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M&A仲介会社と契約を解除することはできるのか

「M&A仲介会社に依頼したのに、一向に買手を紹介してくれない…」
そんな不安や疑問を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。もしかすると、その仲介会社は「案件の囲い込み」を行っているかもしれません。

本記事では、M&A支援の現場に10年以上携わり、累計200件以上の成約実績を持つ中小企業庁登録の専門アドバイザーが、
「仲介会社との契約を解除できるのか?」というテーマに対し、現場目線で丁寧に解説します。

特に、以下の3点を知りたい方にとって有益な内容となっています。

  • M&A仲介会社による囲い込みの実態と見分け方
  • 仲介契約を解除すべきかどうかの判断基準と手順
  • 契約内容の見直しと今後の業者選びの注意点

記事を読み終えた頃には、「このまま任せて大丈夫?」というモヤモヤが解消され、
あなた自身で納得のいく判断ができるようになるはずです。

これまでの時間や費用を無駄にしないためにも、ぜひ最後までご覧ください。

1.M&A仲介に「囲い込み」って本当にあるの?

M&A仲介の現場では、実際に「囲い込み」と呼ばれる行為が行われているケースがあります。これは、仲介会社が売主から預かった案件情報を意図的に他の仲介業者や買手に開示せず、自社内でのみ買手を見つけようとする行為を指します。本来、より多くの買手候補にアプローチして、売主にとって最も有利な条件での成約を目指すべき仲介業務において、囲い込みは売主の利益を大きく損なう問題行為といえます。

このような囲い込みが横行している背景には、M&A業界の構造的な問題が潜んでいます。特に「両手取引」にこだわる仲介会社が、売手・買手の両方から手数料を得るために、他の仲介業者を排除しようとする傾向が強いのです。

囲い込みが起きる仕組みと背景

囲い込みが起こる主な理由は、仲介会社が「自社で買手を見つけたほうが手数料が倍になる」からです。M&Aでは、売手と買手の双方から手数料を得る「両手仲介」という形態が存在します。つまり、売手側から依頼を受けた仲介会社が、自ら買手も見つけて成約させれば、通常の倍額の報酬を得ることができます。

こうした背景から、以下のような囲い込み行為が発生します。

  • 他の仲介業者や買手候補に案件情報を公開しない
  • 「買手探索中」と言いつつ、実質的に何も行動していない
  • 他の業者との並行契約(オープン契約)を拒否する「専任条項」の押し付け

本来、売主にとって有利なM&Aを実現するには、複数の買手候補を比較・検討することが重要です。しかし囲い込みによって情報がブロックされると、それが不可能になります。

不動産業界との比較で見る囲い込みの実態

囲い込みは不動産業界でも社会問題となっており、国土交通省が提供する「レインズ(REINS)」という情報共有システムを通じて、複数の不動産業者間で物件情報を共有する仕組みが整備されています。これは売主にとって機会損失を減らすための制度です。

ところが、M&A業界にはレインズのような共通の情報プラットフォームが存在しません。また、不動産業に適用される「宅地建物取引業法」のような厳格な業法もないため、業界ガイドラインに留まっているのが現状です。

項目 不動産業界 M&A業界
情報共有制度 レインズへの登録義務 なし(任意対応)
業法 宅建業法により義務付け 業法なし、ガイドラインのみ
囲い込みの規制 禁止・ペナルティあり 実質的な規制なし

このように、不動産業界では制度面から囲い込みを防止する取り組みが進んでいる一方で、M&A業界は制度的な空白が大きく、囲い込みを黙認するような土壌があるのが実情です。

実際にあった囲い込み被害の例

実際に筆者のもとへ相談があった事例をご紹介します。

ある製造業の経営者A氏は、上場している大手M&A仲介会社に売却の相談をし、専任契約を締結しました。しかし半年以上が経過しても、買手の紹介が一件もなく、問い合わせても「いま打診中です」との回答しか得られませんでした。

そこで筆者がヒアリングを行ったところ、同社が他の買手候補や業者への打診を全く行っていなかったことが判明しました。さらに、案件内容を匿名で他社に紹介したところ、すぐに複数の買手候補が名乗りを上げ、最終的にはA氏の希望より好条件で成約に至ったのです。

このように、囲い込みによって買手との出会いのチャンスを狭めてしまうと、売却のタイミングを逃したり、条件が悪くなるリスクがあります。

売主が囲い込みに気づくためのチェックポイント

囲い込みの被害に遭わないためには、仲介会社の動きを客観的に見極めることが重要です。以下は囲い込みの兆候です。

  1. 買手候補の提案が1件もない(3ヶ月以上)
  2. 買手への打診状況について具体的に答えられない
  3. 専任契約を強く求められたが、報告義務が曖昧
  4. 他社への打診を断っている様子がある

もし上記のような状況が見られる場合は、囲い込みを疑ってみるべきです。その際は、打診の記録や進捗状況を文書で確認するよう依頼し、曖昧な返答しか得られない場合は、契約の見直しを検討しましょう。

まとめ

M&A仲介業界における「囲い込み」は、実際に存在し、多くの売主が知らぬ間に不利益を被っている可能性があります。特に制度面での法的な規制が整っていない中小企業のM&Aにおいては、仲介会社の誠実性に大きく依存するため、業者選びの段階から注意が必要です。

