果報酬です。報酬額は通常「譲渡金額」に一定の割合を乗じて算出され、以下のような「レーマン方式」と呼ばれる階段式の料率が一般的に用いられています。
譲渡価格の階層 | 報酬率 |
---|---|
5億円以下の部分 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
たとえば、譲渡価格が5億円の場合、成功報酬はその5%である2,500万円が発生します。中小企業のM&Aでは譲渡価格が数千万円〜数億円となることが多いため、報酬額は数百万円から数千万円に及ぶことも珍しくありません。
最低報酬額とは何か?
最低報酬額とは、成約金額がいくらであっても、必ず支払わなければならない報酬の下限を意味します。つまり、実際の成功報酬額がこの最低報酬に届かない場合でも、「必ずこの額は支払ってください」という条件です。
多くの仲介会社が設定している最低報酬額の例は以下のとおりです。
- 500万円
- 800万円
- 1,000万円
たとえば譲渡金額が5,000万円であっても、成功報酬が250万円(5%)となるはずが、「最低報酬800万円」であれば800万円を支払う必要があります。このように、「売却はできたのに、手元にお金があまり残らない」といった事態が発生する可能性があるのです。
報酬構成比較の一例
項目 | A社 | B社 |
---|---|---|
着手金 | 無料 | 30万円 |
成功報酬率 | 5% | 5% |
最低報酬額 | 1,000万円 | 300万円 |
譲渡価格3,000万円の場合の支払額 | 1,000万円(固定) | 300万円(最低報酬) |
このように、着手金が無料であっても、最低報酬が高く設定されていれば結果として割高になることがあります。表面的な「着手金ゼロ」の言葉に惑わされず、報酬体系全体をチェックすることが重要です。
国の指針でも「報酬の内訳説明」が義務化されつつある
中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン(第2版)」では、仲介会社に対し、以下のような説明責任が求められています。
- 報酬の種類(着手金・中間金・成功報酬・最低報酬など)
- 各費用の算出方法と支払いタイミング
- 最低報酬がある場合、その設定理由と根拠
このガイドラインに準じている仲介会社であれば、契約前にきちんと説明を受けられるはずです。逆に、内容を濁したり、詳細な説明を嫌がる業者は避けた方が無難です。
実例:着手金無料に惹かれて高額報酬を支払うことになったケース
ある売主が着手金無料をうたう仲介会社に相談し、成約に至りました。譲渡価格は4,000万円。本人は「成功報酬は5%だから200万円くらいだろう」と思っていたところ、請求されたのはなんと800万円。
理由は「最低報酬額800万円」と契約書に書かれていたからです。最初に費用構成をしっかり確認していなかったため、売却後の手取りが大幅に減り、大きな後悔につながりました。
その売主は、「着手金がかからない=安心」だと思っていたが、実は「最初にお金を取らない代わりに最後にしっかり請求する仕組み」だったと気づいたと語っています。
まとめ
成功報酬や最低報酬額は、M&A仲介において非常に重要な費用項目です。着手金が無料でも、報酬体系をしっかり確認しないと、思わぬ高額費用が発生するリスクがあります。
以下の点を必ず確認しましょう。
- 成功報酬率の計算方法(レーマン方式 or 固定率)
- 最低報酬額の有無とその金額
- 報酬が譲渡価格の何%に相当するかの試算
- 契約書に明記された報酬条件の詳細
「着手金ゼロ」に飛びつく前に、「トータルでいくらかかるのか?」を見極めることが、後悔しないM&Aの第一歩です。
7. 仲介会社はどう選ぶべきか?着手金に惑わされない視点とは
M&Aを成功させるためには、信頼できる仲介会社を選ぶことが不可欠です。しかし現実には「着手金が安いから」「無料だから」という理由だけで仲介会社を選んでしまい、後悔するケースも少なくありません。重要なのは「費用」ではなく「誰に任せるか」という視点です。ここでは、着手金に惑わされず、失敗しない仲介会社の選び方を解説します。
金額より“中身”を見ることが最重要
一見安く見える仲介会社でも、成果が出ない、担当者が動かない、報告がない、などの問題があると、M&A自体が失敗してしまうリスクがあります。
中小企業庁が公表した2023年版中小企業白書によると、M&A仲介に関する相談で最も多いのは「業者の対応に不満がある」という声です。これは料金ではなく、人や体制への不満です。
つまり「安さ」で選ぶのではなく、「中身」で選ぶ必要があるということです。具体的には、以下のような視点で仲介会社を見ていくとよいでしょう。
信頼できる仲介会社の特徴