この記事では囲い込みが起きる背景、仕組み、実例を通じて、そのリスクと対策について解説しました。次項では、仲介会社がなぜ買手を紹介しないのか、その内情についてさらに詳しく見ていきます。

2.なぜ仲介会社は動かないのか?その裏事情とは

M&A仲介会社に売却を依頼したにもかかわらず、「全然動いてくれていない」と感じたことがある方も少なくありません。実はその背景には、仲介会社の「業績評価の仕組み」や「社内ノルマ」、「手数料モデル」に関する根深い問題があります。つまり、仲介会社が動かないのは売主の利益よりも、自社の都合が優先されている場合があるのです。

売主が期待する「動き」と仲介会社の「現実の評価基準」のズレ

売主としては、M&A仲介会社に依頼すれば、すぐに買手候補を探して積極的にアプローチしてくれると考えるのが自然です。しかし、仲介会社の内部では、必ずしも「買手候補を積極的に見つけること」が高評価につながるとは限りません。実際には、社内で重視されるのは次の2点です。

  • 受託件数(=売却案件の受け持ち数)
  • 成約件数(=売買が成立した件数)

このうち、受託件数は「将来の売上の見込み」として扱われ、特に上場企業である仲介会社にとってはIR(投資家向け情報開示)資料でも重要な指標となります。つまり、成約に至らなくても「受託件数が多いこと」自体が評価されるのです。

評価指標 意味 評価される理由
受託件数 売却案件をどれだけ抱えているか 将来の売上見込みとしてIRで注目される
成約件数 売買が完了した案件数 実績評価の指標(ただし時間がかかる)

このように、売主が「進展がない」「提案が来ない」と感じている間にも、仲介会社としては「案件を抱えている」だけで社内評価が上がるため、優先順位が低くなることも珍しくありません。

「案件を寝かせる」ことで囲い込みを温存する戦略

仲介会社が意図的に買手提案を出さず、長期間放置するような状態は「囲い込み」の温床になります。なぜなら、専任契約を締結している限り、売主は他の業者に依頼することができないからです。

しかも、「完全成功報酬型」であれば売主にとってはノーリスクに見えるかもしれませんが、仲介会社にとってもリスクがないため、能動的に動かず案件を寝かせることが「得策」になってしまう構造があります。要するに、「いつか買手が現れればラッキー」程度にしか考えられていないのです。

着手金ビジネスモデルとの関係

一方で、「着手金あり」の契約であれば、仲介会社は契約締結時点で売上が確定します。そのため、たとえその後まったく買手を紹介しなくても、すでに利益を得ている状態になるのです。

中には、営業マンがノルマを達成するために「とりあえず着手金をもらって契約を取る」ことを優先しているケースすらあります。このような営業体制のもとでは、売主にとっては納得のいかない対応が続くのも無理はありません。

実際にあった「動かない仲介会社」によるトラブル

筆者の元に相談があった中で、特に印象的だった事例を紹介します。

とあるIT関連の中小企業が、大手仲介会社と専任契約を結びました。契約時には「買手候補はたくさんいます」と言われていたものの、契約後6ヶ月間、1件の買手提案もなく、進捗確認の連絡をしても「今、鋭意打診中です」と言われるばかりでした。

不信感を覚えた売主が契約を解除し、別の仲介業者に相談したところ、わずか2週間で複数の買手候補と面談が決まり、結果的に3ヶ月後には希望価格での売却が実現しました。このケースでは、最初の仲介会社が明らかに案件を「囲い込み」、かつ「放置」していたといえるでしょう。

売主が取るべき行動

このような背景を理解した上で、売主としては以下のような行動が求められます。

  1. 定期的に進捗状況を文書で確認する
  2. 買手への打診実績を「件数」「方法」「結果」で具体的に問う
  3. 期限を設けて「提案がなければ契約見直し」と伝える

また、専任契約であっても「業者に信義誠実義務違反がある場合」は、解除理由となる場合があります。民法上の債務不履行や信頼関係の破壊が明確な場合、弁護士を通じて交渉することも視野に入れるべきでしょう。

まとめ

M&A仲介会社が動かない背景には、売主の期待と仲介会社の評価指標のズレ、そして業界構造に起因するインセンティブの問題があります。表面的には丁寧な対応を見せていても、実際には案件を放置していたり、囲い込みによって他社との競合を避けていたりする場合もあります。

本記事では、仲介会社がなぜ動かないのかという構造的な問題を解説しました。次項では、そうした「囲い込み」にどう気づくか、その見分け方について具体的に紹介していきます。

3.囲い込みの見分け方|こんな状態なら要注意

M&A仲介会社に売却を依頼したものの、なかなか買手候補が紹介されない、提案が遅い、動きが見えないと感じた場合、それは「囲い込み」が行われている兆候かもしれません。囲い込みは、仲介会社が自社で買手を見つけて両手報酬を得る目的で、売主の情報を外部に出さず囲い込んでしまう行為です。これは売主にとって大きな機会損失につながるため、早期に見抜くことが重要です。

囲い込みの代表的な兆候

囲い込みを見抜くには、以下のような兆候が見られないかを確認することがポイントです。

  1. 買手提案がまったくない、または極端に少ない
  2. 買手への打診状況について具体的な説明がない
  3. 「もう少し待ってください」と曖昧な回答が続く
  4. 複数の買手にアプローチした形跡がない
  5. ギブアップ宣言(=紹介できない旨の説明)が一切ない

特に注意すべきなのは、「ギブアップ宣言」がない場合です。本来、誠実な仲介会社であれば、一定期間内に買手候補が見つからなければ、その旨を伝え、他の仲介業者に依頼することも勧めるべきです。しかし囲い込みを狙う仲介会社は、契約を解除されたくないため、動きがないにもかかわらず「水面下で調整中」などと理由をつけて引き延ばそうとします。

なぜ囲い込みが発生するのか?

囲い込みの根本的な理由は、M&A仲介会社が「両手取引」によって報酬を倍にできるというインセンティブにあります。売主から情報を受け取った仲介会社が、その情報を他社に共有せず、自社で買手も探し出せば、売手・買手双方から手数料を得ることができるのです。

M&A業界には不動産業界のような「レインズ(REINS)」のような情報共有制度がないため、仲介会社の行動は不透明になりがちです。また、国が定める法的な業法も存在せず、「M&A支援機関登録制度」や「中小M&Aガイドライン」はあるものの、法的拘束力がないため、違反してもペナルティが課されることはほとんどありません。

国の対策と現状

中小企業庁は2020年に「中小M&Aガイドライン(第1版)」を発表し、2023年には第2版が公開されました。その中では、囲い込みを防止するために「売主の利益を最優先とすること」や「他社との連携を拒否してはならない」といった方針が明記されています。しかしながら、このガイドラインは努力義務であり、法的強制力がないため、実務では形骸化しているケースも見受けられます。

また、「中小M&A推進計画」ではM&A支援機関の登録制度を導入し、一定の要件を満たした仲介会社を登録制としていますが、囲い込み防止に直結する仕組みとは言えません。したがって、売主自らが主体的に仲介会社の姿勢をチェックする必要があります。

実際の囲い込み被害事例

筆者の元には、囲い込みによる被害を受けた売主からの相談が数多く寄せられています。その中の一例をご紹介します。

神奈川県で製造業を営むB社は、大手仲介会社C社と専任契約を締結しました。契約時には「すぐに買手候補をご紹介できます」と言われ、安心して依頼したものの、3ヶ月経っても1件の買手提案もなし。打診状況を尋ねても「リストアップ中」や「調整中」と曖昧な回答が続きました。

不審に感じたB社の経営者が別のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に相談したところ、実はC社は一度も他社仲介や第三者の買手に案件を流しておらず、完全に囲い込まれていたことが判明しました。契約を解除し、他社に切り替えたところ、2週間で3件の買手と面談が設定され、4ヶ月後には希望条件に近い金額で成約しました。

囲い込みかどうかを見抜く質問例

仲介会社が囲い込みをしていないかを見極めるためには、以下のような質問をしてみることをおすすめします。

  • どのくらいの数の買手候補に打診をしましたか?
  • 実際にどのような方法でアプローチしましたか?
  • 買手候補の反応はどうでしたか?(数・理由)
  • いつまでに、どれくらいの提案が見込めそうですか?
  • 他社との連携はしていますか?

これらの質問に対し、明確な回答が得られない、あるいははぐらかされるようであれば、囲い込みの可能性が高いと判断できます。特に、「他社には流していません」と明言するようであれば、契約の見直しを検討すべきタイミングです。

まとめ

囲い込みは一見わかりづらい行為ですが、買手提案の有無や進捗説明の質、ギブアップ宣言の有無などをチェックすることで、その兆候を見抜くことができます。M&A仲介は信頼が第一ですが、現実には業者によって対応姿勢に差があるため、売主が受け身でいると気づかぬうちに囲い込まれてしまうこともあります。

違和感を感じたら、遠慮せずに状況を具体的に質問し、場合によっては契約解除や他社への相談も視野に入れましょう。次の章では、囲い込みと判断した場合にどう対応すべきか、「契約解除」の判断基準について詳しく解説します。

4.契約解除すべき?判断のポイントと基準

M&A仲介会社に依頼したものの、「買手の提案がまったくない」「何の進展もない」「打診状況の説明があいまい」といった状況が長く続く場合、契約の解除を検討すべきタイミングかもしれません。仲介会社との契約解除は気が引けると感じるかもしれませんが、貴重な時間とチャンスを無駄にしないためにも、冷静に判断することが重要です。

契約解除を検討すべき代表的なサイン

以下のような状態が続いている場合は、契約の見直しや解除を検討する有力な判断材料になります。

  • 契約締結後、3か月以上経過しても買手の提案がない
  • 買手候補への打診実績や反応が具体的に説明されない
  • 「打診中」「調整中」という曖昧な返答ばかりで進捗が見えない
  • 他の仲介業者との併用(共同仲介)を明確に拒否される
  • 「ギブアップ宣言(他で探してください)」が出ないまま放置されている

これらは、「囲い込み」の疑いがある場合や、仲介会社が本気で売却成立に動いていない兆候として、業界では知られています。

契約解除の判断基準を明確にするポイント

契約を解除するかどうかは、「主観的な不満」ではなく、「客観的な事実」に基づいて判断することが重要です。以下のような具体的なチェックリストを用いると、冷静な判断につながります。