仲介会社の“質”は、以下のような要素から判断できます。
- 実績が明確に開示されている(件数、業種、平均成約期間など)
- 担当者が専任でついてくれる(途中交代がないかも確認)
- 契約前に報酬体系と業務内容を丁寧に説明してくれる
- 週1〜月2のペースで進捗報告がある(頻度が契約書に記載)
- 売主と買主の両方に公平に対応する姿勢がある
これらが整っている会社は、着手金があってもなくても、安心して任せることができます。
良い仲介会社の見極め方チェックリスト
項目 | 確認のポイント |
---|---|
実績の透明性 | ウェブサイトや資料に件数・業種などが明記されているか |
担当者の信頼性 | 経歴や担当した過去案件を具体的に説明できるか |
報酬体系の明快さ | 着手金・成功報酬・最低報酬額などが明示されているか |
報告体制 | 定期的なレポート・会議の仕組みがあるか |
説明責任 | 契約内容やリスクについて正直に話してくれるか |
実例:安さに釣られて失敗したA社と、信頼重視で成功したB社
ある製造業のA社は、着手金が無料という理由である仲介会社と契約しました。当初は順調に見えましたが、進捗報告が一切なく、気づけば3ヶ月以上放置されていたという事例があります。最終的に別の会社に切り替えましたが、時間と信用を失う結果になりました。
一方、B社は着手金30万円を提示されたものの、担当者の経験や対応の誠実さに納得して契約。定期的な報告と丁寧な交渉支援のおかげで、希望に近い条件で地元企業に譲渡することができました。
この2つの事例からもわかるように、「無料=お得」とは限らず、「高い=悪い」わけでもありません。見るべきは「人」と「仕組み」です。
判断に迷ったら中立的な専門家に相談を
仲介会社の資料や営業トークだけでは判断が難しいと感じた場合は、以下のような第三者に相談するのも有効です。
- 中小企業診断士や税理士(M&A経験者)
- 中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」登録業者
- 地域の事業承継・引継ぎ支援センター
特に事業承継・引継ぎ支援センターは、経済産業省の後押しを受けているため、公平かつ無料でアドバイスを受けられる点が魅力です。
まとめ
M&A仲介会社を選ぶ際は、「着手金があるかどうか」ではなく、「この人・この会社に任せられるかどうか」が最も重要です。安さや耳障りの良いトークに惑わされず、実績・体制・対応力・説明力を総合的に判断しましょう。
人生の節目となる大切なM&A。後悔のない選択のためには、料金よりも「信頼」と「相性」を重視する視点が欠かせません。
8. こんな仲介会社は要注意!悪質な営業トークと見極めポイント
M&A仲介会社の中には、見込み客を獲得するために過剰な営業トークを使う業者も存在します。「高く売れますよ」「うちならすぐに買い手が見つかります」など、耳ざわりの良い言葉の裏には、落とし穴が隠れていることも。特に着手金を支払った後に放置されるケースもあり、注意が必要です。ここでは、悪質な仲介会社によくあるトークパターンと、その見抜き方を解説します。
高すぎる株価を提示する「おだて型」トーク
最も多い営業トークが「御社の価値は〇億円以上ありますよ」という過剰な評価です。これは売主の期待値を上げて契約を取りやすくする典型的な手法ですが、実際にその価格で買い手が見つかることはほとんどありません。
- 根拠不明な評価額を提示して契約を急がせる
- 「以前この価格で売れた事例があります」と曖昧な事例を出す
- 相場より明らかに高い条件を自信満々に断言する
こうした「おだて型」の営業に乗ってしまうと、その後、買い手が見つからない状況でも「市場の問題です」「もう少し待ちましょう」と引き延ばされ、結果的に着手金だけ支払って終わってしまうリスクがあります。
「買手がいます」という即効性アピール
もう一つの典型的な営業トークが「すでに買いたい企業があります」「今なら○○社が関心を持っています」という即効性を示す言葉です。
このトークの問題点は、以下の通りです。
- 実在する買手かどうか不明(確認できない)
- 具体的な企業名・業種・意向条件が出てこない
- 実は「誰にでも言っているテンプレ営業」の可能性がある
売主の心理として、「待つより今すぐ買ってくれる企業がいるなら…」と思いやすいですが、真偽不明なまま契約に誘導されるのは危険です。
「着手金を早く払えば優先的に動きます」という煽り
契約前に「他にも案件が多くて…でも今着手金を入れてくれれば優先して動きますよ」と言われるケースも要注意です。これは「焦らせ型」の営業トークで、判断を急がせて冷静な検討をさせないのが狙いです。
このような言い回しが見られたら一度立ち止まりましょう。
- 本当に他案件と競合しているのか?