判断項目 チェックすべき内容
提案状況 買手の提案件数・打診の回数や手段・打診先の反応
報告の透明性 定期報告の有無・進捗の説明内容・データの有無
対応スピード 問い合わせへの返信速度・打ち合わせの頻度
戦略性 売却方針の提案有無・業種特化知見の提供有無
誠実性 囲い込みの兆候があるか・他社活用の提案があるか

このような視点から分析すると、表面的には「がんばっています」と言っていても、実態として動いていない仲介会社を見抜くことができます。

中小企業庁の指針とガイドライン

中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン(第2版)」では、仲介会社に対して「売主の利益を優先する行動」「説明責任の履行」「中立性の確保」などが推奨されています。ガイドラインに基づけば、仲介会社は売主に対して十分な情報開示と誠実な説明を行うべきであり、それが果たされていない場合には、信義則違反とも捉えられる可能性があります。

また、2023年に中小企業庁が発表した調査報告によれば、M&Aにおけるトラブルの上位には「仲介会社の対応が不十分だった」「情報が共有されなかった」といった声が多く挙がっています。こうした公的機関のデータも、契約解除の判断材料として有効です。

実際の相談事例

ある介護事業者の売主D社は、業界大手のM&A仲介会社E社と専任契約を締結しました。当初は「半年以内に成約できる」と言われていましたが、実際には9か月が経過しても買手からの打診はゼロ。問い合わせても「大型案件なので時間がかかっている」とだけ説明され、明確な進捗報告はなし。

不信感を覚えたD社は、契約書を見直した上で、契約解除を申し入れました。すると、E社から「契約期間中は解除できない」と強く引き止められましたが、弁護士を通じて打診先実績の開示を求めた結果、「実質的に何もしていなかった」ことが判明。最終的に契約は合意解除となり、その後は別の仲介会社を通じて無事に売却が成立しました。

契約解除前に確認すべき3つのこと

契約解除を実行する前に、以下の3つの点は必ず確認しておきましょう。

  1. 契約書の内容確認:契約期間・中途解約の可否・違約金の有無
  2. 証拠の収集:メールのやりとり・報告資料・進捗記録
  3. 代替手段の検討:他社の紹介依頼・FA活用・弁護士の相談

特に「専任契約」の場合、他社への依頼が制限されていることもあるため、契約書をよく読み込み、必要があれば弁護士に確認してもらうことが安心です。

まとめ

M&A仲介会社との契約を解除すべきかどうかは、「提案がない」「動きが見えない」といった主観だけではなく、具体的なデータや対応姿勢をもとに判断することが大切です。もし、明らかに動いていない、囲い込みの兆候がある、誠実さを感じないといった状況が続いているのであれば、契約解除は正当な判断です。

次の章では、実際に契約を解除する際の手順や注意点について詳しく解説していきます。解除を決断した後にトラブルにならないよう、事前準備をしっかり行いましょう。

5.M&A仲介契約の種類と条項を正しく理解しよう

M&Aを仲介会社に依頼する際には、どのような契約を結ぶかによって売主の立場やリスクが大きく変わります。特に「専任条項」「着手金」「完全成功報酬」の有無や性質については、契約前にしっかり理解しておくことが重要です。これらの条項は、仲介会社の動機付けや対応スピード、囲い込みの発生リスクにも影響します。

専任契約と非専任契約の違い

M&A仲介契約には主に以下の2種類があります。

契約種別 概要 売主の制約
専任契約 契約期間中、他の仲介会社とは契約できない 買手探しはその仲介会社に限定される
非専任契約(オープン契約) 複数の仲介会社と同時に契約可能 より多くの買手にアプローチ可能

専任契約は一見「責任を持って動いてくれそう」と感じますが、逆に囲い込みを助長しやすい面もあります。専任条項があることで他の仲介業者を通じて買手を探すことができなくなるため、仲介会社が十分に活動していない場合でも契約解除まで身動きが取れないという事態に陥りかねません。

着手金の有無と意味

M&A仲介契約における「着手金」は、仲介会社が案件を受ける段階で売主から受け取る初期費用です。着手金の主な目的は以下の通りです。

  • 売主の本気度を確かめる
  • 資料作成や買手探索の事前活動の対価とする
  • 仲介会社側の初期コストをカバーする

しかし、注意すべきは「着手金が返金されない契約」が多いことです。契約後に動きがなくても、売主は着手金を失ったままになります。着手金の相場は50万円〜200万円ほどで、契約書には「成果が出なくても返金しない」と明記されているケースがほとんどです。

完全成功報酬型のメリットと落とし穴

完全成功報酬型とは、成約に至った場合のみ仲介手数料が発生する契約形態です。売主にとっては初期費用が不要で、「結果が出なければ支払い不要」という安心感があります。しかし一方で、以下のようなリスクも潜んでいます。

  • 案件が囲い込まれ、長期間放置されやすい
  • 成約できそうな案件だけに注力され、難しい案件は放置される
  • 売主が進捗確認を怠ると、仲介会社の行動をチェックしづらい

仲介会社にとって「動いても報酬にならない可能性がある案件」は後回しにされがちで、売主が積極的に関与しないと、状況が放置されてしまうことがあります。

国が提示する指針と条項リスクの認識

中小企業庁が発行している「中小M&Aガイドライン(第2版)」では、契約形態の明確化と売主のリスク把握の重要性が強調されています。たとえば、ガイドラインでは以下のような記載があります。

仲介契約を締結する際は、手数料体系、契約形態(専任・非専任)、契約期間、中途解約条件について、書面で明確にし、売主がその内容を十分に理解していることが望ましい。

特に契約書の中途解約条項に「違約金」や「期間満了まで解約不可」などの記載がある場合、実質的に身動きが取れなくなります。必ず契約前に内容を確認し、必要に応じて弁護士やM&Aアドバイザーに相談することが大切です。

実際のトラブル事例

建設業を営むF社は、仲介会社G社と専任契約を締結し、同時に100万円の着手金を支払いました。ところが3か月経っても買手の提案はゼロ。問い合わせても「調整中」「連絡待ち」の回答ばかりで、進捗が見られませんでした。

F社が契約の解除を申し出たところ、「専任期間中は解約できません」「着手金は返金不可です」と一方的に断られました。最終的に弁護士を介して契約内容の不履行(信義則違反)を訴える形で解除に至りましたが、当初の費用と時間は取り戻せませんでした。

契約書で特にチェックすべきポイント

以下は、M&A仲介契約を結ぶ際に売主が必ずチェックすべきポイントです。

  • 専任条項の有無と期間
  • 中途解約が可能か、違約金が発生しないか
  • 着手金・中間報酬・成功報酬の金額と条件
  • レポート報告の頻度や内容の明示
  • 囲い込みを防ぐ情報共有方針の明記

特に「どのタイミングでどの費用が発生するか」「解約時に何が必要か」は見落としやすい点です。曖昧な表現や口頭説明だけに頼らず、すべて契約書面で確認するようにしましょう。

まとめ

M&A仲介契約には、専任条項・着手金・完全成功報酬といった要素があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。契約形態によって仲介会社の動きやすさや、売主の自由度、囲い込みリスクに大きな差が生まれます。トラブルを避け、納得のいくM&Aを進めるためにも、契約内容を理解し、リスクを見越した判断が必要です。

次の章では、囲い込みを未然に防ぐために、売主としてできる具体的な対策や質問の仕方について詳しく解説します。

6.囲い込み対策としてできる具体アクション

M&A仲介会社とのトラブルの中でも特に売主にとって深刻なのが、「囲い込み」による情報封鎖と提案の遅延です。しかし、これらのリスクは契約時点での対応次第で大きく減らすことができます。ここでは、囲い込みを防ぐために売主が取れる具体的なアクションと、契約締結前に確認すべきポイントを解説します。

契約締結前に必ず確認すべき項目

契約書にサインする前に、以下の点を事前に確認・合意しておくことで、後々の囲い込みトラブルを未然に防ぐことができます。

  • 専任条項の有無と期間(できれば短めの期間に設定する)
  • 中途解約の条件(違約金の有無や正当事由の定義)
  • 買手探索の手段と範囲(自社内だけか他社連携も含むか)
  • 打診の頻度やレポート提出義務(定期報告の有無、内容の詳細)
  • 他社との情報共有の可否(囲い込みを防ぐ仕組みがあるか)

特に「専任契約期間」と「中途解約時の条件」は売主の行動自由度を大きく左右します。「期間中は一切解約できない」「着手金の返金なし」などの条項がある場合は、慎重に検討する必要があります。

契約時に必ずしておきたい質問例

契約を結ぶ前の面談ややり取りの際には、以下のような質問を投げかけることで、仲介会社の姿勢や囲い込み体質を見抜く手がかりになります。

  • 買手候補への打診はどのような手段で、どのくらいの件数を予定していますか?
  • 他社との共同仲介(コ・ブローカー)は許容されますか?
  • 打診実績やレポートは、どのくらいの頻度で提供されますか?
  • 買手候補が見つからなかった場合、いつを目安にギブアップ宣言をするルールですか?
  • 中途解約の条件や費用、返金ポリシーはどうなっていますか?

これらの質問に対し、明確な回答が返ってこない、あるいは曖昧なまま話を進めようとする場合は要注意です。売主の立場に立って誠実に対応してくれる仲介会社であれば、これらの点を契約書面にも明記してくれるはずです。

ガイドラインを活用した確認視点

中小企業庁が公開している「中小M&Aガイドライン」では、囲い込み防止のための仲介業者のあるべき姿として、以下のような行動が推奨されています。

・売手及び買手の双方の利益を適切に調整すること
・必要に応じて他の支援者との連携を行うこと
・契約時点での十分な情報提供と説明を行うこと
・売手からの解約申し出には柔軟に応じること

このような指針を踏まえ、契約前に「ガイドラインを遵守されていますか?」と質問するのも有効です。業者が登録M&A支援機関であれば、中小企業庁への報告義務もあるため、形式的であっても一定の行動制約が働いています。

実際の予防策導入事例

ある飲食業の経営者H氏は、初回面談時に「囲い込みの有無」と「買手探索方法」を重視し、仲介会社に次の3点を契約前に求めました。

  1. 打診数の記録と週1回のレポート提出
  2. 買手候補に対するアプローチ方法の文書化
  3. 契約期間を3か月とし、更新は両者協議のうえで決定

結果として、H氏の案件は囲い込みなくスムーズに複数の買手に提案され、契約から2か月後に好条件での意向表明が得られました。売主側が主導権を持ち、契約前にルールを明確にしたことが、良い結果につながった事例です。