- 急がせる理由に客観的な正当性があるか?
- 着手金の支払いと案件の質は関係ないのでは?
誠実な仲介会社は、売主側に納得のいく説明と十分な検討時間を与えるものです。
実例:営業トークに乗せられた結果、損失を被ったケース
東京都内のある飲食事業オーナーは、ある仲介会社から「2億円で売れます」と言われて契約し、着手金50万円を支払いました。しかし蓋を開けてみると、買手からの反応はゼロ。結局、実際の価値は1億円程度で、他の仲介会社と再契約してようやく成約しました。
この売主は、「最初に高く言ってくれた会社のほうが“自信がある”ように感じてしまった。でも、後から思えば、根拠のない自信だった」と語っています。
悪質なトークの比較早見表
営業トーク | 注意すべきポイント |
---|---|
「高く売れます!」 | 客観的根拠のない価格提示に要注意 |
「買手がいます!」 | 具体的な企業名・条件の有無を確認 |
「今すぐ契約すれば優先的に動きます」 | 冷静な判断をさせない煽り型トーク |
「着手金は投資。動いてもらうには当然」 | 本来は契約内容と報酬体系で判断すべき |
見極めのための3つの質問
仲介会社と初回面談をする際、以下の3つの質問をしてみてください。誠実に答えてくれる会社であれば、安心して任せられる可能性が高いです。
- 「その価格の根拠は、どんなデータに基づいていますか?」
- 「その買手は、私の会社のどこに関心を持っていますか?」
- 「他に提案できる報酬体系はありますか?」
この質問に対し、曖昧な回答しか返ってこない、話をそらす、怒る、などの反応があった場合は、契約を見送る判断も視野に入れましょう。
まとめ
M&Aは人生で何度も経験するものではなく、初めての人が多いため、仲介会社からの甘い言葉に惑わされやすい側面があります。だからこそ、「耳ざわりの良い営業トーク」ではなく、「論理と根拠に基づいた説明」ができる会社を選ぶことが重要です。
着手金の金額だけでなく、「なぜその額なのか」「どのように動くのか」「なぜその価格で売れると思うのか」を明確に説明できる仲介会社こそ、信頼に値します。
営業トークに振り回されず、自分自身で冷静に判断する視点を持ちましょう。それが、後悔しないM&Aの第一歩です。
まとめ
M&A仲介における着手金の有無は、単純な「あり・なし」ではなく、その背景や契約内容を踏まえて冷静に判断することが大切です。費用の額面だけにとらわれず、担当者の姿勢や報告体制、そして総額ベースでの費用感など、複数の視点から慎重に選ぶことが後悔のない第一歩となります。
- 着手金は目的と条件を確認
- 成功報酬も総額で判断する
- 営業トークに過信は禁物
- 信頼できる担当者を選ぶ
- 費用構造を事前に見極める
着手金に悩んでいる方、仲介会社選びで迷っている方は、ぜひ一度専門家に相談してみてください。
詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。