囲い込みされやすい契約内容とは

以下のような契約は、囲い込みの温床になりやすいため注意が必要です。

契約内容 囲い込みリスク
契約期間が6か月以上で中途解約不可 長期間動かなくても他の業者に頼めない
買手探索方法が記載されていない 活動しているか確認できない
他社仲介との連携を禁止する文言がある 情報共有が制限され囲い込みされやすい
レポート提出義務がない 動いていないことが見えづらくなる

上記のようなリスク要因を排除するためにも、契約書を丁寧に読み、必要であれば修正を依頼する姿勢が重要です。相手が誠実であれば、売主側の意見にも柔軟に応じてくれるはずです。

まとめ

囲い込みを未然に防ぐためには、契約前に「どのように買手を探すのか」「動いている証拠をどう提示してもらうか」「解約時の条件は何か」を明確にしておくことが極めて重要です。また、面談時に具体的な質問をすることで、仲介会社の誠実性や実力も判断できます。契約は慎重に、売主側も主体的に情報を取りにいく姿勢が、成功のカギを握ります。

次章では、万が一囲い込みにあった場合、実際にどのような手順で契約を解除すればよいのか、具体的な流れと交渉方法を詳しく解説していきます。

7.仲介契約の解除方法と注意点

M&A仲介会社との契約を解除したいと感じたとき、重要なのは「感情的に断ち切ること」ではなく、「法的にスムーズかつリスクのない方法で解除すること」です。たとえ動きがなく不信感を持ったとしても、解除方法を誤るとトラブルに発展するおそれがあります。ここでは、契約解除の具体的な手順や注意点、交渉のポイントについて解説します。

契約解除の基本ステップ

仲介契約を解除する際は、以下の流れを踏むことでトラブルを避けつつスムーズな対応が可能です。

  1. 契約書の確認:契約期間・解除条項・違約金の有無をチェック
  2. 進捗確認・改善依頼:まずは仲介会社に現状の報告を求める
  3. 正式な解除通知の送付:書面またはメールで解除意思を明示
  4. 返金や資料返還の交渉:着手金や提供資料の取り扱いを確認
  5. 次の仲介会社またはFAの選定:再スタートに向けて準備を進める

特に1番目の「契約書の内容確認」は最重要ステップです。解除できないと明記されていたり、違約金が発生するケースもあるため、内容を誤解して解除を申し出ると逆に損をするおそれがあります。

契約書で注意すべき解除条項

契約書には、以下のような記載があるかどうかを重点的に確認しましょう。

契約条項 確認ポイント
契約期間 終了日がいつか、途中解除はできるか
中途解約条項 正当な理由があれば解除できるか
違約金条項 解除時に費用が発生するか
返金可否 着手金など初期費用の返金が可能か

もし契約書に解除の可否や条件が曖昧に記されている場合は、専門家(弁護士またはM&Aアドバイザー)への相談を強くおすすめします。

スムーズに解除するための交渉のコツ

解除を申し出る際には、感情的にならず、事実ベースで冷静に伝えることが重要です。以下のような点を意識して交渉を進めると、角を立てずにスムーズに解除が進みやすくなります。

  • 打診件数や提案状況が不透明であることを客観的に伝える
  • レポート提出や報告が不十分であることを指摘する
  • 他社との比較による「納得感ある理由」を用意する
  • あくまでも「前向きな判断」として伝える
  • 必要であれば弁護士名義での通知を検討する

「期待していた進捗が得られず、今後の方針転換を図りたい」というような言い回しが有効です。責任追及ではなく、方針の見直しであるというスタンスが、相手側の防衛反応を和らげます。

中小企業庁ガイドラインとの整合性

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」では、仲介契約において売主が契約内容を十分に理解していないままトラブルになることを防ぐため、契約締結時に下記の内容を明確に説明することが推奨されています。

  • 契約形態(専任/非専任)の明示
  • 手数料体系(着手金・中間報酬・成功報酬)の説明
  • 契約期間と解約条件の提示

売主の判断に影響するこれらの要素が不十分に説明されていた場合は、契約解除の正当性がより高まる根拠になります。

実際の契約解除事例

ある製造業の経営者I氏は、専任契約を結んだ仲介会社から3か月経っても1件も提案がなく、「打診中」の報告だけが続く状況でした。契約書には「契約期間6か月」「中途解約時は違約金20万円」との条項がありましたが、業者からの報告の曖昧さに納得がいかず、弁護士に相談の上で次のように対応しました。

  1. 業者に対し、過去の打診履歴・件数・結果を文書で請求
  2. 提出がなかったため、信義則違反として正式に解除通知を送付
  3. 違約金の支払いを拒否し、返金交渉を実施

結果として契約は無条件解除となり、新たな仲介会社に切り替えることで、約2か月後に成約に至りました。冷静かつ準備された対応が、売主側の正当性を裏付けた好事例です。

解除後にやるべきこと

契約解除後は、次の仲介会社またはFA(ファイナンシャルアドバイザー)を探しつつ、これまでの反省点を活かして以下の点を整理しましょう。

  • 次は「非専任契約」も検討する
  • 打診・報告義務が明確な業者を選ぶ
  • 過去に提出した資料を再活用できるよう整理しておく
  • 初回面談では「契約解除時のルール」を必ず確認する

過去の失敗を引きずる必要はありませんが、同じ過ちを繰り返さないための対策は必須です。業者選びの基準を明文化し、主体的に交渉に臨みましょう。

まとめ

M&A仲介会社との契約解除は、正しい手順と準備さえ整っていれば、決して難しいものではありません。契約書の確認から交渉方法まで、冷静かつ計画的に行動することで、トラブルを回避しながら次のステップに進むことができます。解除後の再出発をスムーズに進めるためにも、自分自身が情報と判断の主導権を握ることが重要です。

次章では、失敗を繰り返さないための仲介業者の選び方について、チェックリスト形式で具体的に紹介していきます。

8.次の仲介業者を探すときの注意点

一度、仲介会社との契約で失敗を経験した売主にとって、次に依頼する業者選びは非常に重要です。同じような囲い込みや放置、情報不足による不信感を繰り返さないためには、「実績」や「知名度」だけで判断せず、業者の姿勢や仕組み、そして契約内容の細部まで確認する必要があります。ここでは、次のM&A仲介会社を探す際に押さえておくべきチェックポイントを体系的にご紹介します。

信頼できる仲介業者かどうかを見極めるチェックリスト

以下のリストは、初回面談や契約前の確認で必ずチェックしておきたい項目です。すべての質問に対して納得できる答えが得られる業者こそ、次に選ぶべき相手です。

確認項目 内容 チェックのポイント
買手の探索方法 具体的にどんな手段で買手を探すか レインズ的な自社データベースだけでないか
レポート提出頻度 打診状況の報告はどのくらいの頻度か 週次または月次で具体的に報告されるか
ギブアップルールの有無 買手が見つからなかった場合の対応 他社に切り替え可能なルールがあるか
契約形態の柔軟性 専任/非専任の選択が可能か 売主の要望に合わせた契約内容を提示できるか
成功報酬の条件 どの段階で報酬が発生するか 意向表明や基本合意時に発生しないか
担当者の経験 過去の成約件数や業界特化の実績 形式的な説明でなく具体例があるか

登録M&A支援機関かどうかの確認

中小企業庁が導入した「M&A支援機関登録制度」に登録されている業者は、一定の要件をクリアしているといえます。具体的には、以下のような基準が設けられています。

  • 専任契約時の手数料体系の明示
  • 中途解約時のルール説明
  • 売主への説明責任と書面交付義務

この登録制度に参加しているかどうかは、中小企業庁の公式サイトで確認可能です。業者のホームページにも多くは記載がありますが、登録番号を提示できるかを確認するのが確実です。

初回面談で確認すべき質問事項

初回相談時に「なんとなく良さそう」で判断せず、次のような質問を投げかけることで、業者の真の実力や誠実さを見極めることができます。

  • 「御社の過去1年のM&A成約件数と平均期間を教えてください」
  • 「うちの業種に近い事例の中で、印象的な案件はありますか?」
  • 「買手とのマッチングはどうやって行っていますか?」
  • 「契約期間中に買手が見つからなかった場合はどうなりますか?」
  • 「囲い込み防止のための社内ルールはありますか?」

こうした質問への反応が曖昧だったり、「それは契約後に」と言うような業者は注意が必要です。初回から情報開示に前向きで、透明性のある対応をしてくれる業者こそが信頼に値します。

避けるべき仲介会社の特徴

次の業者選びで失敗しないためには、以下のような業者を避けることが肝要です。

  1. 契約を急かしてくる(「今決めてくれたら割引します」など)
  2. 過去の実績を曖昧にごまかす(「社としては多いです」など)
  3. 囲い込みを正当化する(「両手の方が成約率が高い」など)
  4. 打診方法を具体的に答えられない(「営業しています」だけ)
  5. 契約内容の書面提示を渋る(「後で送ります」と言って渡さない)

これらの特徴をもつ仲介会社は、囲い込みや成約重視の営業に傾倒している可能性が高く、売主の利益を優先する姿勢に欠けています。

実際に業者を乗り換えて成功した事例

過去に専任契約で囲い込みを受けていたJ社(飲食業)は、提案がゼロのまま3か月が経過。契約解除後に紹介を受けた別の業者は、初回面談で丁寧なヒアリングを行い、契約書には打診件数とレポート頻度の明記がありました。結果、契約から1ヶ月で複数の買手候補と面談が設定され、希望に近い価格で成約に至ったそうです。

このように、「次こそは」という視点で慎重に業者を選定すれば、良い結果につながる可能性は大いにあります。

まとめ

M&A仲介会社との契約で失敗を経験したからこそ、次の業者選びは「誰に頼むか」ではなく「どんな姿勢と仕組みを持つ相手か」を重視すべきです。信頼できる業者の条件は、情報開示・報告体制・柔軟な契約対応の3つです。チェックリストと質問項目を活用し、再び囲い込みや不誠実対応に悩まされないよう、納得のいく選択を行いましょう。

次章では、着手金を払ったにもかかわらず成果が出なかった場合、返金の可能性や交渉方法について解説します。

9.着手金の返金は可能?対応と交渉事例

M&A仲介会社と契約を結ぶ際、初期費用として「着手金」が発生するケースがあります。しかし、実際に期待した成果が得られなかった場合、「この着手金は返してもらえるのか?」という疑問を抱く売主は少なくありません。結論から言えば、契約内容次第では返金の余地がありますが、多くの場合は返金不可と明記されているのが実情です。ここでは、着手金返金の可否判断に必要なポイントや交渉方法、そして弁護士の活用法について解説します。

着手金の返金が困難な理由と現実

着手金とは、仲介会社がM&A支援を開始するための「初期コスト」として売主から事前に受け取る報酬です。具体的には以下のような名目が一般的です。

  • 企業概要書(IM)の作成
  • 買手候補のリストアップやアプローチ費用
  • 社内リソース確保のための優先対応費

仲介会社にとっては、案件を受託しただけでは報酬が確定しないため、事前に最低限の収入を確保する意味でも着手金は重要な位置づけです。そのため、多くの契約書では「着手金は理由の如何を問わず返金不可」と記載されており、実務上は返金が極めて難しい仕組みとなっています。

契約書の内容がすべてを左右する

着手金の返金可否を判断する上で最も重要なのは、契約書の条文です。以下のような記載があるかを確認しましょう。

契約書の条文例 返金の可能性
「着手金は業務開始後、いかなる理由でも返金しない」 返金不可が原則。ただし信義則違反があれば争える
「業務不履行または不誠実な対応が認められた場合は、協議の上返金する」 協議により返金の可能性あり
「着手金は初期対応費用として○○円、レポート作成に○○円を充当」 項目別に業務の実施有無を検証できれば交渉材料になる

返金を求める場合には、契約内容と実際の対応状況の差分を示すことが不可欠です。報告書が一切出てこなかった、買手への打診が確認できなかったなど、明らかに業務が遂行されていないと認められる場合は、信義則違反として返金請求の余地があります。

返金交渉に向けた準備と対応策

着手金の返金を求める際は、いきなり感情的な交渉を行うのではなく、冷静かつロジカルに交渉材料を揃えることが重要です。以下は具体的な手順です。

  1. 契約書を精読し、返金条項の有無と文言を確認
  2. 業務の履行状況を整理(打診件数・報告書の有無など)
  3. メールやチャット等のやりとりを証拠として保存
  4. 返金交渉の根拠と要望額を明確化
  5. まずは書面やメールでの申し入れからスタート

この段階で返答がなかったり、「契約通りなので返金しません」と形式的に拒否された場合には、弁護士の名前を出して再通知することで相手の対応が変わることもあります。

弁護士を活用すべきタイミング

交渉が難航した場合や、相手が明らかに不誠実な姿勢を示している場合には、弁護士を通じた通知や交渉を行うことで、相手に法的リスクを意識させることができます。

  • 内容証明郵便での返金請求
  • 交渉代理人としての弁護士委任
  • 簡易裁判による調停申し立て

実際には、法的措置に発展する前段階で「弁護士から通知が届いた」ことを理由に、仲介会社側が話し合いに応じるケースも多く見られます。費用を最小限に抑えるためにも、最初の相談は「30分無料相談」などを活用するのが有効です。

返金に成功した実例

とある小売業のK社は、仲介会社L社と契約を結び、100万円の着手金を支払いました。しかし、契約後3か月間にわたり買手提案は一件もなく、報告書も提出されませんでした。契約書には「返金不可」との文言がありましたが、K社は弁護士に相談の上、次のような手順を踏みました。

  1. 過去のメール履歴から、買手打診の具体的証拠が存在しないことを確認
  2. 契約上の「業務遂行義務違反」を根拠に返金交渉を開始
  3. 弁護士名義で内容証明を送付し、法的措置の可能性を提示

結果的にL社は協議に応じ、50万円を返金する形で和解となりました。これは、証拠と交渉のロジックをしっかり準備したことが功を奏した好事例です。

今後の契約で注意すべき点

着手金に関するトラブルを回避するには、契約前に以下の点を必ず確認しましょう。

  • 「返金の有無」「返金対象の条件」の記載があるか
  • 業務内容の明確な分解(IM作成・打診件数など)
  • 報告義務の明記(レポート提出頻度や内容)
  • 業務が行われなかった場合の責任所在の記載

これらを確認せずに契約してしまうと、万が一の際に返金請求の根拠を持てず、泣き寝入りとなってしまうおそれがあります。自社の立場を守る意味でも、契約時の確認と記録化は必須です。

まとめ

着手金の返金は容易ではありませんが、契約内容と実際の業務実態に矛盾がある場合は、返金の交渉や請求を行う余地は十分にあります。冷静な分析と証拠の整理、そして必要に応じた専門家の活用により、売主側にも正当な主張を行うことが可能です。次回以降の契約では、返金条項と業務内容の明確化を必ず確認しましょう。

次章では、記事全体のまとめとして、M&Aにおいて「契約を見直す勇気」がなぜ重要なのかを解説していきます。

まとめ

M&A仲介会社との契約は、相手任せにせず自らが主体的に管理することが重要です。本記事では、囲い込みの実態や解除の判断基準、契約時の注意点までを詳しく解説してきました。今後のM&Aを後悔のないものにするために、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. 囲い込みには早期に気づく
  2. 契約条項を必ず確認する
  3. 解除は手順を踏んで実行
  4. 次の業者選びは慎重に
  5. 着手金の扱いも要注意

M&Aは大切な経営判断です。信頼できるパートナーを見極める目を持ち、疑問があれば専門家に相談することが安心への近道です。詳しく知りたい方は、ぜひアーク・パートナーズまでお問い合わせください。

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